ご主人が人を好きにさせてくれる店だよ

　どんな店かな、と、ずっと気になっていながら一度も利用したことがなかった、お隣の「酔心」さんと同じ感慨のお店、「つぐみ」さんは、お客さんの大いなる笑い声と、カウンターのみの席がラッシュで、ちょいと気後れしたんだ。



　でもね、２軒目で、こちらが少々ほろ酔いで、お店は、ちょいと空き状態の絶妙なマッチング。飛び込んだのよ。
　２軒目だから、こちらも、とりあえずのビールはいらない。目の前には、半田郷や国盛の瓶が。いいねえ。



「何にします」と言われ、いろいろなメニューの中から、
「生牡蠣、食べない」と相方が。
「生牡蠣かあ。いいかなあ」と、つい洩らした私。
「あのねえ、週に２回、自分で名駅の市場に仕入れに行ってるから、間違いないよ」と、オヤジさんが、私の口ぶりを否定する。そうじゃないんだ。言わなかったけれど、昔若かりし頃に、新年会で牡蠣専門店で頂いた生牡蠣に当たって、新年早々仕事を二三日休んだ経験がある。そんなトラウマ。
「へええ、そうなんだ。わざわざ、柳橋まで行ってるんだ」
「そうだよ。下行くよりも、あそこのがいいもん手に入るから」下とは、知多半島の南先端のこと。そうだよね。東京の築地も、一番いいもんが地元よりも入るもんね。
　ごめんね、悪気があったんじゃなくて、昔のトラウマ。実際、おいしかったよ、生牡蠣。でね、何故か、３個だった。相方と一個ずつ食べたけど、残り一つ。



「食べていいよ」
「いや、それは、あかん」
「じゃあ、じゃんけんしよ」
「じゃんけんしなくてもいいよ」どうせ、じゃんけん弱いし。
「じゃんけん！！！」おいおい。
　で、結局、じゃんけんしたんだけれど、やはり、負けた。
　この店、おやじさんと、多分奥さんだと思うんだけど（違うかもしれないけれど）、二人でこなしてられる。いい関係。いいなあ、お客さんに食べていただく品を大事にされているし。こういう店って、いいね。
　この店、いっしょに行く人、みんな愛すべき人になっちゃう。大袈裟じゃないんだけれど、きっと、来てくれたお客さんに満足してもらいたい気持ちがいっぱいなんだろうね。おやじさんとその伴侶に応えるように、私も相方と、とってもステキな時間が過ごせますように、と僅かなひと時を過ごしたよ。ほんとは、ずっと続くといいな、思ったんだけれど。



　ほんと、いい店だね、楽しい場所だね、つぐみ。また、行きたいな。ね。でしょ。


つぐみ by (C)shisyun

つぐみ （焼き鳥 / 知多半田駅、半田駅、住吉町駅）
夜総合点★★★★☆ 4.5