ペネロピ | 空想俳人日記

ペネロピ

映画/「『かわいいブタの鼻にして』って監督にお願いしたわ」クリスティーナ・リッチ来日 - cinemacafe.ne このエントリーを含むBuzzurlこのエントリーを含むBuzzurl


花隠し まぶたに込もる 情感かな



 ブタっ鼻のクリスティーナ・リッチがいい。彼女演じるペネロピがオンモに出してもらえずに過ごす、おもちゃ箱のようなお部屋がいい。ショックを受けた母ジェシカ(キャサリン・オハラ)が、世間の好奇の目を遠ざけたい一心で、ペネロピを死んだことにしてしまったからなんでしょうね。
 何の因果か、ウィルハーン家に古くから言い伝えられてきた恐ろしい呪いが、なんと5代も経て現実となりて彼女に降りかかってしまったのですね。何故彼女に。いかんせん、その呪い、女児誕生に起こると言う。彼女が生まれるまで男のばかりだったのですね。さらに、彼女の直前に、その家系、女の子も生まれたのに、ブタっ鼻にならなかった。というのも、奥様のお相手が家系である旦那様じゃなかったとな。なあんて、寓話仕立ての中に、ちょいとコジャレたコメディというか、ユーモアも。あな、イギリスの香りかな。
 18歳になった彼女、真実の愛が呪いを解く、ってなことで、お見合いをさせられます。でも、次々と現われる求婚者たちは、ペネロピの顔を見た途端、逃げ出してしまう始末。
 さあ、そんなウィルハーン家が必死に守ってきた秘密がついに破られるときがきます。ピーター・ディンクレイジ演じる記者のレモンがスクープ写真を狙って、名家の落ちぶれた青年マックス(ジェームズ・マカヴォイ)をペネロピのもとに送り込むのですね。
 マックスとの顔を介せずの会話がいいですね。ペネロピの顔が生き生きしています。チェスをするシーン。キングはクイーンが獲られたら負け? 
 でも、マックスの態度を「同じ穴のムジナ」と勘違いするペネロピ。ああ、あんなに夢中だったのに、心痛めた挙句、意を決して家を出ますねえ。歩き始めたミーちゃんではないですが、初めてのオンモの世界。きらきら輝いていますね。現実の世界をこんなにファンタスティックに描くなんて。
 御伽の世界とは違う現実の醜さに辟易する私たち。現実から逃げて空想なる御伽の世界に入り込みたがる私たち。なのに、こんなに現実のオンモを美しく輝くものに描くとは。彼女にとっては、この現実世界がアリス・イン・ワンダーランド。マフラーで鼻から下を隠すペネロピの表情、好奇に満ちた眼差し。この眼差しだけのクリスティナ・リッチがとても可愛い。それは、この私が、いつのまにか素直な心を何処かへ置き忘れてきてしまって、現実をネガティヴにしか見られなくなったからに他ならないのでしょうね。ああ、目頭が熱くなってしまいました。
 そんなオンモの世界で、この映画をプロデュースもしているリース・ウィザースプーンがアニーという役柄で登場、彼女の脇を固めますね。いいですね、この関係。製作したかった気持ち、うんとうんと、伝わってきますよ。
 さて、結局、呪いが解けるのは、他者から真実の愛を得ることではなく、自分自身の心の問題であった、とまあ、常套句なるテーマが導き出されるわけでもありますが、そんな常套句であっても、この映画、ちっとも陳腐なものにもチープなものにもならない。それは、この映画が映画としての存在価値を持っているからではないでしょうか。
 はたして、その存在価値とは? それは観てからのお楽しみです。ちなみに、ペネロピの逃亡をいつも食い止めようとする、スニーカーを履いたウィルハーン家の執事も要注意ですよ。




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