帰り道2 | 陣内俊 Prayer Letter -ONLINE-

帰り道2

 

空港で飛行機を待ったりしている間、


ブラジルで時々、ぼーっと人間観察したりしていました。


ブラジルの人はなんだか楽しそうに生きています。


東南アジアのゆったりとしたペースとも、


欧米の洗練された明るさとも違う。


治安が良いかどうかは分からないけど、


日本よりは悪いでしょう。


「水と安全は無料」の時代が終わったとは言え、


日本より治安が良い国なんて、


未だに殆どないからね。

 

 

 

 

ブラジルを走る車は、


フィアットとフォルクスワーゲンが圧倒的に多いです。


時々ヒュンダイとかトヨタとかホンダがありますが、


全部合わせて全体の1割か2割ぐらいでしょうか。


特に南部はドイツの影響が強いそうです。

 

 

 

 


あと、陽気な国民性と、


カトリックの文化と、


急増するプロテスタント、


という背景の上に、


更にある種の多様性を加えているのが、


「社会主義っぽさ」です。


20年程前まで軍事独裁政治に近いことが行われていた、


ということも関係しているし、


今の大統領はキューバのカストロ議長の親しい友人だそう。


先日病死したベネズエラのチャベス大統領を含め、


中南米は「赤化」するのではないのか、


という危機感を米国が持っているというのは、


なんだか頷けます。

 

 

 


ブラジルはもちろん、自由経済を標榜していますが、


政府による管理が強い。


チョコレートにかかる税率が80%だったり、


(その他多くの生活必需品の税率が異常に高く、

 小売で表示させる法律もないため、

 人々はどれぐらい自分たちが税金とられてるか、

 あんまり知らないそう。)


子どもを学校に行かせなかった政治家が、


禁固刑になったり、


突然郵便物に、中身の3倍の関税がかけられたりするらしい。


ここから米国を眺めると、


「自由主義者」の言っている意味がとても良く分かる。


政府は小さい方が絶対良いよ。


人々の自助努力のインセンティブを高めるべきであって、


政府の統制と政府による援助に頼るのは、


健全ではない。


本当にそうだ。

 

 

 

 


ただ、ひるがえって日本を見たとき、


同じように「ジャパンインコーポレート(日本株式会社)」


と揶揄されながら、「官民一体」の経済成長を遂げ、


「もはやこれは社会主義、


 マルクスの理想郷ではないか。」


という指摘をされながら、


遅ればせながら2000年代に、


新自由主義に舵を切ってみたり、


今度は社会民主主義に舵を切ってみたり、


今度は戦後保守に逆戻りをしてみたり、


足取りがおぼつかない。

 

 

 

そんな日本で、


南米と同じように、


「やっぱり政府は小さい方が良い」


と僕は何故か分からないけど、言えない。


やはり何らかのセーフティネットを含む、


社会民主主義に近い制度設計を、


日本は必要としているように思う。


直感的なのだけど。

 

 

 


南米と日本で、


僕は真逆のことが「処方箋」だと思う。


(もちろん、僕は100%間違っているかもしれないんだけど)

 

 

 


何が違うんだろう。






1つ思ったのは、


南米の人々のメンタリティは、


(宗教とのねじれがあるものの)


社会主義的だ。


政府は自分たちの面倒を全部見るべきだ、


と思っている、とファビオさんは言う。


日本の人のメンタリティも、


国民の一部は「社会主義的」で、


二言目には「政府が悪い。官僚が悪い。」という。


官僚と政府の悪口を言うと賢く見えると


思っているのかもしれないが、


事実は逆のことを示している。

考える力がないことの証明にしかなっていない。


「是々非々」という言葉があって、


政府と官僚も良いことをするし、


「一般市民」も非常に悪いことをする。


線の引き方が短絡的なのである。


僕はそういう人たちがハッキリ言って嫌いなんだけど、


まぁ一定数いるのは仕方がない。


そしてそういう人たちは声は、


やたらにでかい。


でも、


もっと大多数の声が小さい人たちは、


(つまり考える頭を持っている人たちは、)


とても頑張っている。


とても頑張っていて、


もうこれ以上出来ないぐらい自助努力をして、


なおかつ苦境にあえいでいる。


これは多分、日本の産業構造とも関係があって、


日本がいつか一次産業を武器とする日が来たら、


状況は変わるかもしれない。


なにしろ、


日本社会を下支えしている努力の総量は凄まじく、


もう十分「自由競争に晒(さら)されすぎている」。


だから、何らかのセーフティネットが必要だと、


僕は思う。

 

 

 

 

同じ栄養失調でも、


赤ちゃんの栄養失調とおじいちゃんのそれでは、


処方箋は異なって来るように、


国家もやはり、


それぞれに自律的に政策を決めて行く必要がある。


日本でもアメリカでもない場所から、


日本を眺めながら、そんなことを思った。