『会報 2016年2月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
社会保険労務士は制度創設から45年を経過して、業務範囲も広がるとともに社会からの期待も高まって来ています。社会的要請も増加している状況の中、残念ながら社労士の職業倫理に反する行為や事件が起きています。今回、社労士の倫理について解説した記事が会誌で特集されていましたので、その要旨をまとめてみました。
今回は、懲戒処分事例と苦情処理の状況についてです。
5.懲戒処分事例
懲戒処分の事案では、助成金の不正受給や書類の虚偽作成が原因のものが中心となっています。連合会では社労士の職業倫理向上のための検討機関として、社労士の品位保持に関するタスクフォースを設置しています。
雇用関係の各種助成金の不正受給を目的とした虚偽申請、厚生年金保険法等に係わる標準報酬月額を低く申請し、不当に保険料の賦課を免れることについて指示等を行った事案等が多発したことから、厚労省は連合会へ緊急要請を行っています。
・懲戒処分事案のうち、多くが解雇関係の助成金の不正受給への関与であることから、社労士が雇用関係の各種助成金申請事務を行なうに当たり、職業倫理上配慮すべき事項を整理すること
・都道府県社会保険労務士会の苦情相談窓口における対応が適切に行われるよう、相談対応者への研修等の必要な援助を行なうこと
6.苦情処理の状況と対応課題
都道府県社会保険労務士会から連合会に報告された苦情の状況および代表的事例を見ると、申請者は労働者または事業主が大半となっていますが、社労士から社労士に対する苦情や行政機関から通報されたものもあります。
①契約・手続の不履行・遅延
社労士に依頼した助成金手続きが遅れ、受給できなかったという事例
②品位・倫理の欠如
手続きに必要な資料を社労士に提供したところ、誤って破棄されてしまった事例
③不適切な指導内容
社労士の指導により未払い賃金が発生した事例
④報酬関連
障害年金手続きに関する報酬が当初の説明より高額である事例
次回は、品位保持に関する課題についてまとめます。