低アル原酒について。 | 新宿スタンドもとのブログ

新宿スタンドもとのブログ

新宿でひっそりと日本酒BARをやってます☆


先日、低アル原酒について軽く味わいの違いについて書きました。その後、造りの違いも聞かれる機会が多かったので軽く書きます。


ただ低アル原酒については他のお酒と同様にお蔵さんによって手法の違いや、どういう作品に仕上げたいかで設計や考えも違ってきますのでそこはご理解ください。
私が蔵見学や造り手さんの話を聞いた中で説明します。

まずはアルコール低めのお酒を造るにあたり、大きく2つに分けると①濃い酒を造って薄める(加水する)、②軽めに造って原酒で出す…ですね。

重要なのはどちらがいいではなく、どうゆう味を狙ってそうゆう造りをしているかにあります。
結論から言うとどちらでもいいものはできますが、②の後者がみなさんが気になっている『低アル原酒』のことです。


傾向としては、①は生酛や軟質米(雄町が代表例)など延びがきく造りでは、濃いめに造って加水するタイプが多いかなと思います。

製品加水についてですが、昔の製品加水はすぐに詰めないので、タンク貯蔵、炭濾過、加水の組み合わせですので、味がやけに薄くなる印象があります。もし上槽後、すぐ詰めるお酒なら、加水でも薄くならないと思います。最近のお酒はタンク貯蔵より瓶貯蔵が一般的ですので、そこはクリアです。

①の製品加水ではなく、絞る前にもろみで追い水するパターンもあります。こちらも『低アル原酒』と言えますね。(こちらを③としましょう)

製品加水に比べてもろみで追水したほうが、味は崩れにくく、段階的な追水で軽く味を整えてゆく方が味が馴染みやすいという点において質はいいような気がします。

②軽めに造って原酒パターン。簡単に言うと大吟醸のアル添前のお酒と同じような造りを市販酒でする…です。
これは難しいです。



難しいと言ったのはコスパ、もろみのコントロール、手間すべてにおいてです。
早い話、麹を突きハゼ気味にしてかなり粕がでるのは覚悟で仕込み温度をかなり低温にして日数も長く…

とは頭では分かりますが。大吟醸と市販酒でまず価格設定も違いますよね。


あとは②はピルビン酸管理をして(これが高すぎると木香やつわり臭が出てしまいます)、完全発酵させ未熟にならないようにしないとなりません。

これは私の主観ですが③はどちらかといえばふくよかでまったりした味、②はシャープな酸ではっきりした輪郭だったり、キレのある印象に仕上がります。酵母活性を抑え、追い水もせず低いアルコール度数で原酒で持っていきたいので、米が白いほど軟水ほどうまくいきますね。



…なかなかコスパはよくないですが



なお、製品加水、もろみ追い水では、このような酸で輪郭をくっきりつける表現は薄れてしまうようです。水を入れても実際、アミノ酸度って、そんなに下がらないらしいのです。不思議ですよね。ごっついお酒がまろやかになる感じです。なので全く、表現が違いますね。
このあたりは造り手さんでも色々な考えがあると思うので一概には言えませんが。
前述したようにアルコール低め原酒パターンは、粕歩合も半端ないですし、ルーチンワークでやったら高確率で未熟なのができるので、難しいです。


まとめると

①製品加水タイプ
②はじめから汲水が多めとか、米をよく磨いたり、麹をきれいに造ったり、蒸米を締めたりして、そもそも酵母にあまりアルコールを出させない原酒タイプ(アル添前大吟)。
③米を良く溶かしたり麹を造り込んだり、麹を多く使ったり、濃く造って、あとで調整しながら、多めに追水してゆくタイプ

です。



詳しくはお店で