『愛犬の飼主への愛のかたち』
~愛犬は自分自身のことよりも、自分が亡くなった後の飼主のことを心配~
今日は、一個人としての感覚的な話しです。
獣医師としての話しではありませんので、ご了承いただければと存じます。
動物を飼育すると不思議な体験をすることが多くあります。
単純に、科学や医学では割り切れない出来事や体験です。
たとえば、瀕死の子が、医学的な限界を超えて飼主を待って、飼主の腕に抱かれた瞬間に息を引き取るということは驚くほどたくさん報告されます。
また、会社や学校でトラブルがあり、家族のだれも気付かないのに、愛犬や愛猫が、そっと寄り添ってくれるということも頻繁に見聞きすることです。
これは明らかに偶然ではないと思います。
<飼主すら誤解する愛犬の愛のかたち>
犬の飼主への愛は、飼主が考えているより、たぶんずいぶん大きく、そして、 深いと思います。
ですが、その愛犬の想いが飼主に通じていないことも多々あるように思います。理由としては、家族が愛犬の愛のかたちを理解できていないこと。また、飼主がまさか愛犬がそこまで自分ことを考えてくれているとは予想していないことが原因のように思います。
飼主が愛している犬だから愛犬と呼ぶのではなく、飼主への愛にあふれている犬なので『愛犬』と呼ぶのではないか、と私はそう感じたりします。
それぞれの犬が、それぞれの方法(愛)で飼主を助けようとし、役に立とうとしています。
たとえば、「ムダ吠え」といわれる問題行動は、その背景に大切な飼主と家族を外部の悪い存在から必死に守ろうとしている行動のひとつです!!
犬が長いあいだ番犬として働いていた歴史を考えると、彼らが本能的に家族を守るために吠えるという行動をしようとすることの理由が分かります、ね。
このように、愛犬の必死の努力の背景を知ると、ムダ吠えもかわいく聞こえてきます(笑)。そして、飼主としては、できることであれば、愛犬が家族に役立とうとする「無駄吠え」という努力を、もっと役立つ行動に導いてあげられれば理想と思います。
このように、愛犬は自分なりに必死で考えて努力していますが、飼主や家族に理解されないということが往々にして起きています。
愛犬の飼主への愛情は深く、永遠です。
ところが、その想いすら飼主に理解されていないことが往々に発生していると思います。
<愛犬の願いと、飼主の思い込み>
愛犬はほんとうは何を願っているのでしょうか?
飼主がよかれと思っていることは、本当に愛犬が望んでいることでしょうか?
さらに、「愛犬の飼主への愛」について話しを進めてゆきましょう。(∩_∩)
<飼主と愛犬の微妙なすれちがい>
やさしい飼主であり、愛情深いかたであればあるほど、愛犬をこころから大切にされていると思います。
ところが、その想いは、愛犬の想いと正反対である場合もあるのです。
愛犬家は
●「その子だけを愛そう」
と思われている方も多いと思います。
しかし、そのとき、あなたの愛犬は
●「あなたの幸せを考えている」
ように思われるからです。
この微妙なスレ違いがご理解いただけるでしょうか?
<献身という愛のかたち>
あなたの愛犬はオオカミの血を受け継いだ社会動物です。
信じられない方もしらっしゃるかもしれませんが、そのため、
自分のことよりも飼主や家族の幸せを優先する
という行動を自然に選びます。
<大好きな飼主の幸せを願って・・>
愛犬の、その大きな選択の一つが、
自分が死んだあとに残された飼主を気づかう
という行動です。
この願いに多くの飼主は気づかれていないのではないかと心配になります。
<科学に愛を語らせない!>
科学に愛を語らせると、下記のようになります。
・「ホルモンの作用」、
・「生理的」、
・「神経の興奮」
(笑)
みなさんは、自分の子どもの寝顔をみて、
・神経が休んでいる、
・いまノンレム睡眠
だなんて思うでしょうか?
科学的には正しいかもしれませんが、子供の寝顔を
・愛(いと)おしさや、
・将来この子が幸せになってゆくことを願う気持ち
という温かい心とは、かけ離れたモノになっています。
同じように、愛犬の願いは、科学やスキルで理解するのではなく、
・その子の目をみて、
・その子のひたむきな姿から
感じ取るものだろうと思います。
その意味で、今回のお話しは、獣医の話しではありません。
「なぜ、子供をいとおしいと思うのですか?」
「それはホルモンの働きです!!」
という返答は、医学の話しなら正しいですが、家族の話しでしたら精神異常でしょう!!!
愛犬のあなたに対するひたむきな愛情は、科学ではなく、こころで理解する必要があるのだと思います!!
<あなたの笑顔を見るために!>
愛犬はあなたの笑顔をみるために、一緒に楽しい時間を過ごすために、いろいろなことをします!
◎あなたの目の前に最高の笑顔でピョンとあらわれたり!
◎うれしそうにルンルン走ったり!
◎出勤や登校を心配そうに気を付けてね~っとお見送りしたり!
◎病気の時に隣でピタッと寄り添ったり!
◎家族のけんかをヤメテと止めようとしたり!
◎あなたの帰りをオカエリーっと喜んでお出迎えしたり!
、、、とたくさんの愛を自然に選んでいます。
あなたが幸せでいられることを願って、愛犬なりに必死に工夫している訳です。
人が同じことをしようと思ったら、それがどれほど大変なことが、想像すると少し理解できるかもしれないですネ(笑)。
結論としては、
あなたは愛犬から愛されている(愛されていた)ということです。
・たまに、無駄に吠えちゃけど、
・たまに、おもらしするけど、
・たまに、おやつをせがむけど(これは毎日かな??)
でも、愛犬はいつもあなた幸せにしようと必死で努力している訳です。
<残された飼主を案じて・・>
そこまでいつもあなたの幸せを考えている愛犬が、
自分がいなくなったあとの飼主の悲しむ姿
が想像できないと考えるほうが違和感があります。
私が経験した限り、多くの愛犬は自分の死期を察知し、自分がいなくなった後の残された飼主の幸せについて考えています。
これが、今日、お伝えしたいたったひとつのことです。
<あなたの笑顔のために>
犬は、人と同じ「社会動物」です。
自分の子どもでなくても、乳を出し、毛づくろいし、子どもを育てます。危機が迫れば、幼い子供を口にくわえて安全な場所に移動もします。
仲間が病気をすれば回復するまで介護もします。
自分のためだけでなく、自分以外の存在のために、問題を予測し、気をつかうのが犬という生きものです。
(問題を予測し、対処する能力は、狩りに使用されてきました。そして、現代では盲導犬など困難を越えるためにも生かされています。)
<残された飼主を救う方法>
さて、私が知る限りでは、かなり多くの愛犬が、自分がいなくなった後の 残された飼主を どう救うのかを真剣に苦慮していると思います。
多くの犬が、自分の死期を察します。
そして、数年後、自分が虹の向こうの世界へ旅立った後、飼主が幸せに生活し続けるのかを案じています。
信じられないかもしれませんが、これは私が犬を飼育した経験であり、多くのかたの愛犬をみてきたなかでえた実感です。
愛犬の飼主を心配そうに見つめる姿は、なにか物言いたげで、さみしそうでもあります。
みなさんは、愛犬が、自分の病気やからだの苦痛のことより、将来の飼主のことを心配しているけなげな姿を想像できるでしょうか?
<人の予想を超えた犬の能力>
犬は、飼主さんの声や表情だけでなく、匂いからもどれだけ自分がいなくなった時のショックがあるかが推測できるように思います。
犬の祖先のオオカミは、反芻動物が発する匂いで追跡して狩りしています。獲物の発する体臭で、獲物の心理状態や健康状態までも理解できるのです。
(それなので、犬は人のガンを匂いで感知できます。また、人が悲しんだり病気の時に飼主が何も言わなくても、愛犬が隣でそっと寄り添ったりもするのです。)
実際に、犬やオオカミでなくても、反芻動物の体調は、息の匂いから分かることが多いです。反芻動物の体調が悪いときは息が腐敗臭などくさい匂いが混じることがあるのです。
犬の嗅覚は、さらに敏感ですから
匂いから飼主の感情まで正確につかめるようです。
そのため、自分が病気をしたときなどの経験から、自分がいなくなったあとに飼主の心理的ダメージが手に取るように理解できるようです。
愛犬が自分のことよりも、飼主の心配をして飼主の顔を覗(のぞ)き込む姿をよく目にします。それは、そのような理由のように感じるのです。
<バカ犬、言葉がわからない犬>
犬は、ときどき世間で、バカ犬とか、言葉が分からなくて理解できない!と見下して言われることがあります。
ですが、犬は、もっと重要なシグナルから人の深い感情や状況を感じ取っているように思います。
犬がなぜ人の感情を、人以上に理解できるのか、そして、その傷ついた心を癒そうとするのか、犬のことがさらに理解されるようになれば、きっと犬の愛情についてもっと敬意が払われるようになるのではないかと考えます。
(ちなみに、人でも匂いに敏感な方のなかには、アトピーの匂い、ガンの匂い、怒っている人の匂いなどわかるかたがいらっしゃいます。)
<だれが、自分のかわりに飼主を支えるのか?>
犬は社会動物です、ネ。
そのため、だれかが失われた時の残された家族の気持ちが理解できる基本的な能力を持っています。
そのため、
▽飼主がペットロスになること
▽そこから長く立ち直れないであろうこと
▽生涯にわたり苦しむであろうこと
が理解できるように思います。
自分が亡くなる前に、飼主の顔を、何度も、何度もじっと覗き込んでいる子をたくさん見て来ました。
その表情は、自分のことでなく、
飼主、あなたを心配している
のです。
<愛犬の願い、それは「飼主の幸せ」>
愛犬の人生は短いです。
そのため、飼主を置いて、別れなければいけないことをよく理解しているように思います。
いまの愛犬のほかに、新しい犬を飼うことが、愛犬にとって失礼や裏切りになることのように感じられるかたもいらしゃるでしょう。
しかし、これは大きな間違いなのではないか思います。
多くの愛犬の心からの願いは、
『大切なあなたがいつまでも幸せでいること』
です。
よく飼主さんから、シニア(老)犬を前にして、
「この子にとって、いま、一番やってあげられることはなんでしょうか?」
という相談を受けます。
その時に、自己中心の犬は別として(ごくたまにいますが(笑))、飼主を本当に愛していると思われる愛犬の表情から、多くの飼主さまには、
『新しい子犬を飼育されること』
をオススメします。
驚かれることが多いのです。
犬の願いは、
自分がこの世から去った後も、飼主が悲しまずに過ごせること
を願っていると感じられるからです。
そして、その最も安心な方法とは、自分の想いを引き継いでくれる新しい犬が飼主さんを支えてくれることだと感じるのです。
みなさんが、愛犬だとイメージしてみてください。
あなたは、大好きな飼主を置き去りにして、この世を旅立たなくてはいけません。
そのときに、飼主が泣き崩れていたら、どうでしょう?
何年たっても、自分が一番幸せにしたかった人が泣いて過ごしていたら、、、、どんな気持ちになるでしょう!!?
多くの犬は、そこまで「無私」だと私はそう思います。
もし、私が残り少ない命の愛犬だったとすれば、新しい子犬に、必死に飼主さんや家族のフォローの仕方、支え方を教えるのではないかと思います。
そして、教え終わり、寿命が来た時に、静かに虹の橋をわたることでしょう!!
<新しい命に飼主の幸せを託して・・>
私がみるかぎり、愛犬が死を前にして一番望む家族を支える方法は、次の子の存在 と思います。
飼主の幸せをその子に託したいと思うのです。
できれば、自分が生前中にその方法を子犬に教えることができればと望むことでしょう!!
これは、同じ社会動物である人間も、おばあちゃんやおじいちゃんが孫に丁寧にいろいろ教えている姿からも、似た社会動物としての自然な愛情やよろこびなのだと思います。
みなさんが、単に一人で、老いてゆくのと、隣に孫がいてくれるのと、どちらが幸せでしょうか?
孫がいて、うるさかったり、面倒であったりすることはあると思います。しかし、孫や子供がいてくれるのと、いないのであれば、いてくれたほうが なぜか幸せを感じやすいのではないでしょうか。
犬の能力を低くみずに、しっかりと理解することで、愛犬がいかに人に大きな配慮を行っているかが分かっていただけたのではないでしょうか。
愛犬が、残り少ない人生と察した時、その子がこの家で長年蓄えてきた飼主を助ける知恵と愛情を、次の命に受け継がせてあげることは愛犬とって最大のプレゼントになると私はそう考えています。
充実感と、なによりも飼主の幸せを約束できるような環境は、愛犬の老後にやわらかで温かい春の陽ざしとなるのではないでしょうか。
そして、実際に、
不思議なことなのですが、瀕死の愛犬が、新しい子犬の存在により、元気を取り戻すという現象が、よく起こるのです。(∩_∩)//
<愛犬の愛を察して・・>
そこで、もし可能であればお願いがあります。
すでに愛犬を失い、悲しみや、後悔をされている飼主さんがいらっしゃいましたら、もし、事情が許すのであれば、再度 新しい愛犬を飼って頂きたいと願います。
虹の橋を渡った、あなたの愛犬があなたの悲しまれ続けているお姿をみたときに、いったいどんな気持ちになるか感じていただきたいのです。
きっと、いちばん悲しい想いを持つのが、あなたの幸せを考えてきたあなたの愛犬であると、もしかしたらご理解いただけるかもしれません。。。
愛犬が生きているときも、そして、亡くなってしまってからも、きっと
「あなたの愛犬はあなたの幸せと笑顔を見たい!」
のだと思います。
動物たちが、虹の橋をわたった後も、なぜか、その愛犬やペット達が隣にいるような錯覚を覚えることがあります。
その子の匂いや、声が聞こえるような、そんな感覚にうたれることがあります。朝、頬に触れているようなそんな感覚を持つことがたびたびあります。
錯覚なのか、錯覚なのでしょう。
でも、自分しか知らないその特徴や癖は、なんとも言えないなつかしいものがあります。
そう、錯覚なのでしょう。
しかし、錯覚だととしても、この子たちに笑顔がみせられる人生にするよう、もっと頑張ろうと感じます。その意味では、愛犬や動物たちは、その子が死んだ後も飼主と一緒にいてくれるのかもしれませんね。。。
そして、亡くなってなおあなたの愛犬は、きっとあなたの幸せをいまも願っていると思います!愛犬はいつまでもあなたの心の中で生きています。
愛犬の願いを受け止めて、涙や悲しみより、幸せに向かって歩んでゆきましょう。そのことを愛犬がきっと一番喜んでくれると思います。
これで、個人的なお話しは終わりです。
みなさまは、愛犬を思い出しながら、どうお感じになられたでしょう?
そして、愛犬のために、今後、どう生きていかれるでしょうか?