今回で、近鉄内部・八王子線の記事は4回目です。前回の内部・八王子線の記事は以下の通りです。


近鉄内部・八王子線&並行バス視察&四日市市議会「第1回総合交通政策調査特別委員会」傍聴http://ameblo.jp/shitetsuensen98/entry-11315928380.html



一昨日19日午後、以下のルートで四日市入りし、近鉄四日市駅近くの四日市アーバンホテルで1泊しました。四日市市議会「第2回総合交通政策調査特別委員会」を傍聴するためです。


十条<埼京線各停>赤羽<京浜東北線各停>東京<東海道本線普通>平塚<東海道本線快速>熱海<JR伊東線普通アルファ・リゾート21夏色キセキ仕様>来宮<JR伊東線普通>熱海<東海道本線普通>浜松<東海道本線普通>豊橋<東海道本線新快速>名古屋<関西本線区間快速>四日市・・・宿泊


翌朝、近鉄四日市駅内部・八王子線9・10番線改札口に向かいます。名古屋線・湯の山線1~6番線改札口とは別改札になっていて、両者は連絡歩道橋で結ばれています。

内部・八王子線駅舎と南バスのりばは隣接しています。


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改札口で、乗客の動きを観察します。


西日野7時52分発近鉄四日市8時01分着の列車から約80人が下車し、次々と改札を通過していきます。頻繁に自動改札を利用するようにとの放送が流れます。多くの人は守っていたのですが、それでも有人改札を通り抜ける人もかなりいます。内部・八王子線では自動改札は当駅にしかないため、無理もないのかもしれません。


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ホームに入ると、8時25分発西日野行きを約30名の乗客が待っていました。その列車となる8時13分着の列車からは約70人がホームに降り立ちました。

この列車が到着してすぐに、8時14分発内部行きが出発しました。この列車は2両編成で、乗車人員は58名です。多くが高校生でしたが、通勤客と思しき男性客も見られました。


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赤堀で3名が下車し、日永では6名が下車し3名が乗車しました。当駅で西日野発の列車との交換がありました。


内部・八王子線では、近鉄四日市と内部以外は無人駅ですので、運賃・乗車券は駅備え付けの運賃箱に入れることになっています。両替が必要な場合は、車内運転席の背後に設置されている両替機を使用することができますが、使っている場面を未だかつて見たことがありません。途中駅から乗車し、途中駅で下車する乗客もよく見かけますが、両替機は使用しませんし、駅の運賃箱に乗車券を入れない人もいます。定期券を所持しているのかもしれませんが、そのような雰囲気もない場合も多く見かけます。どうやら、不正乗車の温床になっているようです。



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近鉄から経営分離された、同じ特殊狭軌の三岐鉄道北勢線では、ほとんどの無人駅に自動改札機を設置し、運賃の取りこぼしを防いでいます(写真は北勢線七和駅。無人駅ですが自動改札が設置されています)。



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南日永では15名が下車し3名が乗車しました。泊の直前の踏み切りの手前で、列車が信号待ちのため停車しました。泊に入線する近鉄四日市行きの列車を待つためでした。しかし、踏み切り手前で電車が停車したため、踏み切り待ちの車の渋滞が発生してしまいました。踏み切りを超えた地点で停まっても、泊駅までは数百メートルの距離がありますので、ここは閉塞区間の距離を短くすることで、踏み切りを超えて電車を停車させることができるはずです。そうすれば、踏み切りもすぐに開けることができ、渋滞を回避することが可能となります。


泊で9名が下車しました。追分では25名が下車しました。全員高校生でした。当駅から200mほどの場所に海星高校があります。


小古曽では3名が下車しました。いずれも地元の高齢者ばかりでした。


そして、列車は近鉄四日市より17分で内部に着きました。当駅は近鉄四日市以外では内部・八王子線で唯一の有人駅です。構内には側線と、内部車庫があります。 


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しばらく、駅舎内の待合コーナーに座って、改札口を観察しました。折り返しとなる8時39分発近鉄四日市行きには24名が乗車していました。ホームへは段差なしで入場できますが、改札柵が立ちはだかり、ベビーカーや車いすの通り抜けはまずできません。中年の男性客が1人、内部駅待合コーナーにやって来て腰掛けましたが、列車には乗らずに、20分くらい滞在して駅の外へと消えて行きました。まさに駅は公共空間であることを実感します。



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8時39分発の列車が出発した後は、改札柵を閉鎖していました。内部駅では、列車の出発時刻に合わせて、改札を行います。


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帰りは内部駅前9時00分発近鉄四日市行きの三重交通バスに乗ることにしました。内部駅前バス停は、三重県道407号線(旧東海道)にあります。


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バスの出発時刻まで観察したところ、内部9時03分発内部線近鉄四日市には22名が乗車していました。


バスは1分遅れで内部駅前バス停にやって来ました。乗車人員はわずか8名でした。時刻表上は近鉄四日市に9時17分着で、実際に定時に近鉄四日市に着きました。国道1号は道幅も広く、渋滞もなくガラガラでした。時刻表上私が乗ったバス便は内部線より早いわけですが、鉄道が圧倒的な支持を得ているようです。地元の方の話しによると朝9~11時台は国道1号はガラガラで、バスも定時運行が確保されていますが、それ以外の時間帯は渋滞のため、バスの遅延が恒常化しているそうです。定時性では鉄道に信頼性があります。内部駅前発近鉄四日市行きバスの本数も1本/時しかなく、利便性の面で、鉄道に圧倒的な優位性があります。



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10時00分からは四日市市議会「第2回総合交通政策調査特別委員会」を傍聴しました。森智広副委員長、芳野正英市議、そしてFacebook近鉄内部・八王子線同好会開設者上野理志氏にご挨拶をさせていただきました。


今回は、さらに詳細な内部・八王子線の収支データが配布されました。


平成23年度の収支データは、以下の通りです。

(1)営業収入2.48億円(内訳:定期外1.30億円、通勤定期0.65億円、通学定期0.42億円、運輸雑収0.08億円)


(2)営業費用5.00億円(内訳:人件費3.13億円、修繕費0.26億円、経費0.97億円、諸税0.18億円、減価償却費0.46億円)

(3)営業損失2.55億円(=(1)-(2))

人件費の中には本社経費4千万円が含まれています。また、近鉄の高い給与水準で支給されているため、分社化して近鉄の給与体系から切り離すことができれば、相当額圧縮可能です。

内部・八王子線では37人の近鉄職員が配置されています。

3.13億円から本社経費4千万円を差し引くと、2.73億円。これを37人で割ると、1人当たり人件費は約738万円/年(=(3.13億円-0.4億円)÷37人)となります。


分社化して、他の鉄道会社のOBを雇用することで、1人当たり400万円/年とすれば、1.48億円(=400万円×37名)に抑制することが出来ます。


本社経費4千万とあわせ、人件費を1.65億円圧縮することが可能な計算です。


後は、運賃を1割値上げで2,500万円の増収、運賃徴収の徹底化で1,000万円の増収で、合計3,500万円の増収を図ることが可能と思われます。


また、内部・八王子線を観光路線化し、大阪や名古屋から近鉄特急利用による訪問者を増やせば、近鉄にとっても増収になります。


例えば、大阪難波-近鉄四日市3,520円(運賃+特急料金、片道)を経由して、内部・八王子線訪問した場合、3,520円が近鉄の増収額です。大阪難波からの訪問者を年5,000人獲得する場合、3,520万円(=3,520円×2×5,000人)の年間増収額と計算されます。


分社化された場合でも、近鉄と連携した往復割引乗車券+内部・八王子線1日乗車券とセットの企画乗車券を6,000円で販売する場合は、年間増収額は3,000万円(=6,000円×5,000人)と計算されます。


近鉄から一定の収入分配を受けるようにすれば、内部・八王子線にとってもメリットがあります。例えば、企画乗車券のうち2割の分配を受けることができれば、1,200円×5,000人=600万円が内部・八王子線の増収となります。


内部車庫見学会や、特殊狭軌鉄道の勉強会(北勢線とタイアップできればなお可)、構内撮影会など体験型メニューを用意すれば、集客が見込めるのではないでしょうか。また、納涼列車、ワイン列車、会食列車、婚活列車などのイベント列車も検討してほしいところです。


また、運輸雑収を増やすことも重要です。公民館や学習塾、福祉施設を誘致し、賃貸収入を獲得することや、駅でのコンビニの設置も検討していただきたいと思います。


以上の施策で、営業赤字は4千9百万円にまで圧縮できる計算になります。上記の運輸雑収が実現すれば、さらに赤字額を圧縮することも可能となるでしょう。


さらに、車両を自治体が購入し、内部・八王子線に無償で貸し付けたり、固定資産税を減免したりできれば、6,500万円の費用圧縮となり、1,600万円の営業黒字に転換します。


また、通勤定期の旅客を増やすことも必要です。内部・八王子線の定期券発売番号を対象に「宝くじ」を年2回実施してみるのも面白いでしょう。


例えば、1等100万円×1本、2等10万円×5本、3等1万円×10本、4等1,000円×100本、5等近鉄百貨店商品券500円×600本、とすれば、年間予算は400万円となります。


内部・八王子線の営業収入は1乗車当たり約70円ですので、400万円を回収するには、年間57,000人、1日当たり約160人弱増やせば元が取れる計算です。


定期券を買うだけで、100万円が当たる可能性があるのであれば、車から内部・八王子線に通勤手段を変えようと思う人はきっと多いと思います。こうした施策で、まずは乗車人員年3~5%アップを目指してみてはどうでしょうか。


もちろん、これらは単なる私案に過ぎませんが、検討に値するものと考えています。


2回特別委員会では主に以下の点が明らかとなりました。


・近鉄は、内部・八王子線の分社化と車両補助を希望し、四日市市に運営費補助を要求している。


・特殊狭軌から標準軌への改軌費用は総額500億円以上(内訳:内部・八王子線全線改軌費用および近鉄四日市-赤堀間高架化費用300億円、赤堀-内部・西日野間高架化費用200億円)。赤堀-内部・西日野間高架化費用は、改軌が大規模改良に該当し、国において、道路との平面交差が認められないと想定されることから、結局は内部・八王子線全線の高架化が必要となるための計上。

改軌案は全く不可能であることが鮮明になったのではないでしょうか。被災路線の復旧のためであるなら500億円の投資も正当化されますが、単なる改良事業に500億円もの追加投資などありえません。


次回は、8月30日(木)10時より開催されます。