今回は、オムニバスアルバムで、HIGH STYLE PARADOX 1をレビューします。

現在はバンド活動から身を引いた状態であるKISAKIが社長として率いていたUNDER CODE PRODUCTIONから2003年にリリースされたオムニバスアルバムである本作は、代表格であったヴィドールや12012を始め、Schwardix Marvally、マカロニ、HISKAREA、マーディレイラ、カレン、KISAKI PROJECTといった当時のUNDER CODE PRODUCTIONに所属していた計8バンドを収録しています。

 

V.A./HIGH STYLE PARADOX 1

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3,024円
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1, 月ノ樹海ノカレンダー/ヴィドール

現在は、GOTCHAROCKAとして活動するVo.のジュイ、GLK MUSICの代表を務めているBa.のラメ、†яi¢кとして活動するドラマーのテロが在籍していたUNDER CODEの代表格とも言えるバンドであったヴィドールです。

幻想的な白さと、どこか暗さを感じさせるメロディアスなバラード。

透明感のあるアルペジオが響き、爽やかなようで少し黒い部分もあるようなところが当時のヴィドールらしく、サビになるとジュイらしい白く甘いメロディアスな歌を存分に聴かせてくれます。1年を通して想いが変化し離れていく恋人同士の様子を描いた歌詞は四月から次の年の四月へと順番に数えるようになっていて読んでいて面白い。

 

ちなみに、この曲は後にも先にもヴィドールの作品としては未収録となっているので、本作でしか聴けないという。

 

2, metamorphose/Schwardix Marvally

現在、VersaillesやJupiterとして活動するギタリストのHIZAKIが在籍していたバンドで、ヴォーカルは元Madeth gray'llの翡翠となっています。

クワイアとパイプオルガンなシンセが入るイントロからカッコいいシンフォニック・メタル。走ったり、スローになったりするプログレッシブな展開ながらギター・ソロも歌も熱く、サビは耽美に疾走しつつ、翡翠のファルセットが効いた後半まで二段階になっているのが秀逸。バンドの方向性もそうですが、KISAKIの傘下としても同期が強くても、ここまで、バンドサウンドが埋もれずに、しっかりしているのは歴代でも珍しいと思います。後に、HIZAKI自身がソロでインストとして再録しています。

 

3, 明日の光/マカロニ

後に秘密結社コドモAやキボウ屋本舗として活動していくVo.のエイジが在籍していたバンドです。

華やかなシンセと男性コーラスが効いたレトロな歌謡曲ナンバー。

パッと聴きミサのバンドかと思うくらいに哀愁歌謡とクラシカルな要素が強く、バンドサウンドもしっかりしているし、サビで爽やかに走り出していくのもカッコいいです。今、聴くと、ここからピコピコした路線へ転向していくことを考えると人に歴史ありといった面白さを感じられます。

 

4, 少年とオーケストラ/12012

現在は活動休止中で、Moreとして活動するBa.の塩谷朋之、ZERO MIND INFINITYのGt.の酒井洋明が在籍していました。

ダークでレトロな雰囲気を持ったミドル・テンポのシャッフル・ナンバー。

最初こそ静かというか大人しめなんだけど、途中で激しくなってバンドサウンドが強くなり重くなっていくのがドラマティックで面白いし、それと同時に歌もはっきりとしていくし、初期12012ならではの試みみたいなのを感じられて、今、聴いても新鮮です。

 

5, 1/3の失情/HISKAREA

現在は、chariotsとして、後にPhanstasmagoriaとして活動していくVo.の戮が在籍し、Phantasmagoriaとしては二代目のドラマーとなる纏も在籍していたバンドです。

ダークでメロディアスなアップテンポ・ナンバー。典型的なV系らしい楽曲で、ラルクを彷彿とさせるスッタカートにキメるリズムとポップな歌が印象的で、今と少し違う戮の歌い方も若さを感じられると同時に、上手いほうでないとはいえ、メロディの付け方が良いなあと思いう次第。

 

6, 夕刻の懺悔(past version) / マーディレイラ

現在は、GOTCHAROCKAのギタリストであるJUNがPhatsmagoriaの前に在籍していたバンドで、Phantsmagoriaとしては伊織も在籍してました。

ドラムと歌から始まる分かりやすい展開のミドル・ナンバーで、これもまた典型的なV系らしいメロディアスな歌モノでダークな感じがあるんだけど、PIERROTの鬼と桜を彷彿とさせるような部分があるあたり、当時のJUNらしい若さみたいなのを感じますね。そうした中でもJUNと伊織ならではのツイン・ギターなアレンジもあったりするのが聴いていて面白い。

 

7, vector/カレン

地下線のバンドとしては結構、長く活動していたカレンです。

後に176BIZやthe Riotts.として活動していく雪希、RoNo☆Croのメロことエリザ、ダリの旬奈が在籍していましたね。

パンキッシュなギターが効いたアップテンポのロック・ナンバー。爽やかさとほの暗さを併せ持った不思議な感じのメロディラインと随所に入るキメ方が面白く、後半にかけて透明感とか爽快感を増していくのが地下線バンドとしては新鮮な感じがしました。

 

8, 哀愁~unrequited love~/KISAKI PROJECT

地下線の社長であったKISAKIとヴィドールのジュイによるプロジェクトです。

KISAKIらしくジュイの歌声を活かすかのようにサビで壮大になるスロー・バラード。どことなく哀愁歌謡のような切ない部分があるあたりタイトルどおりといったところでしょうか。ちょっとシンセが主張しすぎなところがあるけれど、歌メロは好きなほうですね。

 

総評:86点

 

全体を通して、オムニバスながらKISAKIが代表を務めていた地下線らしく所属バンドのどれもがコテコテのヴィジュアル系らしいサウンドをしていた頃だった為、どう切ってもヴィジュアル系らしさを感じられる作品になっていて、コテコテのヴィジュアル系らしい王道を好む人にオススメしたい1枚です。

 

よく聴くとマカロニみたいに面白さもあるバンドがいたりするんだけど、基本的には典型的なヴィジュアル系らしさ全開なので好きな人は、とことん好きでしょうし、今、聴くとバンドこそ活動していなくともメンバー単体では現在でも活動している人が多かったりでバンドマン個々の歴史を知る意味で聴いても面白いと思います。

 

何気に、ヴィドールの月ノ樹海ノカレンダーは本作でしか聴けなかったりするし、ヴィドールの曲、ジュイの歌声が好きな人は、この曲の為に手にしても損は無いと思うので気になった人は今からでも是非。

 

オススメ曲・・・月ノ樹海ノカレンダー、metamorphose、明日の光、少年とオーケストラ、1/3の失情、哀愁~unrequited love~