毛虫の行進 | 陣内俊 Prayer Letter -ONLINE-

毛虫の行進



現代社会は忙しい社会だ。

猫も杓子も忙しい。

しかも悪いことに、

何のために忙しいのか、

それすらも考える時間がないほど忙しいのだ。




、、、

ファビオさん夫婦が、

ブラジルで子育てセミナーをするのに、

先週出席した。

ファビオの奥さんのエリザベスさんが、

子どもたちと時間を過ごすことに献身する、

ということを話した後に、

毛虫の話をしていた。




ギョウレツケムシという毛虫がいて、

その毛虫はフェロモンを出すとともに、

細い糸を吐きながら進む。

その糸をたどって二番目の毛虫は進み、

二番目の毛虫も糸を吐く。

その糸をたどって、

三番目が付いていく。

、、、

という風に、繰り返し、

子どもの「汽車ぽっぽごっこ」のように、

あるいは中央線の電車のように、

列をなして進むのだ(キモい)。

こちらがユーチューブの動画である(キモい)。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ICGMXsiEaFc#!




ある人が実験をしたそうである。

この毛虫の一番先頭のやつが、

一番後ろのやつのおしりのフェロモンを嗅ぐようにしてみた。

だれもがやりたくなっちゃうことだろう。

期待に背くことなく、

毛虫たちは輪っかを作って、

エンドレスな行進を始めた。




さらに彼は実験した。

その輪っかの真ん中に、

毛虫の大好物の果物を置いた。

するとやはり期待を裏切ることなく、

彼らは輪っかを崩さず行進を続けたのである。

彼らはついに、

誰も果物を食べることなく、

飢え死にするまで回り続けた。




ギリシャ神話か何かのようだ。




この話が何を示すか。




我々はあまりにも忙しい。

「でも、なんで?」




立ち止まってそれを考えることは少ない。

いったい何のために忙しいのか。

子どもと時間を過ごす以上に大切なことなど、

人生にいくつあるというのだ?

子どもにとっては、それが人生の貴重な思い出になる。

そもそもそういうことのために、

私たちは忙しく働いているのではないか。





ブラジルは経済発展が目覚ましく、

この3年で物価が二倍近くになったそうだ。

みんな大きな車を買い始め、

共働きをし、

子どもを塾に送り、

良い学校に送り、

最終的にはアメリカに送りたがっている。

子どもたちがリッチになれるように。

「幸せ」になれるように。




でも、実際には真逆のことが起きている。

いつも親が家におらず、

親と時間を過ごすことが出来ず、

親に愛されず何が正しいか教えられず育った子どもたちは、

ドラッグ、反抗、若者の自殺、非行、十代の妊娠、、、、

などの問題を抱えている。





これは、日本が「いつか来た道」ではないのか。

ファビオさんたちのしていることは、

この毛虫たちの顔をひとりずつ思い切りひっぱたき、

ほら、あそこにマンゴーがあるじゃないか。

食べに行こうよ。

手遅れになる前に。

人生と子どもを失う前に!

次の世代を失ってしまう前に!





そう呼びかける働きのように思えた。



ブラジルにも「ロストジェネレーション」が生まれるのだろうか。

そうならないでほしい。

日本の「ロストジェネレーション」である我々は、

同じ過ちを繰り返さないようにしなければ。




時には自らギョウレツから脱退する勇気も必要だ。

そしてギョウレツから脱退する人を、

「異端分子」として糾弾する人々から、

我々は守らなければならない。

「大切なことを大切にする勇気ある人々」を、

身体をはって守らなければならない。

多分。

最後には、

全員がマンゴーを食べられたらいいね。