まずは以下のニュースをご覧ください。


【Ⅰ】<木花開耶>芸能界初の巫女ユニット誕生「自然の美しさ、命の尊さ伝えたい」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100525-00000019-mantan-ent

芸能界初の巫女(みこ)ユニットが誕生した。「木花開耶(このはなさくや)」と名付けられたこのユニット。実際に巫女研修を修了した現役タレント6人で結成された本物の巫女集団。25日、小石川大神宮(東京都文京区)で行われたお披露目会見に紅白のはかま姿で現れた6人は、巫女鈴を手に神楽「浦安の舞」やオリジナル曲「このはなさくやテーマ曲(仮)」を披露。「自然の美しさや命の尊さを知ってほしい」などと語った。


現任神職の一人としてのツッコミどころは、こんなところです。


1.御神名をユニット名にするのは、不敬ではないでしょうか。


2.巫女研修は某神社で行われた「巫女体験研修講座」のことと思われます。この講座は「浦安の舞」の実技や神酒を振る舞う作法などを体験、2泊3日の宿泊研修で、アクセサリーや飲酒、喫煙が制限されたとのこと。当該記事では「体験」が抜けていますが、これは「本物の巫女」と矛盾するので省かれたのでしょう。


3.「紅白のはかま」の意味が分りません。写真を見れば分りますが、メンバーはみな緋袴をつけています。はかまの色が「紅白」というと、「全員のはかまが紅白に染め分けられている」か、「メンバーのはかまが紅もしくは白である」ことを指すのが普通ではないでしょうか。


また別なところで、同じ出来事を書いたものがあります。


【Ⅱ】【写真特集】巫女(みこ)ユニット「木花開耶(このはなさくや)」のお披露目会見の様子

「木花開耶」は、翔子さん、弥生さん、よう子さん、さやかさん、優佳さん、ユウナさんの6人からなるユニットで、茨城県のG神社で3日間合宿しながら研修を受けた。ユニット名は、桜の花を「コノハナノサクヤビメ」ということから、桜の花が咲くように美しい女性たちという意味が込められている。

(中略)

リーダーのユウナさんは「私たちは神社で巫女の修行をしてきたユニットでございます。巫女は神様のメッセージを伝える役割。日本での神様は海や山、大自然のことをいいます。私たちの歌や踊りなどで、自然の美しさや命の尊さなどを知っていただけたらうれしいと思います」とあいさつ。よう子さんも「日本人の美しさや日本女性の美しさ、そして自然の大切さなどを分かりやすく伝えていきたい」と意気込んでいた。(毎日新聞デジタル)


1.本当に桜の花を「コノハナノサクヤビメ」といったのでしょうか。むしろそれに続く部分を借りまして、「桜の花が咲くように美しい女性」を「コノハナノサクヤビメ」とお呼びしたのが本来だと思います。事実誤認ではないかと思いますが、寡聞にして私が知らないだけかもしれません。


2.「日本での神様は海や山、大自然のことをいいます」これはかなり舌足らずです。この発言を適用すれば、八幡大神も明治天皇も菅原道真公も……(以下略)神様ではないことになってしまいます。人物神ももともと人間で、人間は自然の摂理の中から生まれるものだと考えることもできますが、これは深読みですよね。


3.これは見解の分かれるところかもしれません。「巫女」を名乗って活動することで、「日本人の美しさや日本女性の美しさ」を伝えたいのならば、私自身は髪を茶色に染めるべきではないと思います。


そもそも神に仕えてこそ巫女なのであって、巫女の格好をして芸能活動をしてもそれは巫女ではなく、あくまでも巫女の格好をした一般人に過ぎません。そして、この記事を見た現任神職のほぼすべてが、同じ感想を抱くのではないかと思います。2泊3日の「体験講座」がいつのまにか彼女らの意識の上で「修行」になってしまったなら、そこから自分を本物の巫女だと勘違いするところまでは、ごくわずかの距離しかなかったのでしょう。


しかし私には、修行がまだ足りないと思うので、(神職の)直階検定講習会、20日間ほどを受講されることをお勧めします。仮に神職資格を得たとしても、神社に奉職しなければ神職ではない―― このあたりは巫女と同じですけれど。