原発廃炉の廃棄物、資源として再利用 浜岡で作業公開
岡田和彦
2016年11月23日15時49分
中部電力は朝日新聞の取材に応じ、浜岡原発(静岡県御前崎市)で進める1、2号機の廃炉作業の「クリアランス」の様子を初めて公開した。記者が放射線管理区域に入った。クリアランスは廃炉による解体で出る廃棄物を資源として再利用するための制度で、地中への埋め立て処分が必要な放射性廃棄物を極力減らすために欠かすことができない。
いくつもの検問を通り、専用のつなぎに着替え、線量計を胸に付けて放射線管理区域に入った。2号機タービン建屋の3階。巨大な鉄製の物体が横たわる。5号機発電用タービンのローター軸だ。重さは約150トン。その奥ではビニールハウスの中に同じような物が横たわる。案内の担当者は「測定ハウス」と呼んだ。軸は3本あった。
中部電はまず、不具合で交換した5号機低圧タービンで先行してクリアランスを進め、技術の確立を目指す。タービンは原子炉で発生させる蒸気を受けるため放射性物質に触れ、放射線を出す。表面を削って除染し、放射線量を測る作業を続けている。ハウスの中では3人の作業員が軸に測定器を当て、線量を測っていた。全体で77・2トンに及ぶタービン翼については、解体、除染、測定を終え、原子力規制委員会の確認を受けて敷地内に保管している。
建屋内の別のフロアには1、2号機で解体した装置の仮置き場が設けられ、運び込みが始まっていた。1号機のタービン建屋に移ると、作業員2人が発電機制御盤の解体・仕分け作業をしていた。電線や配管を切り刻み、専用の容器に詰めていく。
■1万8千トン活用目標
放射性廃棄物かクリアランス物かを分ける基準は放射線量が年0・01ミリシーベルト以下であること。この線量は自然界の放射線から受ける線量の100分の1以下に相当する。放射線を出す物は除染をしてきれいにし、放射線を出さない物はそのことを証明する必要がある。最終的には国の原子力規制委員会の確認を受ける。
1、2号機の廃炉は4段階で計画しており、現在は原子炉を除く周辺領域でタービンや配管などの設備を解体する第2段階。第2段階だけで2万8千トンの廃棄物が発生すると推定され、放射性廃棄物でない廃棄物6千トンを除き、1万8千トンをクリアランス物として再利用し、低レベル放射性廃棄物は4千トンにまで減らすことを目標にしている。
■受け入れ先は未定
ただ、クリアランスの目標を達成しても再利用方法や受け入れ先は決まっていない。中部電は発電所東側に新たに1万2千平方メートルの土地を仮置き場として確保した。受け入れ先が決まらなければいつまでも廃棄物が残ることになる。三沢尊久廃止措置計画課長は「クリアランスのための技術を確立し、ここまでやるのかという取り組みを徹底し、安心して受け入れてもらえるようにしたい」と話す。
電力業界では老朽原発の廃炉が相次いで決まり、大量廃炉時代が幕を開けた。浜岡原発3、4、5号機もいずれは寿命を迎え、廃炉になる。
全国に先駆けて1、2号機の廃炉作業を進める中部電の取り組みは、「浜岡モデル」として今後の廃炉の手本になる。クリアランスをどう受け入れるかは、原発の電気を使ってきた我々利用者側にも考えていく責任がある。(岡田和彦)
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〈浜岡原発〉 中部電力(名古屋市)唯一の原子力発電所。沸騰水型炉4基、改良型沸騰水型炉1基の計5基がある。1、2号機は2009年に運転を終え、廃炉作業中。核燃料は全て搬出済みで、原子炉解体撤去、建屋の解体撤去まで約30年の工期を見込む。3~5号機は東京電力福島第一原発事故を受けた政府の要請で11年5月に停止した。中部電は再稼働を目指し、約4千億円を投じて安全対策工事を進めている。