【アプリ】若者に広がる“リア充”動画アプリ「MixChannel」はなぜ成功したのか | 『iPhone』オススメ情報-.JP-

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始まりはとある女子大生らしきユーザーだったという――。

ある動画アプリに投稿された、女の子が彼氏といちゃつく姿を映した動画は、すぐに話題を呼んだ。
そして、カップルがいちゃいちゃする様子を撮影した「カップル動画」はたちまち一大流行ジャンルとなった。

「元々、若者向けのコミュニティを作ろうとしたんです。その中に“LOVE”というジャンルを用意しておいて、これがはやったら面白いね、と言い合ってたのですが……」

 そう語るのは、中高生の間で大人気の10秒動画アプリ「MixChannel」のプロデューサーである福山誠さんだ。冒頭のエピソードは、この「MixChannel」で起こった出来事の1つ。

「そもそも今の若い子って、Twitterのアカウントをカップルで共有する『カップルアカウント』の文化があるんです。10万人くらいのフォロワーを抱えるカップルもいて、そういう文化を背景にして流行したものだと思います」(福山さん)

 このアプリは、大人のネットユーザーの間ではほとんど知られていないが、中高生の間での認知度はとても高い。
運営会社はソーシャルゲーム「単車の虎」などのヒットで知られるDonuts。

2013年12月のリリースにもかかわらず、今年の3月には月間再生数が5億4千万回を突破、さらに月間の訪問者数は約380万人にも達している。
米国の動画アプリ「Vine」のように、1つの動画が数秒程度の短さであるにも関わらず、1日の利用時間は平均24分と長い。

「日本のインターネットでは毎年、夏休みに中高生の間で人気サービスが生まれるのですが、たぶん去年はそれがMixChannnelだったんですね。
そこからうまく上昇気流に乗れたので、今年の夏休みも色々な企画を仕掛けていきたいですね」(福山さん)


●中高生の間で盛り上がるMixChannel

 このMixChannelが、どうしてこれほどの人気を集めているのか。すぐに見て分かるのは、何というか、上がっている動画が大変に「リア充」な雰囲気に満ちていることだ。

 メディアでは最初に紹介したような、付き合ってちょうど1年のカップルが教室で祝福されている様子などの「LOVE」ジャンルの動画が話題になりがちだが、実際に見てみれば、すぐに多彩なジャンルの動画が盛り上がっていることが分かる。

 それは例えば、友達同士のバンドの演奏の動画だとか、あるいは今や必修科目となったダンスだとかの光景……などである。

 中には、とても凝った動画もある。以下の動画などは、MixChannelで一大ジャンルをなしている「黒板アニメーション」である 。
これはアプリ内にある画像のスライドショー機能を利用して作られており、こういう短いアニメーション動画も決して珍しくはない。

 それにしても、この動画を作っているのは、明らかに中高生たちである。それは、日本のこういうサービスで活躍してきた、いかにも「オタク」なユーザーとは異なるタイプの学生たちなのだろうか。

「いや、別に学校のトップにいる、キラキラ輝いている子たちが投稿しているわけじゃないです。たぶん、ちょうど学校のヒエラルキーで言うと、そのひとつ下くらいの子たちが多い気がしますね。その辺りにいる、一番“もっとみんなに見られたい”、“憧れられたい”という思いが強い子たちが投稿しているように思います」(福山さん)


●「日本人にVineは向いてないと思った」

 開発者の福山さんは、学生時代にはDeNAやグリーでインターンをして、大学院修了後には新卒でGoogle日本法人に入社した経歴を持つ人物だ。
Donutsに参画した経緯は、Googleをやめて開発した、ランチ時間を使って社会人同士が会えるサービス「ソーシャルランチ」を売却したことからだったという。

「過去に開発したソーシャルランチが社会人同士のマッチングサービスだったので、僕自身がいわゆる“意識高い系”なんじゃないかと思われることもあるのですが、全然そんな崇高な人間ではないんですね。ただ、コミュニティや人間が好きなんですよ(笑)。ソーシャルランチの場合も、都心で働く人を観察しながら作りました」(福山さん)

 そんなふうに「コミュニティ好き」を自称する福山さんは、日本にVineスタイルの動画サービスを持ち込もうとしたとき、「これでは、日本人のコミュニティが使うものにはならない」と考えた。

「Vineって、基本は一発撮りで、コミュニティ的にもTwitterと同じく仲の良い友人や好きなユーザーの動画を見るという設計なんですね。日本人向けにVine的な設計の動画サービスを作ったとしても、そもそも動画投稿の敷居の高さなどがあるので、ゼロからユーザーを増やしてコミュニティとして成立させることは非常に難しいだろうなと感じていました。だから、日本人に合うような、まったく違う方向性を目指しました」(福山さん)

 そこで福山さんは、即興で動画を撮影させるよりは、画像をインポートさせる方向でユーザーを支援した。最近の若い子は、暇な時間によく画像加工をしている。アプリの中に編集機能を入れて、そういう画像をインポートしてスライドショーを作れるようにしたのだ。

 すると、今度はユーザーたちが意外な行動をとりはじめたのである。なんと、画像をセル画のように使って、パラパラ漫画を作り始めたのだ。さらには高速でスライドショーを切り替えてアニメーション動画を投稿するような人まで登場してきたのだ。

「正直なところ、写真を一枚一枚見せて、最後にフェードアウトしていくような普通のスライドショーを考えていたので、これは想定外でした(笑)。最近では、何百枚もの画像を使って、アニメを作る高校生もいますね」(福山さん)

 さらに、Vineのようにフォローしてタイムラインを作っていくソーシャルな設計は取り入れるのをやめた。その代わりに、トップにランキングを置いて、人気動画を徹底的に目立たせる仕組みにした。この割り切りは、明らかに現在のにぎわいをつくりだす要因になっている。

 実際、サービス開始当初に存在していたVine風の動画サービスは、米国のVineと同じようなコミュニティづくりを目指した結果、そのどれもが低迷を続けている。

「MixChannelにめちゃくちゃハマっている層って、地方の子たちが比較的多いんです。都市部の女子高生って、ファッション誌だって何誌も読んでいて、とても多様な価値観のカルチャーを持っている印象です。そういう子たちは、VineやInstagramなどで好きなアーティストモデルや、わりとおしゃれな友達の投稿なんかを楽しめるのかもしれない。でも、地方の子たちはまだそこまで多様化してない印象があります」(福山さん)

 実際、広報資料を見ると、ユーザーが都市部に偏っておらず、まんべんなくさまざまな地方に散らばっているのが分かる。

「だから、MixChannelはランキングを大事にしたんです。ここは、実はまるでテレビのように単方向で激しくプッシュしてくる文化です。でも、だからこそ、そういう日本的なマスの世界にいる地方の子たちも楽しめるんですよ」(福山さん)


●目指すは“リア充”のニコニコ動画!?

 取材中、福山さんは「なぜ、他社はこういう作り方をしなかったんでしょうね」と首をひねっていた。一方で、コミュニティ育成のベンチマークにしているサービスとして、意外な名前を挙げた。
それは、ドワンゴの運営する「ニコニコ動画」である。だがオタク向けという印象の強いニコニコ動画から、MixChannelが何を学ぶというのか。

「ニコニコ動画の設計は非常に日本的で、MixChannelとしてもかなり参考にしています。非リアとリア充みたいな差があると思いますが、結局、MixChannelもニコニコ動画も、ネット上で大きく反応をもらいたい人に向けて、最高に気持ちよくなれるサービスを作っているんですよ」(福山さん)

 そもそも福山さんによれば、もはや今の10代にとってのリア充を「上の世代の発想でとらえてはいけない」という。というのも、彼女らは“オタク”っぽいのだ。

「だって、スマホを1日中いじっていて、暇な時間は複数のアプリを駆使して、ひたすら画像加工をしているような人たちが“リア充”と呼ばれているんですよ。それって上の世代の感覚で見たら、本当に“リア充”なのかという話ですよ(笑)。見方を変えたら、オタクですよね。最近は、もう動画編集アプリの需要まで高まっており、そのへんの女子高生がプロ並みの編集をしたりしますからね」(福山さん)

 また、MixChannelはサービス開始直後、読者モデルとの連携企画を行っている。読モと言えば、上の世代には雑誌文化と結びついた、華やかなマスメディアの存在というイメージがあるかもしれない。だが、福山さんは「現在の読モの実態は、ほとんどネットアイドルで、情報発信もネットがメイン。歌い手や踊り手のような人たちと同じ」と言う。

「実際、人気の読モって、しょっちゅう自分のブログやTwitterを更新していますからね。Twitterのフォロワー数も30万人だとかで、すぐに画像が500RTされたりします。ネット上での影響力という点では、もう普通のテレビタレントよりもはるかに大きいですよね」(福山さん)

 ちなみに、こういう人気のあり方はその規模感も含めて、やはり中高生に人気がある、ニコニコ動画の歌い手や実況者によく似ている。しかもMixChannelで活躍する投稿者の遊び方も、ニコニコ動画にそっくりだという。

「ニコニコの“やってみた”という文化は、ネットの遊び方の本質をよく表していると思います。すごく個性的な表現が出てくるというよりは、誰かがやった面白いことを、みんなで真似する文化なんですよ。それがジャンルになって全体として盛り上がっていくのであって、それはMixChannelも同じです。実は、カップル動画がメディアでは面白がられますが、本当はやってみた系の動画のほうがずっと多いんですよ」(福山さん)


●「日本中の面白い中高生が集まる場所にしたい」

 では、そんなMixChannelが目指すのはどういう場所なのか。マネタイズについて聞くと、企業がスポンサードできる仕組みや広告を入れる予定はあるが、芸能界デビューや商品プロモーションのような話が舞い込むような状況には慎重になりたいという。

「それをアグレッシブにやってしまうと、この場所の意味が変わってしまうと思うんです。実際、トップのユーザーが宣伝ポストばかりしているブログサービスってありますよね。同様に、YouTuberみたいに特定のユーザーを推すことも今は考えていません。僕らは特定の主役がいないお祭りをやっているんだと思います。その意味では、東京ガールズコレクションなどの特定のクラスタの巨大イベントにイメージが近いかもしれないです」(福山さん)

 ちなみに、学生向けのサービスと言えば、日本のネット業界には3年周期でサービスが衰退していくという俗説(?)がある。これについてはどう思うのか。すると「普通に考えたら、このサービスは1年で消える類のものなので、まずはそこを頑張る必要があるのですが(笑)」と苦笑しながらも、福山さんからはこんな返答が返ってきた。

「妙な言い方ですが、学校を卒業したら、その思い出とともにユーザーが卒業するサービスになれたらいいな、と思っています。それで、代わりに新しい高校生が毎年入ってきて、たとえば地方の子がある日突然、一躍有名人になるんです。そんな感じで、いつも日本中の面白い中高生が集まっているような、とにかく濃い場所になれたらいいなと思いますね」(福山さん)




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