【iPhone】【情報】「iPhone」1000台で働く形はこう変わった ベリングポイント、導入 | 『iPhone』オススメ情報-.JP-

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「iPhone」1000台で働く形はこう変わった ベリングポイント、導入半年

ベリングポイントが大規模導入した「iPhone 3G」
 ビジネスコンサルティング大手のベリングポイントは2008年9月、業務用端末として「iPhone 3G」1000台を一括導入した。
これだけの数を法人が採用するのは、日本では同社が初めて。
話題先行の印象もあったiPhoneだが、約半年で導入成果はどの程度出ただろうか。(大河原克行)

 現在、べリングポイント日本法人の社員1200人のうち、iPhoneを会社から支給されているのは、コンサルタントおよび経営幹部など1000人。その導入成果はひとことで言えば、「iPhoneが、働く形(ワークスタイル)を変えた」というほど目覚しかったようだ。


■通勤中にメールチェックが終了
 「通勤途中にメールのチェックが終わる。これまでは会社に着いてPCを起動させてから、メールの返事が終わるまでに30~40分かかっていた。これがなくなるだけでも時間の効率利用を図れているのがわかる」。
グローバルリアルエステート・アンド・サポートサービス北アジアパシフィック統括リーダーの杉山優子氏は、自身の体験からこう話す。
 ベリングポイントの本社が入るビルのエレベーター前。出勤時間にはiPhoneを片手に持った社員が列を作る。移動時間をメールのチェックなどに利用している証だ。
「勤務時間、移動時間を含めて、とにかく無駄な時間がなくなった」と杉山統括リーダーはその効用を説明する。
 同社の業務用端末としてのiPhoneの利用法は、いたってシンプルだ。一つは、内線番号を振られた固定電話の代わりに持ち歩いて使う音声電話端末としての役割。
もう一つは、社内のメールサーバーに接続してメールを送受信するメール端末としての役割だ。会社のPCでもiPhoneでもメールを利用できるよう、iPhone用にサーバーを追加している。

 ベリングポイントはこれまでも、音声端末やデータ通信カードの導入では、常に先行的な取り組みを行ってきた。
 旧アンダーセンビジネスコンサルティング時代の2000年には、PHSを活用した外線・内線共用電話をいち早く導入。同時にデータ通信カードを社員に配布し、64kbpsでのデータ通信環境を整えた。
 2006年には、社内のPBX(構内交換機)を廃止するとともに、携帯電話とデータ通信カードという体制に移行した。
このときから、名刺には外線や内線番号ではなく携帯電話の番号が記載されるようになったが、これもコンサルティング会社としては先進的な取り組みだった。

 それから2年が経過して携帯端末のリプレース時期に入ったことで、スマートフォンが次の候補に上がったという。iPhoneの検討は発売とほぼ同じ2008年7月頃から始まり、わずか1カ月で決まった。

 「スマートフォンに関しては、2006年にも検討を行った経緯がある。だが、当時は端末の機能や利用するインフラ環境を考えて、まだ時期尚早と判断した。iPhoneは、機能、インフラ、操作性といった点で実用範囲に達しており、業務をサポートするツールとしても有効だと判断した」と、杉山統括リーダーは説明する。

ベリングポイントはiPhoneで会社のメールをチェックできるようにしている
■短い言葉で伝えるメール文化が発生
 効果は効率的な時間活用だけにとどまらない。
 同社では、上長の承認プロセスにメールを活用している。メールに対して上長の承認あるいは否認の返事をもらえればそれで済む。だが、外出が多いコンサルタントや経営幹部にとって、PCを起動させなくてはメールが使えないという環境は、承認手続きの遅れにもつながっていた。
 iPhone導入前は、承認後の進行がスムーズにいくよう、現場があらかじめ2~3日間の余裕をみて、上長に承認を求めるメールを送信するといった配慮も行われていた。これはどこの会社でも一般的にあることだろう。
 ところが、iPhoneの導入後、移動中でもメールを確認できるようになったことで、承認までの時間が大幅に短縮したという。
 また、副次的な効果としては、PCのメールでありがちな長い文書ではなく、短い言葉でコミュニケーションを取る文化が生まれてきた。お互いにiPhoneを使っているという認識から、タイトルだけでメールの重要性を伝えるノウハウが自然に蓄積されるようになったともいう。
 これまでは「移動中だからつかまらない」という意識が当たり前だったが、「移動中だからiPhoneで確認してもらえる」というように時間の捉え方がガラっと変化したことも、大きなメリットだ。社員一人ひとりの時間の使い方が効率的になり、それが迅速な判断と業務処理につながっている。

■パケット定額は絶対条件
 コスト削減という点では、ソフトバンクモバイルがiPhone向けに用意した料金プランがうまく効いているようだ。
 データ通信は2段階の定額制「パケット定額フル」により、大量に使っても通信コストを一定範囲に抑えられる。「社内外のメールだけでなく、米国本社からプッシュ型で配信される動画コンテンツもある。米国からの配信は事前に予測できないこともあり、定額制でなければ、通信コストが想定できず、導入には踏み切れなかった」と、尼子倫久インフォメーションシステムズマネージャーは説明する。
 通話についても具体的なコスト削減額は明らかにしなかったが、「社員間の通話比率が47%に達する。これが午前1時から午後9時まで無料になることで、大幅なコスト削減を実現できている」と語る。iPhone向けの料金プランは、企業ユースにおいても威力を発揮することを示したといえよう。

■機能が限られているから逆に「安全」
 モバイル端末の業務利用ではセキュリティーの問題が重要となるが、その観点からも「iPhoneは優位である」と、同社では語る。
 iPhoneは、ExcelやPowerpointなどのデータを操作するには不十分な環境である。これらの業務文書は内容確認に使える程度で、マイクロSDなどのリムーバブルメディアにも対応しないためデータを抜き出すことも容易にできない。また、アプリケーションの追加も「App Store」からのダウンロードに限定されており、危険性があるアプリを社員が勝手にインストールすることもできない。これが、むしろセキュアな環境を実現しているというのだ。
 iPhone導入を検討した時点で、最後まで対抗馬として残ったのはNTTドコモが提供するカナダRIM製の「BlackBerry」だった。BlackBerryは欧米企業での普及が示すとおり、機能や管理面では優れた点が多い。だが、データを端末から持ち出せることで起こる危険性のほか、自らサーバーを構築する必要があること、管理者を配置しなくてはならないことなど、コスト増につながる要因もある。
 バックオフィスの人員が限定されている企業においては、これらは大きな負担だ。マイクロソフトの「Windows Mobile」搭載スマートフォンも、Windowsアプリケーションの利用が可能という利点はあるが、あらゆるソフトを入手できることは、危険性を高めることの裏返しともいえる。
 「言い方は悪いが、iPhoneの中途半端ともいえる機能が、セキュリティーの面ではプラスに働き、管理コストの削減にもつながっている」(杉山統括リーダー)というわけだ。


■「紛失ゼロ」は社員の関心が高い証拠
 ベリングポイントの場合は、ExcelやPowerpointを利用するような作業はPCの画面サイズとパフォーマンスが必要であり、iPhoneではこれらの用途は想定しない、と割り切ったことがポイントだ。コンサルタントは、PCとデータ通信カードを別途所持しており、iPhoneに機能以上の役割を求めないことが、ストレスのない利用に結びついている。
 そして、iPhone利用上のルールは単純だ。「なくさないこと」「筐体に直接デコレーションしないこと」など、いわば会社から貸与を受けている物品としては当たり前のことばかり。App Storeからゲームをダウンロードして遊んでも構わない。ダウンロードしたコンテンツの課金は個人が対象となるため、会社への請求と切り分けられるという仕組みも利用できる。
 一方で、当然のことながら、全社員が会社のクライアントPCに「iTunes」をインストールする環境ともなる。
 「iTunesは、一般的には音楽管理ツールであるとの認識が強いが、これをバックアップツール、あるいはファームウェアのバージョンアップツールという切り口で捉えれば、ユーザーにとっては、むしろ有効な管理ツールとなる」と、尼子マネージャーは語る。
 iPhoneにトラブルがあっても、ユーザー自身で迅速に対処できるのは大きなメリットだ。実際、バックオフィス部門に修理やデータ復旧のために端末が持ち込まれる例は以前に比べて激減したという。

 「iPhone導入で、社員がより活発にコミュニケーションするようになった。他のスマートフォンでは得られなかった効果ともいえる。それは、端末を受け取る手続きを進んで済ます社員が多く配布が短期間で終わったことや、紛失の届け出がこれまでゼロということからも感じる。社員が強い関心をもって、この端末を利用している」と、尼子マネージャーはみている。
 ベリングポイントでは、今後、VPNへの対応などにより社内に蓄積された重要なデータも閲覧できるような仕組みへと発展させる考えという。また自ら実証した効果を、企業のコミュニケーション改善の手法として、提案していくことも考えている。
 「いまは、まったく課題が見つからない」(杉山統括マネージャー)というiPhone導入は、まさに大きな成果を上げているようだ。

[2009年3月16日]