向かい飛車 第56期王位戦挑戦者決定戦 菅井竜也-広瀬章人 棋譜検討 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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第56期王位戦挑戦者決定戦 菅井竜也-広瀬章人

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先手:菅井竜也六段
後手:広瀬章人八段

初手から
▲7六歩 △8四歩 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七角 △5四歩
▲8八飛
(下図)

△5四歩には向かい飛車、というのが流行している。
中飛車にすると女流王座戦第1局 みたいに、
居飛車側に堅く囲われてしまうのが嫌なんだと思う。

ここで後手の主流は本譜の△3四歩
他は△6二銀や△4二玉、△3二銀など。

△6二銀は▲8六歩△同 歩▲同 角の「鈴木スペシャル」で、
先手が良いとされているけど、△7二金で大した事が無いと思う。(下図)

上図から1.▲8四歩の垂らしは、
△同 飛▲3一角成△同 角▲8四飛△9五角で無効。

かと言って、2.▲7七角△8七歩▲5八飛△3四歩や、
3.▲6八角△8七歩▲9八飛△3四歩▲7八金△5三銀は、
先手良いって感じがしていない。

先手は居玉で仕掛けている上、金銀の運動量で負けてるので、
手にならなかったら不満なんだけど、何か手段があるのかな。
自分は鈴木スペシャル指さないから別に良いんだけど。

▲8八飛以下
△3四歩 ▲2二角成 △同 銀 ▲5三角 △5七角(下図)

△3四歩は一番多い応接。
これには▲6八銀が一般的だけど、▲2二角成は欲張った手だ。

上図のように馬を作り合う形を、
名著島ノート は「やまびこ飛車」という項目で紹介している。

上図以下「やまびこ飛車」は▲5八飛△8四角成と進む(下図)

上図では▲5五歩と行きたくなるが、
△同 歩▲同 飛△5二歩と謝られると戦果が上がらない。
以下▲2六角成に△7四馬で、△8六歩と△4七馬を狙われるから。

そこで▲9六歩が本筋となる(下図)

以下▲9七角成と引き付ければ△4二玉と上がれなくなる。
先手は▲5七銀と上がってから▲4八玉とすれば良い。
これは有力だと思う。

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参考棋譜:
久保-郷田戦戸辺-佐藤(慎)戦
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ただし、▲5八飛と回っても、5筋から攻めるとは限らないし、
向かい飛車に振ったんだから、向かい飛車で使いたい。
それが本譜の手順である。

△5七角以下
▲6八銀 △8四角成 ▲9六歩(下図)

いずれにせよ、▲9六歩と突くのが急所。
9七に角を成って、△4二玉は防いでおきたい。

ただし、▲5八飛と回っていないので、
次手△7四馬が生じるのが短所だ(下図)。

単純な5六歩取りだが、
▲5七銀には△5五歩があるので受けは無い。

これを嫌うなら、▲6八銀のところで▲6八金なんだけど、
△8四角成▲9六歩△7四馬▲5七金と進んだ時に、
△6四歩でも、△6二銀▲9七角成△6四馬でも、
あまり自信の無い展開になる。

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参考棋譜:
阿久津-上野戦
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この戦形では、5六の歩を守ろうと思わない方が良いようだ。

上図以下
▲9七角成 △5六馬 ▲4八玉 △4二金 ▲7七桂 △4一玉
▲8六歩 △同 歩 ▲同 馬 △7四馬 ▲5八金左 △3二玉
▲3八玉 △3三銀 ▲8五歩
(下図)

先手は5六歩を奪われた代わりに8筋の主導権を握る。
△4二金と上がると玉が堅くならないので、
互角ながら振り飛車不満無しの分かれかな、という感じ。
昔は後手が良いと言われてたんだけどなぁ。

上図以下
△5二飛 ▲6六歩 △5五歩 ▲6五歩 △5六歩 ▲7五歩
△9二馬 ▲8四歩 △7二銀 ▲8五馬
(下図)

先手は8筋、後手は5筋を詰めあったが、
このまま組み合うと先手が得かなぁ・・・
△5六歩は払いやすいし。

上図から広瀬先生は△7四歩と動いたけど、
▲同 歩 △5四飛 ▲8六飛 △7四飛 ▲5六飛(下図)

歩損も取り返したし、ここは先手持ちたいです。
ここから美濃まで行ければ理想ですが・・・

上図以下
△7三桂 ▲7四馬 △同 馬 ▲5二歩 △5五歩 ▲同 飛
△5三歩
(下図)

△7三桂から局面を動かして、美濃は許さない、と。

▲5一歩成△同 金▲5四歩で簡単に良しかと思いきや、
△4四銀▲5三歩成△同 金・・・これは大変か。

でも▲6七金は指しにくい手だねー・・・(下図)

形は多少乱れても、△7六歩を防いで、
美濃まで行ければ最後には勝てる、と。

これからの振り飛車党は、
こういう感覚を身に着けないといけないのかなぁ。

上図以下
△5二金寄 ▲2八玉 △8六歩 ▲8三歩成 △同 馬 ▲8八歩
△6九角
(下図)

美濃に囲う一瞬を突いた反撃。
通常は▲3八銀ですが、△7六歩▲同 金△7八角成が嫌?

本譜は▲5六飛(下図)

▲5六飛は△7六歩を防いだのだと思いますが、
それにしても指しにくい。正確な読みを感じます。

△4七角成▲8六飛△7六歩▲同 飛△6五桂は嫌だけど、
▲3八銀で耐えてる・・・のかな。違うか?

本譜は△7八角成 ▲3八銀(下図)

△7八角成にはつい▲8六飛としたくなるけど、
△7六歩▲同 飛△9四馬でアウトか。

また、▲3八銀に△8八馬は今度こそ▲8六飛。

▲5六飛から、歩が取れそうで取らない応酬が面白い。

ちなみに、上図で△9四馬だと、
味の受け方が分からない。どうするんだろうね。

上図以下
△6五桂 ▲同 桂 △同 馬 ▲8六飛 △5五桂 ▲7三歩
△同 銀 ▲6六金 △9二馬 ▲5五金 △6八馬 ▲2六飛
(下図)

バランスの取れた攻防で、見応えがある。

▲7三歩 △同 銀 ▲6六金が振り飛車の華。
△6八馬には▲6五金△8六馬▲8一飛がある。

上図では「△1四歩と突くべきだったか」という深すぎる感想。
▲1五桂を消してるのは分かるけど、比較が難しく、
アマチュアなら指運というお話。

上図以下
△3五馬 ▲8六飛 △4二金 ▲4六桂 △1四歩 ▲3六歩
△2四馬 ▲2六歩 △5七銀
(下図)

お互いに第二次駒組を進めていく中、突如現れた△5七銀
どんなに努力しても、ここに銀が打てるようにはならないな・・・

仮に▲1六歩と黙ってると・・・?
うーん・・・△8五歩▲7六飛△7五歩の連打は嫌だけど、
▲5六飛と銀に当てて、そう簡単に決まらないような?
どこかで△6四銀とぶつけるような筋なのかなぁ。

△5七銀・・・狙いが分からないけど、
フワッと置いとくものなのか。うーん。

上図以下
▲6五歩 △8五歩 ▲5六飛 △4六銀成 ▲同 歩 △5四歩
▲同 金 △6五馬 ▲5五金 △5六馬 ▲同 金
(下図)

▲6五歩は馬筋を止めつつ、△6四銀の活用も抑えている。
後手は手を尽くして攻めてきたけれど、
上図を見ると「菅井先生、奇麗に捌くなぁ」。

△4四桂が嫌な手だけど、
▲3七銀打△5六桂▲8三角があるのか。
でも、桂が打てないようじゃなぁ。

上図以下
△7九飛 ▲8一飛 △7一歩 ▲8三角 △5二金上 ▲5三歩
△同金直 ▲7一飛成 △9九飛成 ▲4五桂 △5四金 ▲5五歩
△4四金 ▲3三桂成 △同 馬 ▲4五歩
(下図)

単純な横の攻め合いなら先手に分があるんでしょうね。
▲4五歩でハッキリしたか、という局面です。

そんな安堵の感情の隙を突くように、
突如現れたのが△3五桂(下図)

強者のラリーは終わらないんですよね。
しかし、よくこの苦境から打ち返します・・・

上図以下
▲4四歩 △2七香(下図)

ここで▲3七玉なら先手勝ちなんだってさ。
△4九竜と切られて普通はヒドいけど、
▲3一金から攻め合って先手に分があるみたい。

本譜は▲3九玉だけど、
△4四馬から上部に抜け出されて案外捕まらないんだね。

しかし、▲3七玉が正解って例はごく稀。
これは運が無いなー。


菅井六段挑戦を望むファンも多かったと思うけど、
広瀬八段がA級の意地を見せたという事ですか。
いずれにせよ、世代交代の波を感じますね。