『会報 2016年2月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
社会保険労務士は制度創設から45年を経過して、業務範囲も広がるとともに社会からの期待も高まって来ています。社会的要請も増加している状況の中、残念ながら社労士の職業倫理に反する行為や事件が起きています。今回、社労士の倫理について解説した記事が会誌で特集されていましたので、その要旨をまとめてみました。
1.社労士の倫理
社労士の職業倫理については、社労士法で
「常に、品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない」
と規定されています。
「常に品位を保持すること」
社労士は、法律によってその資格を付与され、公の信用力を背景に、一定の業務に従事する独占的な立場が認められています。それに応えるという社会的責任がここに言う“品位”に実質的な意味です。
「業務に関する法令及び実務に精通すること」
社労士が法律によってその資格を付与され、独占的に業務を行なう立場を認められている根拠は、その専門的職能に基づいていますので、社労士は専門家として絶えず資質の向上に努め、社会のニーズに対応して行かなければなりません。
「公正な立場で業務を行なうこと」
社労士は、独占的に一定の業務を認められていますので、その立場を見失うことがあってはなりません。労使双方に対して法の遵守を求めなければならない立場であり、常に公平な立場を保持して労使の信頼を得なければなりません。
「誠実に業務を行なうこと」
社労士は、業務を受託した委任の本旨に従い、善良なる管理者の注意を以て受託事務を処理する義務を負います。委任契約の目的とその事務の性質に応じて、最も合理的な処理を行うことを意味しています。
社労士が職業倫理を保持しなければならないとすることは、社労士法などによって規定されており、これらの規定に違反したものについては罰則規定が設けられています。都道府県会会則準則においては、事前の防止策を講ずることにより、社労士の自治を図っています。このような自浄作用の他、最終的には、労働社会保険諸法令の規定に違反した時、または社労士たるに相応しくない重大な非行があった時、国による監督、懲戒、罰則が定められています。
次回は、業務制限と非社労士との提携禁止についてまとめます。