今回は、DISHの春と決別と咲乱をレビューします。
渋谷ヒロフミと根本コウヘイによるDISHにとって、1stフルアルバムとなる本作は、既存曲8曲に新曲3曲を含んだ全11曲入りとなっており、コンセプトありのベスト盤とも言える内容になっています。

DISH/春と決別と咲乱

$蟻屑と雨空~亜眼江葉営業所~


1, May
ノイズ混じりに同じ台詞を繰り返しているのが印象的なSE。

2, 箱船
爽やかな轟音ギターが効いたロック・バラード。
オルタナっぽく坦々とした気だるさがあるんだけど、サビはDISHらしいメロディで歌を聴かせてくれる。歌詞は苦悩に満ちた少年が楽園を探しに行くという内容なんだけど、後の物語の流れで言えば、楽園を見に行くとは、つまり、死の世界へ行こうということを表しているんでしょうね。

3, DISCO BEAT EMOTION
ノイズから始まるダンサブルでミディアム・テンポの切なロック。
シューゲイザー風のクリアなギターが効いた壮大なサウンドがカッコ良く、シビィの泣くように歌うヴォーカルが儚げな切なさを出しています。歌詞は、亡くなった少女が少年に対する想いを歌っている感じですね。

4, バニラ
爽やかで切ないポップでアップテンポのギター・ロック。
出だしから爽やかでタイトルを連呼するサビのキャッチーさといい、DISHにしては珍しく分かりやすい楽曲なんだけど、そこは渋谷さんのヴォーカルだけに叫ぶように掠れ声で歌い上げることで何とも言えない切なさを出していて、新しいんだけど、これぞ、DISHという感じですね。歌詞は、少女を埋めて別れを告げる少年の想いを描いています。

5, SNOW EMOTION
さらに爽やかになってダンサブルなテンポでノリの良いギター・ロック。
普通なら同期を使用して華やかにしそうなところを3ピースサウンドでストレートに勝負しているのがDISHですね。これもタイトルをサビで言っているんだけど、ドロドロしく粘り気のあるシャウトをしている渋谷さんの歌声がそう簡単に聴き易さを出していないのが良い。歌詞は、少女の喪失から自身の存在価値を問う少年の虚しさを描いた感じですね。

6, 49
轟音のギターが響く壮大でロックなスロー・バラード。
神経質に切なさを感じさせる雰囲気と泣きのメロディが効いた歌が印象的で、どこか青臭い懐かしさもあるところは少年の心境を表しているといったところでしょうか。

7, サミダレイン
叙情的で感情的な歌が響く疾走感のあるギター・ロック。
雨が降り注ぐ中で痛みを訴えるように泣き叫んでいるような歌声を聴かせてくれる渋谷さんのヴォーカルがカッコいいです。歌詞は何かに飼われているような中で感じる人間であることってところか。

8, LIVINGDEAD GIRLFRIEND
ライブの定番曲となっている轟音ギターが効いた疾走系のギター・ロック。
パッと聴き爽やかに感じる楽曲ながら、荒々しく叫ぶ渋谷さんの歌声や死体に恋している歌詞はそれを一気に覆してくれます。ライブの定番曲となっているのもあり、音質と共に演奏もクリアになり、渋谷さんが限りなく理想に近い楽曲」との言っていただけに、これぞDISHと言える代表曲と言える出来栄えになっているところに成長を感じました。

9, ドレスフラワー
哀愁メロディ全開の壮大な疾走系の轟音ロックです。
出だしからダウナーな感じなんだけど、テンポがあるのでメロディも覚え易くて面白いです。そして、歌詞は喪失した愛しい人を想い、流れていく時間や世界の情景の虚しさを描いています。

10, ナミダレイン
轟音ギターが響く壮大なロック・バラード。
気だるい雰囲気の中で響く歌を聴かせてくれる渋谷さんのヴォーカルがカッコいい。歌詞は、雨が降る中で失った君への想いに疲れてしまった少年が確かな光を見つけて生き抜こうとする意志を描いています。

11, メロウイエロウ
春の暖かさと物語の終わりを意識した感じが凄く伝わるミディアム・テンポのロック。
ゆったりとした雰囲気の中で綺麗なメロディの歌を聴かせてくれる。原曲に比べ、ライブを意識して、イントロにギターの掻き鳴らしが追加されています。そして、サビにおける壮大な感じが半端無く、拡がりに引き込まれる感じになっている。歌詞は、また出会える季節の春になって想いを重ねると同時に一つの決別を決意し進もうとする少年の意志を描いています。

総評:86点

全体を通して、ダークで荒々しくも儚げで切ない雰囲気を重視したロックなアルバムです。ギター、ベース、ドラムの3ピースによるシンプルなサウンドながら轟音で攻め立ててくるので一気に飲まれます。そこに乗る掠れ声で荒々しく歌い上げる渋谷さんのヴォーカルは何とも言えない泣きを誘う印象で、喪失をテーマに繰り広げられる歌詞の世界観を上手く表現しています。バラエティに富んだ楽曲が並んでいるわけでも無く、キラキラした感じとか一切無いくらいに黒くて暗いんだけど、だからこそ希少価値が高いとされているのも納得なところで、オルタナとシューゲイザーを併せた轟音ギター・ロックが聴きたい人には勿論のこと、同期を好まず生音に拘る人やロキノン系やUKロックなんかが好きな人にも是非オススメしたい。V系だけどV系じゃない音がここにあります。

オススメ曲・・・DISCO BEAT EMOTION、バニラ、SHOW EMOTION、サミダレイン、LIVINGDEAD GIRLFRIEND、ドレスフラワー、メロウイエロウ