『会報 20172月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

未払い残業代は、

 ・元々未払い残業代を支払っていないケース

 ・有効だと思っていた制度が実は違法・無効であったケース

 ・使用者が把握していた労働時間と実際の労働時間に乖離があるケース

で発生することが多い問題です。

事業場外労働に関する労働時間管理の問題も、労基法38条の2の事業場外労働みなしの有効性の問題、会社が把握する労働時間と労働者が主張する労働時間の乖離の問題があり、争いになり易いテーマです。

今回、事業場外労働に関する労働時間管理についての特集が載っていましたので、要旨をまとめながら理解を深めてみました。

今回は、時間管理の方針についてまとめます。

 

6.時間管理の方針

事業場外労働の時間管理の難しい点は、労働実態を把握しようとすればするほど事業場外労働みなしの適用がなされにくくなり、一方で労働実態を把握しなければ残業代請求や労災事案発生の場合に、会社が反論しにくくなるというリスクがあることです。

従って、少しでも正しく事業場外みなしを運用する方向で検討するか、事業場外労働みなしを適用しない方向で検討するか、で考えることになります。

(1)少しでも正しく運用する方向

事業場外労働みなしの運用を徹底するために、次の点について考慮する必要があります。

 ・不必要な会社への出社、帰社は求めず、直行直帰を基本とすべき

直行とすることで、その日の事業場外労働の前に具体的な指示をしていないと主張し易くなります。また、直帰することで、その日の業務内容を細かく確認していないとも主張し易くなります。

 ・業務報告についても逐次報告する形ではなく、1週間に1度報告するなどの工夫をする

 ・携帯電話などは、取引先との連絡に用いることを基本とする

緊急の用件がない限り、会社が携帯電話に連絡して業務内容について指示することはない旨の取り扱いなども重要です。

 

このように、毎日の業務内容を確認したり、日ごとに業務指示を出したりしなければ成り立たない業態の会社では、事業場外労働みなしを正しく運用するのは難しいと言えます。

 

(2)事業場外みなしを適用しない方向

労働時間をより厳密に管理するのであれば、事業場外労働みなしの適用は必要なくなります。この場合、次のような点に注意することが重要です。

 ・直行直帰を基本とする

 ・訪問先に訪問時間、退出時間を毎日報告させる

 ・帰社時間に間に合わない場合は、どのような理由で帰社できないのかを報告させる

 ・だらだら仕事をしている方が結果として収入が多くならないよう、成果に応じた手当て・賞与などを設ける

 

 

事業場外労働みなしは、せっかく制度があるですから有効に適用すべきだと思いますが、基本は労働時間を管理することですから、使用者が正しく労働時間を管理できる仕組みとして使用できれば、それに越したことはないですね。ただし、厳密に時間管理をしようと、使用者も労働者もその管理稼動に煩わされるようであれば、本来の目的を思い返して、どうあるべきかを考えるべきかと思います。




 


 


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