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“550台のiPhone”は、教育をどう変えるのか――青山学院大学 社会情報学部の取り組み

学生と教員にiPhone 3Gを配布し、授業やキャンパスライフなどで活用している青山学院大学 社会情報学部。
550台のiPhoneは実際の授業でどのように使われ、どんな形で生徒の学習をサポートしているのか。
同学部で助教を務める伊藤一成氏に聞いた。


この5月、学部の全学生と教員にiPhone 3Gを配布すると発表して注目を集めた青山学院大学社会情報学部。
同じ環境で学ぶ530人の学生と20数人の教員がiPhoneを利用することで、ライフスタイルやコミュニケーションがどう変わるかを研究するために導入を決め、すでに授業などでの活用が始まっている。

導入から約半年が経過した今、iPhoneは大学で実際にどのように活用されているのか。
携帯電話を授業で活用するノウハウを教員間で共有し、さらなる授業法を調査するために設立された「ケータイ活用教育研究会」の会合で、青山学院大学社会情報学部助教の伊藤一成氏がiPhoneの活用事例を紹介した。

導入と運用にはハードルも
青山学院大学 社会情報学部は、2008年4月に開設した新しい学部だ。
キャンパスは相模原市の淵野辺にあり、学生数は1学年200人。
開学して1年半となる現在は、1、2年生の約530人が学んでいる。

社会情報学部がiPhoneを導入した主な狙いは2つある。
1つは、ICT(Information and Communication Technology)を体感的に理解するためで、伊藤氏は「世の中の情報感度を感じ取ってもらう狙いがある」と説明する。
もう1つは、モバイルネット社会におけるライフスタイルやコミュニティのあり方を調査し、提案するためにiPhoneが必要と考えたからだという。

ただ、大学教育へのスマートフォンの導入にはコストや仕様など、さまざまなハードルがあると伊藤氏。
新たなサービスやシステムがなかなか作られないこともあり、運用面でさまざまな課題があると指摘する。

もちろん、スマートフォンを導入することによって、すぐ現れる効果もある。
例えば社会情報学部のiPhoneの導入では、学部生がみな「ただとも」となり、夜中を除けば無料で通話できることがコミュニケーションの活性化につながる
ほかにも、App Storeで有用なアプリを購入して使えることや、多くのWebコンテンツをPCと同じように閲覧できる点、MPEG-4に変換すれば動画をそのまま iPhoneで見られる――などのメリットが挙げられる。
さらに伊藤氏は、「青山学院大学では、英語教育でディクテーション(英語を聞いて書き取る学習)に力を入れており、iPhoneはメモリ容量が大きいので音声ファイルをたくさん入れられる。学生はそれをiPhoneで聞いて学習する」といった活用法を紹介した。

こうした利活用とともに“新たなシステムやサービスを作っていくことが重要”というのが伊藤氏の考えだ。
「導入した一員としての責務があり、先駆者としての責務もある。団体でスマートフォンを活用する日本で初めての学部で、今後、多くの大学で活用されていくだろうことを考えると、それらの大学のためにレールを引いておく責務もあるはず」(伊藤氏)

伊藤氏は、iPhone導入の背景や難しさを一通り説明した上で、社会情報学部でどのようにiPhoneが活用されているのかを、3つの事例を挙げながら紹介した。


事例1:すきま学習をiPhoneで
「学生と社会人の一番の違いは、時間の活用術が身についているかどうか」と考える伊藤氏がiPhoneの導入で最初に考えたのは、“すきま学習に iPhoneを活用できないか”ということだった。
そこで、社会情報学部ですでに運用されている資格受験支援のシステム「e-veryStudy」を iPhoneに対応させた。
「資格の勉強は、空き時間を見つけてやるのが非常にいいといわれているので、これをテーマに選びました」(伊藤氏)

このシステムをiPhoneに対応させるにあたっては、システムを開発したアイコムに伊藤氏が自ら出向いて開発の方法を伝授し、2週間で作り上げたという。
このe-veryStudyはケータイでも利用できるようになっており、iPhone版は6月からサービスがスタートしている。

e-veryStudyにIDとパスワードを入力してログインすると、最初の画面には「ランキング」「教科書表示」「問題集」などのメニューが表示される。
問題集に解答すると「あなたの順位は○人中○位です」というようにランキングを確認できる。
教科書表示は試験用語の書籍や教科書のコンテンツで、オーム社の教科書が数冊収められている。
これらを学生は無料で閲覧して学習できるわけだ。
教科書を読んでいて表示が小さいと思えば、iPhoneを横にしたりピンチ操作で拡大したりすれば問題なく読める。

アクセスログを解析したところ、「予想していたよりも使ってくれているという印象」だと伊藤氏。
PCやドコモ、auなどの携帯電話から利用している学生ももちろんいるが、iPhoneからも確実に利用されている。
試験が終わったあとの見直しで使われることも多いが、利用時間帯はバラバラで、アルバイトの休憩時間に利用しているような様子も見られるなど、当初の狙い通り“すきま学習”に活用されているようだ。

この取り組みは、文部科学省の「大学教育・学生支援推進事業」にも採択され、10月からは社会情報学部発のシステムが青山学院大学全体に展開されている。
また、「ITパスポート試験」を主催する情報処理推進機構(IPA)のWebサイトでも写真付きで取り上げられている。

今後はこの取り組みを他の大学や高専へ普及させ、日本全体のIT人材育成に役立てていくほか、さまざまなジャンルにも広げていきたい考えだ。
「来年度以降、社会情報学部も3年生になる学生がいるので、就職活動にもiPhoneを活用していく。学研から特別にSPI(入社試験で行われる適正検査)関連のコンテンツを提供していただき、例えば就職面接に行く直前の1時間で勉強するといった活用も出てくると思う」(伊藤氏)。
また、簿記やファイナンシャルプランナーの教材など、スマートフォンに最適化された教育関連コンテンツをコンテンツホルダーと協力してそろえ、学生が利用できるようにする予定だ。


事例2:iPhone対応ラーニングマネジメントシステムの導入
社会情報学部では、iPhone導入以前から、携帯電話を活用した授業を行っていた。
出欠の確認や教材資料の配付のほか、授業中は学生に携帯電話からアンケートに答えてもらい、リアルタイムで確認できる結果をもとに授業を展開する――といった活用法だ。
学生は授業を聞きながら普通に携帯電話を操作し、わきあいあいとした雰囲気だという。

伊藤氏はこれをさらに進め、ラーニングマネジメントシステム(LMS)をiPhoneでも利用できるようにしたいと考えたが、iPhoneに対応しているLMSが限られており、1学部だけで利用するには非常に高額で導入が難しかったという。
「オープンソースの『Moodle』というLMSもあったが、携帯電話用のプラグインはあってもiPhone用のものがない。といって、PC用のLMSをiPhoneに対応させるのは、設計指針が異なるので難しかった」(伊藤氏)

そこで白羽の矢が立ったのが、ネットマンの携帯電話を活用した授業運営システム「C-learning」だった。
ここでも伊藤氏が自ら会社に出向き、開発を提案。それが8月上旬で、9月頭にはC-learningをiPhoneに対応させ、サービスインしていたというフットワークの軽さだ。
システムについても「間違いなく、現時点で最高のスマートフォン対応のLMSです」と胸を張る。

C-learningにログインすると、「アンケート」「小テスト」「ドリル」「教材倉庫」などのメニューが並ぶ画面表示される。
「相談室」は教員へのホットラインで、ここでメッセージを書くと相手のiPhoneにすぐさま届く仕組みだ。


iPhoneをセカンドモニターとして活用
このLMSを使った授業の事例として紹介されたのが、プログラミングの基礎を学ぶ「コンピュータ実習」の授業だ。
プログラミングの高級言語を初心者が一から学ぶのは、なかなか難しく、伊藤氏の授業ではビジュアルプログラミング言語「Scratch」を使って教えている。
Scratchは原則としてキーボード操作が必要なく、マウスの操作のみでプログラミングが可能だ。
本来は小中学生向きに、プログラミングの楽しさを教え、発想力やイマジネーションを鍛えることを目的とされているものだが、伊藤氏の授業では、ロジックとアルゴリズムに特化して学習する教材として、論理的思考能力を養成するために採用している。

この授業では、iPhoneをセカンドモニターとして活用。
PCのディスプレイは学生1人に1台ずつ用意されているが、1つの画面に Scratchの操作画面と教材資料のパワーポイントなどを表示すると、複数のウインドウを切り替えながら操作することになり、プログラミングに集中できなくなる。
そこで、伊藤氏の授業では、PCのディスプレイはScratchの操作のみに利用し、教材資料はiPhoneで見ることになっている。
「iPhoneは授業資料のインプットだけ、PCはアウトプット専用。つまりiPhoneが先生です」(伊藤氏)

この方法は学生から非常に評判がいいという。
中には「やっぱり紙の資料がいい」という学生もいるが、伊藤氏がアンケートを取ったところ、学生の約6 割がiPhoneで見る方法がいい思っているという結果が出た(3割は紙資料、1割はPCがいいと回答)。
また、教員にとってもiPhoneで教材を見てもらう方が断然いいという。
「紙資料だと、印刷して配布するのも時間がかかる。また、学生から先週やった内容の質問がきた際に、『じゃあ、先週配布した資料を見て』というと、だいたい持っていない。iPhoneだったら、先週の資料もすぐ出せます」(伊藤氏)

メニューの「教材倉庫」には、授業用資料として、パワーポイントをPDF化したものが収められており、学生はいつでも見ることができる。
また、課題のヒントや解答も掲載しており、誰がいつ解答を見たかということも記録され、教師が把握できるようになっている。
「行動はチェックされているので、むやみやたらに解答を見ないようにと指導しています。ただ、分からなくて、ずっと放置状態になるのもよくないので、どうしても分からない場合は見てもいいことになっています」(伊藤氏)

iPhoneで教材を見ながらPCで作業するというシステムは、統計学の授業でも使われている。
Excelで統計処理をする場合、多くのセルを使うので画面は広ければ広いほどいい。
画面を有効活用するために、iPhoneをセカンドモニターとして使うのは好都合だ。
また、iPhoneを使ってリアルタイムアンケートをとり、集計したデータを各学生のPCに配布し、集計したばかりのデータをそのまま学生に分析させるというユニークな試みも行われている。


事例3:高校から大学の接続教育に活用
最近は入試が多様化しており、推薦入試では11月、12月くらいで合格者が決まる。
大学では、“合格が決まってから大学入学までの教育をどのような方法で行うか”という接続教育が重要視されている。

青山学院大学社会情報学部では、推薦入学者を対象に英単語学習を課している。
11月末から3月までの期間で英単語6000語を覚えるというもので、この学習システムは2008年度に伊藤氏がゼロから2日間で構築したという。
ただ、当時はドコモ端末でCookieが使えず(2009年夏モデル以降の端末から対応)、セッション管理が他の端末と異なることから、PCとドコモ以外の携帯電話にしか対応できなかった。

そこで、2009年度はPCとドコモも含めたすべての携帯電話に加え、iPhoneやAndroid端末にも対応させた。
この英単語学習システムはWebアプリとして提供するもので、英単語を見て、その意味を20数択から選択するというもの。
携帯電話で20以上の選択肢から選ぶのは操作的に厳しい部分もあるが、iPhoneならフリックとタッチで済むので簡単だ。
また、各課題に取り組む期間は厳密に決められている。選択肢の数を多くすることや期間を限定することは、英語を担当する教員の要望に沿った格好だ。

問題を解いて提出すると結果が表示され、学生は課題の習熟度を振り返ることができる。
英語の教師は学生全員のデータをiPhoneで把握でき、登録されているメールアドレスを利用して学生にアドバイスを送ることができ、伊藤氏は将来はこれを音声入力でできるようにしたいと話す。
「英語の教師が『もっとがんばれ!』と録音してメールで送り、学生がそれを聴ける、というような感じで。PCのメールだと学生がいつ見ているのか保証されないが、携帯電話を使えば現実感が高まると思います」(伊藤氏)

この取り組みでは、異分野の教員と話し合ってシステムを作り上げたことが収穫だったと伊藤氏は振り返る。
「文系学部でよくあることですが、先生方は『こんなシステムがあったらいい』といいうアイデアをたくさんお持ちなんですが、具現化する術がない」。
業者に頼むと数百万から数千万円のコストがかかるため、検討レベルで終わっていたような案件を、今回は文理のコラボレーションで具現化できたことになる。

「社会情報学部としてはシステムやアプリケーション、コンテンツを生成できる人材をできるだけ早い段階から育成したいと思っていますし、学生が具体的な成果を創出していくような土壌を醸成していきたい。僕個人としては、これが青山学院大学社会情報学部の文理融合のスタイルではないかと思っています」(伊藤氏)

教育にiPhoneを利用する取り組みについては、今後もさまざまな仕掛けを考えていると伊藤氏は意気込む。
「新しいモバイルネット社会は大学を革新しうると思っています。大学がそれによって活性化すれば、社会が活性化するはずだという考えのもとに、いろいろやっていきます」(伊藤氏)


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