映画「エリジウム」 | 空想俳人日記

映画「エリジウム」

 上映終了間際に「エリジウム」を観ました。ほんとは、予告を劇場で観た時から
「絶対観るぞ~」と叫んでいた作品です。
 でも、ギリギリになって観たのは、こいつよりも観たい映画が先へ先へ私を唆したのであります。けど、観ておかんといかんだろ、それがギリの鑑賞となりました。

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 実は、この作品の監督の前作は観ておりませんが、この作品の前に、格差社会の成れの果ての映画を、今年観ております。映画通ならご存知でしょうが、それを私も観ておるので、なんとなく、こいつは無理なら仕方なかろう、そんな気持ちもあったやも知れません。
 それでも、ギリになってもあえて観たのは、格差社会の富裕層を牛耳ろうとする(現実社会の誰かに置き換えたくなりますが)役柄であるジョディ・フォスターが出てるからにほかなりません。私は、彼女が子役の時から知っております。

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 はい、ジョディ・フォスターと言えば、「ダウンタウン物語」、ご存知ですか。確か十代前半の癖して色気むんむんの役タルーラを演じてましたねえ。それを観た時に、「そんなに可愛くないじゃん」とは思っちゃいましたけど、色気は凄かったなあ。
 そして、それよりも、同じ頃の「タクシードライバー」でんがなあ。ほれ、ロバート・デニーロの出世作。これで、彼女が少女の癖して危ない大人の間で。ま、私は、その映画では、彼女なんかよりも、シビル・シェパードが大好物でしたけどね。
 いや、そんな彼女が、ジョディですよ。その後、めきめきと、すごい役者になられた。なんだっけ、あのSF映画「コンタクト」だっけ、凄かったですねえ。
 そういうことで、この「エリジウム」も、そうかいな。と、思いきや。
 あっ、そういえば、この映画の入場券買う時に、「イリジウムだっけ」とか、「イロジウムだっけ」とか、題名、ええかげんでした。なんて言ったか覚えてませんが。けど、酸・アルカリに強く、金や白金すら溶かす王水にも常温では溶けない「最強の金属」、それがイリジウムって、ほんまですか。
 でね、「最強の金属」みたいな彼女ジョディの役、富裕層を牛耳る側で地球の貧民をゴミのように扱うのですが、主人公のマット・デイモンが地球から富裕層の楽園に行く際に、絶対に、この二人がひと悶着、そう思っておりました。
 ところが、二人の主人公は一度も出会っておりません。なんじゃ、これ。劇作家なら、みんなが喜びそうなメインのキャスト、絶対に絡ませるでしょう。それが、ないです。なんせ、ジョディは、富裕層の社会でクーデターじゃないですが、そんな煽りを受けて、ラストまで生きていません(もういいよね、喋っても)。あらま、あっけない。
 これを、なんで、この役に、ジョディ・フォスターを使った!ばかやろう、という人も多いみたいですが、いやあ、これ、あえてしやがったかな、そうも思うんです。
 だいたい、そんなジョディの扱い方、ちょっと悪い奴から改心もなしで、ずっと悪い奴でありんす。逆に、マットは、なんで最後、自分の命まで投げ打って、自分の脳みその中のプログラムを地球の貧民たちのために、というかっこよすぎ。でも、後頭部にデータダウンロードのため直接釘打つことを「よし」としやがった度胸。釘じゃねえか、ボルトか。あれは、痛いから私は絶対やらねえ。そんなとこにボルトもUSBも刺されたくないし。

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 ええい、これ、勧善懲悪の縮図じゃねえかいな。いや、きっと、こうしたいのは、この映画がSF、未来の話になっておるのですが、明らかに未来じゃなく、今のアメリカなんですよ。
 そして、これを観られた日本人の方も、「なんだ、これ、日本もすぐにこうなる話じゃないか」と分かっちゃいますよね。アメリカの今、というのは、ここで描かれている医療の問題がそうですよ。
 じゃあ、日本は。まだ医療では国民全員が健康保険制度を利用できてると思うのですけど。実は、これ、破綻しているのを肩代わりに介護保険制度、国が作ったんですね。ところが介護保険制度も、もうやばい。制度そのものは素晴らしいのだけど、国の法律作る人たち、私たち以上に目先しか見えてないので、たぶん、あかんでしょ。
 それに、その前に某首相がアバババミクスかなんか知りませんが、一部のインフラ貴族たちを潤す政策をしてらっしゃるので、私たち庶民にインフラなので申し訳ありません、みたいな、しゃあないだろう迷惑をかけながら、より格差社会を助長しておられます。残念ながら、国民が選択した人々によって、加速度的に、この映画の世界は日本にもまもなくやってきます。

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 ほら、この映画、SFの形をとった現代社会の暴露映画でしょ。ゆえに、ジョディは、アメリカの某前大統領夫人かもしれないし、日本の某政党の女性議員かも。だから、彼女の役は、割り切って、最後まで、ああいうふうに悪党面で終わったのかもしれません。それを引き受けたジョディ、潔いですね。
 そんな観方をすれば、この映画、示唆的で面白いですよ。アメリカでは共和党と民主党、どっちだってエリジウム、とかね。日本? 政権争いがエリジウムのクーデターと同じ、とかね。そんな中での富裕層の最たる人間として、今回の役を演じてやろう、そうジョディは決意したのではないでしょうか。
 ね、そう思うと、この映画、まんざら悪くないですよ。いやいや、下らない格闘シーンに富裕層の連中自身がいない、富裕層に雇われた人間が平民代表と争うあたり、リアリズムじゃないですか。

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 私らも、そろそろ気づいていいんじゃないでしょうか。自由な社会と思いながらも、大きな広い空を仰いで夢見る、その目前に網が張り巡らされてて、そこを突き抜けることは出来ない、そんな環境を。すこしでも、「ああしたい、こうしたい」、そんな話に「それはできない。難しい」という人たちが、どんどん目の前に増えていることを。富裕層は、私たちの自由謳歌が困るんですよ。おとなしくしてて欲しい、とね。設計図の「まちづくり」なんとかなんて、市民に口出しされたくないんですよ。ただ、労力は使役ですね、使って欲しいとね。協働なんていう、うまい言葉を使って。そういう企みに、そろそろ私たち平民も気づきましょうね。この「エリジウム」で。

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