いにしえのたまり醸造の香りが素朴な味わいで蘇る | 空想俳人日記

いにしえのたまり醸造の香りが素朴な味わいで蘇る

 完全予約制。それほど多くのお客さんは入れない。回転数も昼と夜どちらも1回転。これは利益を追求する店じゃないよね。でも、生活していくくらいは儲けてほしいし。

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 外から眺めればお店の風采は一切ない。かつては、たまり醸造をしてたというが、廃屋と化しても不思議はない建屋。

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 しかし、庭から小さなお店の表示がある入り口を入ると、まるで時を遡るように私たちが日々追われる空気とは違う和みが。

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 なんか、いろいろな想いが渦巻きながら、食事の時間はゆったりと流れた。食べている合間にも、ときどき、ギャラリーでやさしい芸術に触れたり、奥の図書室で面白そうな書物を手にしたり。お行儀とかお作法は関係ない。楽しく食事の時間が流れていく。

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 食事そのものは素材を生かしたものばかり。地産池消が原点。三河の天然魚介と地元で育った野菜を料理。そのときの旬を料理なさるから、メニュー内容は、その都度違う。肉料理は一切出ない。お魚がメインである。

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 この日も、はじめのメニューの説明に配られたシートを見れば、前菜には、ヒラメ、コダイ、マダコ。お野菜もサラダにはシソが使われたり、ズッキーニのピクルス。ホウレンソウはキッシュにして。

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 最初に冷製スープが出てきたのだが、えっ、これがニンジンなの。色といい、ニンジン独特の臭みというか、それもない。どんなニンジンなのだろう。

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 味付けも素材をできる限り生かすもの。ヒラメの刺身はショウガと白たまり、そして太白胡麻油(うちの息子が勤め先を明かし、お店の方から「お世話になってます」と言われたり)だ。
 気さくなお店の方と気さくな料理だが、拘りは、マダコに使う塩もマルドンだったり、細かなところへの心遣いにイキ遣い。

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 メインは、コイチという魚のポワレ。私はこの魚を知らない。しかし、美味しい、風味もいい。皮が厚めなのに、それがパリパリと香ばしくて、舌が踊る。

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 出てくる品は、メニューに書かれているものだけじゃない。はじめに、素材が生きた(でんぷんまみれではない)おせんべい。娘が「さかなそのもの」と言っていた。

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 途中で出てきた焼きトウモロコシは、最高だ。醤油であえて一面を焦がしてある。焦げた味わいに、なんでこんなに甘いのだろうというトウモロコシそのものの素材の味。今、裏の畑でもいできたばかり、みたいだ。

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「試作なので」と、出されているパンをラスクにしたもの。

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 このパン自体が焼かれている時からいい匂いがして、むちむちむっちりで、バターによく合う。あっ、このパン、途中で追加してくれて、余った分は「お持ち帰りどうぞ」と紙袋までくれた。

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 デザートは、スイカのシャーベットとプリン。そして、コーヒー。コーヒーは何杯でもお代わりできるくらいポットにいっぱい。

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 最後には、「えっ」、ケーキが登場。かみさんの両親もいっしょだったが、父親の方が退院したお祝いで、ここを予約。予約の際に聞かれたみたいだ。そのことをお店の方が気を配ってくれてのサービスだった。そのケーキに使われているフルーツが洋風のフルーツじゃなく、枇杷。きっと、これも地元で採れたのだろう。

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 これまで予約してのお店、そんなに何軒も行っているわけじゃないけど、ここ、たまりや料理店、こんなに肩ひじ張らずに、時間も気にせずに、ゆったりと、素材の素朴な味わいを楽しみながら憩える空間で食事できる店、なかった。
 ありがとう、美味しい時間、幸せなひと時を。すると、お店のシェフが言うだろう。いえいえ、一番幸せなのは私です、と。

たまりや料理店
たまりや料理店 by (C)shisyun

たまりや料理店 (西洋各国料理(その他) / 福地駅
昼総合点★★★★ 4.5




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