ISUラケルニク副会長のビジョン | siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

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羽生結弦選手の現役時代をリアルタイムで体験できる幸運に心から感謝しつつ、彼のスケートのここが好きあそこが好きと書き連ね、ついでにフィギュアにも詳しくなろうと頑張る欧州住まいのブログ主です。

 昨日INに掲載されたISU副会長ラケルニク氏のインタビューが興味深かったので主要部分を訳してみました。なかなかラジカルな改革者のようです。

 元記事はこちらです。


(タイトル略)

アレクサンドル・ラケルニク氏は、大学で教鞭を執る数学者だ。インターナショナル・ジャッジング・システム(IJS:新採点システム)の開発にあたっては彼の専門知識が生かされている。氏は現在、このシステムを改良し観客によりわかりやすくすることに力を注いでいる。

ラケルニク氏は22年間にわたりISUの技術委員会に在籍、そのうちの14年は委員長を務め、今回ISUフィギュア副会長に就任した。71歳という年齢だが、スケートへの情熱は失われていない。スケート関連の多忙な出張スケジュールやMoscow State University of Communications and Informaticsの職をこなしつつ、フィギュアスケートを面白くしようという意欲にあふれている。

少しの間ロシアに戻った氏に、彼の描くスケートの未来を聞いた。

IN:あなたはIJSの開発に関わりました。今後システムはどのように発展できるでしょう。

AL:いくつかのアプローチを簡略化し、システムにもっと一貫性を持たせるべきというのが私の意見だ。まだ詳しく話す時期ではないが、すでに作業は進んでいる。

IN:ビジョンステートメントの中で、あなたは、ショートプログラムとフリープログラムをもっと差別化したいと述べました。どのようなことを思い描いていますか?

AL:この二つはあまりにも似通っている。違いは、難しいエレメンツの数だけ。シングルの例でいえば、ジャンプの数だ。長期的には二つの全く違うプログラムの導入を目指す。一つは技術面を重視し、一つは芸術面を重視するもの。技術プログラムは現行のショートやフリーのような感じで、一方、芸術プログラムは難しいエレメンツを減らし、プログラムのプレゼンテーションに重点を置く。演技時間は同じにしてもいいだろう。こうすれば、技術、芸術、そしてもしかしたら総合というように、メダルの数を増やすこともできる。

IN:あなたが立候補した時のビジョンステートメントには、TV観戦をもっと面白くするための対策を進めたいとありました。どんな取り組みを考えていますか。

AL:第一に、競技会の時間を短縮できる策ならば、すべて歓迎だ。今は長すぎて現地のファンもTVの視聴者もとても最後まで付き合いきれない。第二に、演技中に入る点数について、見る人にできるだけたくさんの情報を提供する。これはすでに部分的には実施されている。さらに、休憩時間をフル活用して演技と選手についての情報をもっとたくさん流す。このような可能性を検討しなければならない。

IN:IJSをどのように変えれば、見る人にわかりやすくなりますか?

AL:文章や専門家を使って、もっと仕組みの説明を行う。細かい部分はそれほど重要ではないが、基本的ルールの説明にはもっと力を入れられる。

IN:ISU総会でジャッジの匿名制が廃止されました。ジャッジやオフィシャルがそれに慣れるため、彼らへのサポートを考えていますか?

AL:ジャッジの匿名制はIJSの一部ではない。IJSは匿名制があろうとなかろうと機能する。肝心な点は、ジャッジが知識と客観性を持つこと。彼らにこの2点が備わっていれば、身元が分かっても彼らにとって大した問題にはならないはずだ。6.0システムに比べ、今のジャッジは一つのプログラムに対し非常に多くのスコアをつけなければならない。男子フリーならば、GOEが13項目にPCSが5項目ある。このような状態で結果の責任をある特定のジャッジに擦り付けることは簡単にはできないだろう。テクニカルパネルについて言えば、彼らの決定はすべて多数決だ。

IN:匿名制がなくなったことで、競技後に行われるジャッジ評価にも影響がありますか?

AL:どのようになるか予測するのは難しいが、現行のやり方をできるだけ維持し、議論をスコアに集中させるよう努力するつもりだ。誰がスコアを出したかではなく、正しいスコアの範囲は何かを話し合う。ジャッジミスが判明した場合だけ、ミスをしたジャッジは誰だったのかを見る。ただし、ある1点だけは確実に変わる。もし、1度あるいは数度の大会である特定のジャッジが複数のミスを犯した場合、これらのミスを結びつけることが非常に簡単になる。

IN:どのような新しいイベントを希望しますか?

AL:新しい形の競技会をなんであれ怖いと思う気持ちはない。シアターオンアイス、チームコンペ、究極のチームスケーティング(ultimate team skating)などなど。

(以下略)


 一番気になるのは従来のフリー・ショートの代わりに技術・芸術プログラムを導入したいという点でしょう。確かに、フリープログラムと言ってもどこらへんがフリーなのかよく分からない現状ではあります。真の意味でフリーなエキシビション演技の中には、若干手直しすれば競技プロとして見てもいいかな、というものもありますし。しかし芸術プロはプレゼンテーション重視って、はっきり言って採点に関してヒジョーに悪い予感しかしませんw 数学者の本能に賭けて客観性を守ったシステムにしていただきたいものです。しかし、五輪種目としてそれで大丈夫なのか、という疑問は残ります。まあ、あくまでラケルニクさんの長期的ビジョンなので、まだまだどう転ぶか分かりません。今までいろんなルール変更を実現してきている方なので可能性は大いにあると思っていますが。