気配(けはい) | 四ツ谷の鍼灸師のブログ

気配(けはい)

前回は、身体は温めるに限ると説明させていただきました。

そのためには血流をよくすることです。と申し上げました。

東洋医学では、気血の流れをよくすると言います。「氣」の流れとはいかなるものでしょうか?この目に見えないものを、信じられる方はなかなか居ないと思います。ただし、氣を送られると感じることが出来る方はかなりいます。

 どの様な感覚かと申し上げますと、少し強い「氣」では、まるで空気の塊ようなもので押されるように感じます。受ける方が、傷や硬結のようなコリがあると判りやすいです。傷の場合は、最初強い力で押されているような感覚を受けます。そのあとは、少しずつ和らいで来るのが経験できます。

 「氣」を通すと患部は、治りが早くなります。 

 「氣」について、学びたい方には野口晴哉さんの著書を読むことをお勧めいたします。

 ところで、タイトルの気配について、説明したいと思います。

私がこの言葉に関心を持ったのは、武蔵大学人文学部丸橋教授の興味あるお話を聴いてからです。丸橋先生は霊長類の研究で、世界各地に行かれます。

先生がアフリカで現地ポーターとジャングルに入っていた時、突然ジャングルの中で巨大な壁にぶつかったそうです。二人でこんな所に壁は無かった筈と思っていると、その壁がゆっくりと動き始めました。なんとそれは象のお腹だったのです。象は気配を出していなかったので、二人は全く気付かなかったそうです。勿論、二人も気配を出していないので、象に気付かれることはありません。もし気付かれたら、踏み殺されていたかもしれません。

 先生のお話では、アフリカでポーターを雇う時、気配を出すポーターは人の集落から一日以内の行程の所までしか行けないそうです。それ以上遠くに出かけるときは、気配を出さないポーターを選ばなければならないそうです。猛獣も、集落から一日の行程の地域には、寄り付かないようです。気配を出すと襲われるそうです。

 私は、この話を聞いて思うことがありました。色々な集まりで、目立つ気配を出している人がいます。私も、若いころはよく目立つ振舞いをして、女房に嫌がられました。動物が感じ取るように、人間界もお互いに感じあいます。年を取ると、若い頃とは異なり多少気配を出さなくなります。老いてからの良さは、体験に裏付けられた「氣」の出し方にあるように私は思います。努めて気配を出さない、日常でありたいと思います。