ラッセンについて考え始めた。 | 美術作家 白濱雅也の関心事 

美術作家 白濱雅也の関心事 

制作、展覧会、音楽、写真、城などなど
A matter of Shirahama Masaya's concern

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円空で通俗表現について考えてる所に、こんなことがあった。
過日、私が教えている専門学校で学生の雑談が聞こえて来た。
(ニュアンスは記憶頼りですが実話です)


知り合いでさラッセンの作品買ったっていうのがいてさ。それが、なんかいいんだよね。
ふーん、その人、絵なんか買っちゃうんだ…
それがさ、なんかいいんだよ。…こういうの。(スマホで見せる)
うお、すげー。これ描いたの?天才じゃんこの人。
だろ?ラッセンて言うの。
俺はさ、絵買うとかいうから、あのよくあるわけわかんないやつかと思ったのよ。
そうそう、俺もピカソのなんつったけ、ゲルニカだっけ、ああいう子供が描いたようなのだろ。
そうそう!ラッセンの方が天才だよな。


以前は新入生にアンケートをとっていて、好きなアーティストや芸術家を聞くと、ほとんどはタレントや漫画家なのだが、毎年一人くらいラッセンが入っていたのである。
しばらくぶりにその事を思い出したのだ。
ラッセンはピカソよりすごいと思わせる力を持っている。
市場的価値はないとはいえ十数万の金額を出させる。(ほとんどの購入物は市場価値は低い)
この事は冷静に考えるとすごい事ではないか?
ラーメンを一流レストランよりうまいと思わせてるわけだ。
もちろん騙されたと思っている人もいるだろうが、それに納得している人も多いだろう。

単に売り絵だからね、とか
インテリアアートだからね、とか
ではなくて、もう少し掘り下げてみたい気がした。
なんでラッセンが美術館にないのか、美術市場で評価されないのか、と言うのを
素人さんにも納得させるように説明するのは意外と難しくないですか?

そういえば、先日Cashiでラッセンを巡る表現をテーマにした展覧会やっていた。見とけば良かったかな。

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こうした売り絵作家で著名な人といえばヒロヤマガタ、トーマスマックナイトなどがいる。
ヒロヤマガタの初期の版画はそんなにきらいではない。トーマスマックナイトも色使いがいいなと思わせる。
この両者、弟がとても好きであったし、実家のリビングには父がヒロヤマガタの大きなポスターを飾っていた。それを「こんなのよくないよ、だめだめ」といって説得できるだろうか?

ヒロヤマガタ
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トーマスマックナイト


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こうして並べてみると、それぞれに違いもありますが共通点がある。

風景画、情景画で空の入る事が多い
太陽、月、星、窓など強めの照明効果
基本的には自然描写的で主観的なデフォルメは少ない
自然と人工が適度に調和
筆跡のような筆致が見えない
高彩度でカラフル 
青と白が多用される
滑らかなグラデーション
要素が多く賑やか
細部まで緻密な描写
添景として人や動物
穏やかで平和的

万人が好む絵の調査の結果もあるらしく
「海や川などの水辺のある里山的でのどかな田園風景」
が好まれると言う。

三人には、この要素が少なからず入っている。

少し前に言われた売れる絵の3Kというのがあって(うろ覚えだけど)
きれい、細かい、カラフル
だったと思う。今ならこれに 「かわいい」が入るかもしれない。

「売れそうだよね」
美術の世界で良く聞く言葉である。
なにげなくではなく、もう少し分析してみたい。

論理的に結論でるかな?のんびり待って下さい。
ちょっと心もとない。

(ヒロヤマガタさんについては個人的に知っている事もあるのですがそれはまた別の機会に)