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「ごめんなさい。ちょっとお話し聞かせて貰えるかな?」

コンビニの前で、はしゃいでいる若者達に声を掛けた。

「な~にィ?オバサン」

香澄はいきなりオバサン呼ばわりされて面食らったが、この子達から見れば、香澄はオバサンに分類される年齢なのだろう、と納得して苦笑しながら質問を続けた。

「向こうにあるあのマンションなんだけど、何か変わった噂とか聞いた事ないかしら?」

若者達の顔色が一瞬にして変わるのがわかった。

「オバサン、何でそんな事聞きたいの?」

香澄はあらかじめ考えていた口実を口にした。

「あ、それはね、今度地元のタウン誌を作ろうと思ってるんだけど、最初の目玉企画に噂話の真相って云うのをやろうと思ってるの。
それでちょっと怖い噂話を聞いたもんだから、本当の所はどうなのかなぁと思ってね。」

「本当の所はって…ねぇ…。」

若者達は顔を見合わせて誰かが話すのを待っていた。
自分が話すのを嫌がっていたのだ。

香澄は驚いた。今まで何度となくこういう質問を若者達にしていたが、今まではみな我先にと話し始めていたのだ。

「お願い、教えて貰えない?少しだけならお礼も出せるから…どう?」

リーダー格らしき男の子がやっと口を開いた。

「まあ、噂だけどさ…。あの墓場マンションはさ…。」

墓場マンション…まあよくある例えかもしれないが、香澄は流石にいい気持ちはしなかった。

「とにかく、なんかがいるらしくって…
端っこから順に人がいなくなって…いなくなった部屋は全部なんかの住み家になってるらしいぜ。…なぁ、そうだろ?」

「うん、私も聞いた事ある。空いてる部屋の壁は黒い染みがいっぱいだって。」

「私も聞いた!住んでる人、寄ってたかって恐い目に合わせるらしいよ~。」

香澄は驚いた。寄ってたかって…って!

「そ、その何かってたくさんいるの!」

「だって…ねぇ。裏から来てるんでしょう…あれ…」

「えっ!アナタ見た事あるの?」

「 いや、みんな見た事はないと思うよ。でも、ここら辺の奴はみんな一度は墓場マンションのそば、夜通った時に追い掛けられた事あんじゃねえかな。」

リーダー格の子の吐き捨てた言葉が、香澄に昨夜の恐怖を思い出させた。

「恐い目って、どんな事されるのかしら?」

誰もが目を伏せてしまった。

「もう無理!他の人に聞いて!」

一体何をされるのか!
香澄は震えが止まらなくなった。


つづく