雨「作家の条件」森村誠一著より。怒り汗コメント

これは「昭和と共生した作家」と題して書かれている部分にあったフレーズだった。前回も似たような言葉で触れたが、松本清張は活字に飢えた読者の前にオピニオンリーダーとして登場したと森村氏は語っている。

それまでの探偵小説とは異なり、動機を重視したミステリーになったからでもあった。それは読者に新鮮なカルチャーショックをあたえたようだ。

昭和という時代、特に戦後だろうが、その混乱期の社会の縮図を巧妙に精密に描き出した作家はやはり清張が筆頭だろう。また清張の幸運は、日本映画の最盛期ともジャストミートしたことだと、森村氏は指摘している。

彼の主要作品はほとんどが映画化されている。だから、たとえ本を読まなくても映像化された清張の作品世界に触れていることになるのだ。テレビでも、毎年のようにドラマ化されている。

ミステリーには事件はつきものだが、それらが一般の人々のすぐ近くでも起こったことや、起こりうることをリアルに描いているという意味で、“読者自身をモデルにしたような”、という表現を用いたのだろう。松本作品を読むとき、いつも膨大な取材、情報分析を感じるものだ。だからこそリアル感が迫ってくるのだろうな。