もう一つの進撃の庶民 五 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム

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火曜日は、くらえもん氏による『もう一つの進撃の庶民』です!

『もう一つの進撃の庶民』を少しでも多くの人に見てもらえるよう、やや短めに纏めた劇場版・第五弾です!50~62話までのディレクターズカット版ですので、制作者のくらえもん氏からは不本意な切り方をしているかもしれませんが、予めお詫び申し上げます。
早ければ再来週にも新作が公開されるという情報が!!!!






『もう一つの進撃の庶民 五』



カレン「…ん、ここは……。」
アンジー「カレン!……よかったぁ。ここはエヌ老師の家だよ。」
カレン「え…?ナッシュ団長は?アヴィンは?…消費税はどうなった?」
アンジー「消費税増税は決定。ナッシュ団長は王宮の地下牢に幽閉されたみたい。」
カレン「そうか…。アヴィンのやつの黒い光線を浴びてから先、記憶がないが…。」

エヌ老師「目が覚めたようじゃの。」
カレン「まさか、またあなたに助けていただいたんですか?」
エヌ老師「君を助けたのは、儂の弟子の一人、タンツァじゃ。いつか、礼を言うといい。」
カレン「タンツァ?」
アンジー「もともと調査兵団第1部隊の分隊長をやっていた人みたい。」
カレン「そうだったのか。」

エヌ老師「さて、食事が済んだら、さっそく修行を始めようかの。」
カレン「修行?」
エヌ老師「そうじゃ。敵がネオリベス化光線とやらを使ってくるのであれば、その対策をせねばならんじゃろ。」
カレン「ネオリベス化?また、俺はネオリベス化してしまったのか?」
アンジー「どうやら、そうみたい。」
カレン「アヴィンが使ったあの黒い光線がネオリベス化光線だったってわけか…。」
エヌ老師「そもそも、壁外をウロウロしているネオリベス達…、あれらはもともと普通の人間だったのじゃよ。」
アンジー「普通の人間がどうやって、なぜネオリベスに?」
エヌ老師「深い絶望、虚無感、そして思考停止…、これらに冒されたときに自己の内から現れる破壊神…、それがネオリベスの正体というわけじゃ。」
カレン「俺が前、ネオリベスに喰われてしまいそうになった時、確か頭が真っ白になって。」
エヌ老師「それが、ネオリベス化のきっかけだったのかもしれぬの。もちろん、そういう状態に至ったとて、必ずしもネオリベス化するわけではないのじゃが。」
アンジー「プロジェクトN…。もしかすると、そういった思考停止に陥ったような人々を次から次へとネオリベスに変えていくつもりなのかも。その黒い光線は、内なるネオリベスを表へ引っ張り出す触媒みたいなものなのかもしれない。」
カレン「ネオリベスを次から次に作るだって?そんなことしたら国がメチャクチャになるだろうがよ。」
アンジー「タンツァさんの話によれば、カレンはアヴィンの命令に従っていたって。おそらくプロジェクトNでネオリベス化させられた人々は、アヴィンの下僕になってしまうのかも。」
カレン「俺が、アヴィンの命令に?マジかよ…。」
エヌ老師「しかし、ナッシュ君はネオリベス化しなかったと聞いている。つまり、まだ、プロジェクトNに対抗する手段は残されているということじゃ。」
アンジー「その方法を僕たちに教えていただけるというわけですね。」
カレン「早く教えてくれ、じいさん!」
エヌ老師「よし、それではさっそく始めるぞ。」


―新調査兵団・アジト


タンツァ「はーい。エブリバディ。元気にしていたかい?」
シヴァ「タンツァじゃないか、今までどこに行っていたんだ?」
タンツァ「エヌ老師に頼まれてネオリベスの調査をちょっとね。」
ミツキ「誰?」
タンツァ「知らない顔が増えているみたいだから、自己紹介させてもらうよ。私は元調査兵団第1部隊分隊長だったタンツァだ。よろしく。」
アスキー「元気そうでよかったよ。しかし、ナッシュ団長が…。」
タンツァ「事情はだいたい知っていますよ。あぁ、そうそう。カレン君とアンジー君の2人は今、エヌ老師の下で修業中だから、心配しなくていいですよ。」
ミツキ「本当ですか?よかった…。」
タンツァ「あと、みんなにアヴィンの企んでいるプロジェクトNのことについて話しておかないとね。」


―E14地区、ミュンヒハウゼン城

アヴィンからパーティーに招待されたクリスマス兵団はE14地区の山奥にあるミュンヒハウゼン城という古城にやってきていた。

ガース「私、アヴィン様のお世話をしておりますガースと申します。アヴィン様ももうじきお見えになられると思いますが、みなさん先に料理を召し上がっていてくださいませ。」
クリスマス「うむ。それではお言葉に甘えていただくとしよう。」
クリスマス兵団員「いただきまーす!!」

 テーブルいっぱいに広がった豪華な料理を前に興奮状態のクリスマス兵団は大盛り上がり。そして約30分後、飲んで食べて歌って踊って楽しんでいたところに、ようやくアヴィンが姿を現した。

アヴィン「どうやら楽しんでいただけているようだね。」
ジェイネス「はっ!アヴィン様。おい、みんな静かにしろ。」
アヴィン「いやいや、どうぞ続けてくれ。遅れてすまなかったな。」
ポリアンナ「こんなにおいしいごちそう、ありがとうございます。」
アヴィン「礼には及ばんよ。しかし、消費税増税を止めることができずに申し訳なかったな。」
クリスマス「アヴィン様なら止められると思っていたのですが。」
アヴィン「どうやらキノッチの方が上手だったようだ。私も手を尽くしたのだが。」
ジェイネス「アヴィン様、心配はいりません。増税の影響など金融緩和で十分しのげますよ。」
アヴィン「ああ、プロフェッサー・ハマーからもそう聞いている。」
チャッキー「確か獄長の師匠の…。ですよね、獄長。」
ジェイネス「ま、まぁな…。」

アヴィン「さて、私を応援してくれた諸君に実はもう一つプレゼントを用意しているんだ。」
クリスマス「わざわざありがとうございます。」
アヴィン「それでは、食事中のところすまないが、ここに横一列に並んでくれ。」

 アヴィンに言われるがまま、アヴィンの前に横一列に整列するクリスマス兵団。しかし、アヴィンが懐から取り出したのはネオリベス化光線銃だった。

アヴィン「さぁ、君たちの真の姿をさらけ出し、その力を解放するのだ!!」
クリスマス「え!?」

 クリスマス兵団の面々は混乱し、硬直!!
 そして、そのスキにアヴィンは全員に向かって一斉に光線を浴びせる。

アヴィン「どうやら、全員素質ありだったようだな。揃いも揃って愚か者の集まりだったということだ。」

クリスマス(ネオリベス)「グオォーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 消費税増税が実行され半年後、N国経済は史上最悪の冷え込みを見せていた。そして、一昔前に流行した「アヴィノミクス」という言葉は死語と化していた。

 しかし、アヴィン政権の支持率は一向に下がる気配を見せない。政府のメディアコントロールがうまくいっており、国民に失政を隠しているのもその一因だ。そこで、新・調査兵団はそれに対抗すべく自ら電子ネットを活用したメディアを立ち上げ、独自の情報を発信することにしたのだった。

セルフィ「それにしても、チャンネル・チェリーを利用した方が楽だったんじゃないですかね?」
マージ「あそこは今やアヴィン政権の提灯持ちテレビ局だからねぇ。」
タンツァ「絵的なこともあってミツキちゃんをキャスターに抜擢したんだけど、もうちょっと笑顔があるといいかなぁ。」
ミツキ「は、はぁ…。そういうの、なかなか難しいな。」

アスキー「みんなご苦労さん。少しでも国民の意識を変えることができればいいんだけどね。」
セルフィ「アスキー団長代理。シヴァさんお帰りなさい。街の様子はどうでしたか?」
シヴァ「久々に街に出てみたけど、しばらく見ないうちにC国人がかなりやってきているみたいだね。」
アスキー「政府は少子化の問題を外国人を連れてくることで解決しようとしているらしいしね。」
ミツキ「移民…というわけですか。」
マージ「チャンネル・チェリーの連中は「アヴィン様はC国と戦っているぅ」とか言って気がするけど。」
シヴァ「むしろ自らC国人をN国内に招き入れているような感じですね。」
マージ「そう言えば、クリスマス兵団ってどうなったんですか?ここ一年大人しいみたいですけど。」
アスキー「昨年の増税決定時期はあんなに暴れまわっていたのに、確かに妙だな。」
ミツキ「存在を忘れてたわ…。」
タンツァ「案外、兵団まるごと政府に消されていたりして。」
セルフィ「笑えないですね…。」

 と、その時テレビの画面上に衝撃の文章がニュース速報として映し出された。

ナッシュ元新調査兵団長の公開処刑決定
日時は明後日正午 王都中央広場にて

タンツァ「あれから1年…。随分と引っ張りましたね。」
アスキー「ナッシュ団長は公開処刑か。タンツァの読み通りだったな。」
タンツァ「ナッシュさんは我々をおびき寄せるエサですからね。ただ我々にとってもナッシュ団長救出の唯一のチャンスです。」
シヴァ「しかし、政府は相応の準備をしているんじゃないですか?」
タンツァ「それでも、王宮に突入して地下牢からナッシュさんを救出するというのよりは確率が高い。」
セルフィ「場所は王都中央広場ということは、今から出発すればなんとか間に合いますね。」

 アジトを出て2日目の夜、新・調査兵団はナッシュ救出作戦の詳細を詰めることにした。

タンツァ「やはり、狙い目は王宮と王都中央広場の間、ナッシュさんが護送される間でしょう。」
アスキー「確かにそこが一番警備が手薄になりそうだが、それは敵も気づいているのでは?」
セルフィ「ナッシュ団長ってどんな手段で護送されるんですかね?」
マージ「そりゃ、もちろん馬車じゃないのか?」
ミツキ「じゃあ、立体機動装置を使えばチャンスはありそうですね。」
アスキー「もし、そこで失敗したら、あとは処刑台の上からの救出ということになるが。」
タンツァ「その時は処刑台を破壊してでも救出しなければならないでしょうね。」

ズシン…ズシン…

 その時、無数の大きな足音が近づいてきた。

ミツキ「ネオリベス!?」
アスキー「みんな、伏せろ!!」
マージ「な、なぜこんな場所に!?」
アスキー「しーっ!静かにしろ!」

ズシン…ズシン…

セルフィ「どうやら行ったみたいですね。」
タンツァ「ざっと見た感じ100体以上いましたよ。」
マージ「ここ、壁内だったよな?もしかして、どこか壁に穴があいたのか?」
ミツキ「アイツら、王都の方角へ歩いて行ってたけど。」
セルフィ「もし、王都でネオリベスが暴れたらどさくさに紛れてナッシュ団長を救出できないかな。」
タンツァ「もし、今のネオリベスがプロジェクトN絡みでなければね。」

―王宮内

ガース「アヴィン様、ミュンヒハウゼン城よりクリス…いや、ネオリベス兵団が到着しました。」
アヴィン「うむ、ご苦労。」
ラショウ「ネオリベスの大軍がやってきて国民に混乱は生じなかったのか?」
ヘイツォ「心配は無用。あれは政府の開発した人形だということにしてある。」
アヴィン「人形か…。フフ、確かにな。」

―王宮・地下牢

ヴォルフ「ナッシュさん、時間です。」
ナッシュ「そうか……。」
ヴォルフ「死ぬのが怖くはないのですか?」
ナッシュ「まぁ、そういう運命なら受け入れるさ。それに、俺が死んでも世界はちゃんと続いていく。」
ヴォルフ「そうですか…。」
ナッシュ「ヴォルフ…。あとのことは頼んだぞ。」
ヴォルフ「……。」

―王宮・王の間

アヴィン「それでは、そろそろ私も中央広場へ向かうとしよう。」
ガース「ナッシュの方は移送準備が整い次第、中央広場へ連行いたします。」
アーリマン「新・調査兵団の連中が狙うとしたら移送中だと思うが、対策は練ってあるのか?」
ヘイツォ「もちろんです。焦る連中の顔が思い浮かびますぞ。」
アーリマン「それは頼もしいですな。」

―エヌ老師の家

カレン「おーい、じいさん。壁外から戻ったぞ。」
アンジー「誰もいないみたいだね。」

 その時、カレンがエヌ老師の置手紙を発見した。

カレン「アンジー!じいさんからの手紙だ。」
アンジー「え?」
カレン「フムフム……なにぃ!?」
アンジー「何が書いてあったの?」
カレン「ナッシュ団長が公開処刑されるって…、しかもじいさんは王都に向かったって。」
カレン「よし、とにかく急ぐぞ。」

―王宮・門の前

アスキー「ナッシュ団長を乗せた馬車が門を出たら教えてくれ。」
セルフィ「今、馬車が出発しました…が、ナッシュ団長の姿はこちらからは確認できませんでした。」

タンツァ「おとり…という可能性もありますね。」
マージ「とりあえず、俺が行って叩いてこようか?」
アスキー「あぁ。無茶はするなよ。」
マージ「了解。」

 マージは先ほど出発した馬車を目指し、立体機動装置で街中を飛んで行った。

タンツァ「さて、王宮から王都中央広場までのルートは大通りを通る最短ルートと裏通りを経由する迂回ルートの2通りあるわけだが、さっきの馬車は大通りを通るみたいですね。」
アスキー「そう言えば、裏通りを見張っているミツキから連絡はないか?」

 その時、アスキーのトランシーバーからミツキの声が聞こえてきた。

ミツキ「こちらミツキです。」
アスキー「何かあったのか?」
ミツキ「移送馬車には見えないんですが、古い馬車が一台走っています。しかも外部からは中が見えないように布で覆ってあります。これ、怪しいですよね。」
アスキー「うむ。一応探りを入れてみた方がよさそうだな。」
ミツキ「じゃあ、あの馬車、止めてみま……」
ドガッ

 何か大きな音が聞こえたと同時にミツキの声が途切れてしまった。

アスキー「どうした!?ミツキ、何があった!?」
タンツァ「これはただごとではありませんね。」
アスキー「タンツァ!セージとマルシェを連れて急いでミツキの救援に向かってくれ。」
タンツァ「分かりました。」

―王都・裏通り

ミツキ「あいたた…。あ、あれは…ネオリベス。それも女型の…。」
女型のネオリベス「グオオオオオオオオ」

 女型のネオリベスのパンチをかいくぐり、うなじを切りつけようとするミツキ。しかし、女型のネオリベスは自分の手でうなじをガードする。

ミツキ「こいつ…。弱点を把握している!?」
女型のネオリベス「ミ……ヅ……ギ……」
ミツキ「え?(私のことを知っている?)」
女型のネオリベス「グオオオオオオオ」
ミツキ「あなた、もしかして………ベティ?」

―王都・大通り脇

セルフィ「マージさん!」
マージ「おお、セルフィ。」
セルフィ「さっき、アスキー団長代理から連絡があって、ミツキの方でアクシデント発生みたいです。」
マージ「そっちが本命だったか…。」
セルフィ「僕たちも急いで裏通りに向かいましょう。」

―王都・裏通り

ミツキ「あなた…ベティなの?」
女型のネオリベス「グオオオオオオオ」
ミツキ「だとしても…邪魔するなら容赦しない!」

 ミツキはうなじを襲うと見せかけて急降下。女型のネオリベスのアキレス腱を素早く切り裂く。そして、女型のネオリベスは激しく転倒。

ミツキ「よし。今だ!!」
女型のネオリベス「ガーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

 ミツキが襲い掛かろうとした瞬間、耳をつらぬく女型のネオリベスの悲鳴。それに呼応し、建物の陰から10体を超えるネオリベスが出現。そして、一斉にミツキに襲い掛かる。

タンツァ「ミツキちゃん!私の手に捕まって!!」
ミツキ「タンツァさん!」

 間一髪、駆け付けたタンツァは立体機動装置を使い、ミツキを救出した。

セージ「ネオリベスがあんなにたくさん…。」
タンツァ「そう言えば、セージ君とマルシェ君はネオリベスとの戦闘は初めてだったね。最初の実戦がこんな状況だとはね。」
ミツキ「タンツァさん…。あの女型のネオリベスは強いです。たぶんクリスマス兵団のベティかと。」
タンツァ「クリスマス兵団はプロジェクトNでネオリベス化されていたというわけか。」
ミツキ「急いで馬車を追わないと。」
タンツァ「ここのネオリベスどもは私たちに任せて、ミツキちゃんは馬車を追ってくれ。では、セージ君、マルシェ君行くぞ!」

―王都・裏通り


ミツキ「急いで馬車に追いつかないと、広場に着いちゃう…。」

 建物の屋根から屋根へと飛び、急いで馬車を追うミツキ。しかし、馬車を視界にとらえたその時、全身を鎧のような皮膚で包み込んだネオリベスがミツキの足元の建物を破壊した。

ミツキ「うっ…。」

 体勢を崩しながらも、なんとか地面に着地するミツキ。しかし、間髪入れずに鎧のネオリベスは襲い掛かってくる。

ミツキ「こいつも、ただのネオリベスじゃない…。それにあのうすらハゲ…。もしかしてコイツは。」
鎧のネオリベス「グォーーーーーーーーッ」
ミツキ「…ジェイネス!?」

 ミツキは鎧のネオリベスのうなじを狙うが、その硬い皮膚に阻まれてしまい、逆にブレードが折れてしまう。

ミツキ「どうやって倒せば…。」

 その時、ミツキの元にシヴァとエヌ老師が到着。

シヴァ「ミツキ!!」
ミツキ「シヴァさん!それに…エヌ老師まで!?」
エヌ老師「カレン君とアンジー君は壁外で修業中での…。代わりに儂が来たというわけじゃ。」
ミツキ「あのうすらハゲ…じゃなかった、ネオリベス。皮膚が鎧のように硬くて弱点のうなじを切り取ることができないんです。」
シヴァ「なんだって!?」
エヌ老師「そうか…。では、ここは儂に任せなさい。」

 そう言って、一人で鎧のネオリベスに近づくエヌ老師。そして、鎧のネオリベスはエヌ老師に襲い掛かる。

エヌ老師「おかえりいただこう。」

 その時、エヌ老師の掌がまばゆい光を放ち、鎧のネオリベスを包み込む。そして、ネオリベスの体は光に融けるように消滅し、そこには一体の白骨死体が転がっていたのであった。

エヌ老師「どうやら、既に身体はネオリベスに蝕まれてしまっていたようじゃの…。」

―王都・中央広場脇

ミツキ「すみません。ナッシュ団長を救出できませんでした。」
アスキー「無事で何よりだよ、ミツキ。それにエヌ老師に来ていただいたとは驚いた。」
エヌ老師「フォッフォッ、礼には及ばんよ。」

タンツァ「ミツキちゃん、アスキーさん!」
ミツキ「タンツァさん!無事だったんですね。」
タンツァ「まぁね。女型には逃げられちゃったけど、雑魚は片付けたよ…って、エヌ老師!?」
エヌ老師「久しいのう、タンツァ。」
シヴァ「みんな驚いてますね。」

 そして、セルフィとマージもアスキーたちに合流した。

アスキー「最初の作戦は失敗。ナッシュ団長は処刑台の上に直に連れて行かれるだろう。さて、これからどうする?」
タンツァ「処刑台を破壊しましょうか?」
シヴァ「問題は政府軍の妨害ですが…。」
エヌ老師「ネオリベスの相手は儂とタンツァが引き受けよう。」
アスキー「残りのメンバーは正規軍の足止めをするとして、誰がナッシュ団長を救出する?」
セルフィ「実力的にはミツキが適任じゃないでしょうか。」
ミツキ「…分かりました。今度こそナッシュ団長を助けて見せます。」

 その時、広場を埋め尽くす民衆からどよめきの声が上がる。ナッシュが処刑台の上に姿を現したのだった。

タンツァ「ナッシュさん…。」
アスキー「団長。今、助けますからね。」

アヴィン「ついにN国に仇なす国賊の首をはねる時がやってきたのだ。このナッシュは我が政策を繰り返し批判してきた。TPPを始め、岩盤のような壁を取り除き、N国に幸福をもたらすであろう政策の数々を妨害してきたのだ。」

マージ「何を言ってやがる…。」
タンツァ「今さらですが、壁の意味を何にも分かっていないですね。」

アヴィン「さて、ナッシュを処刑する前に一つ…。この会場のどこかにいるんだろう?新・調査兵団よ。」
アスキー「我々はここだ!アヴィン!!」
アヴィン「これはこれは、アスキー殿ではありませんか。あなたに一つ提案があります。」
アスキー「なんだと?」
アヴィン「新・調査兵団のメンバー全員の首を差し出せば、ナッシュの処刑は取りやめてやる。どうだ?」
アスキー「答えは……NOだ!!!」
ナッシュ「……。」

 アスキーの叫びと共に一斉に広場に侵入する新・調査兵団。

民衆A「なんだあいつらは!?」
民衆B「もしやナッシュの処刑を妨害する気か?」

ミツキ「あんたら…邪魔よ!!」

 ミツキは公開処刑の見物に集まった民衆の中をかき分けて処刑台を目指す。

アヴィン「N国の民よ。よく見るがよい、これが我々の力だ!。」

ズシン…ズシン…

民衆C「あ…あれはいったい…」
民衆D「俺は見たことあるぞ…あれは…」
民衆E「キャーーーーーッ」
民衆D「ネオリベスだっ!!」

 ネオリベスの大群の出現に驚く民衆たち。そこには悲鳴が飛び交うのであった。

タンツァ「ネオリベス兵団のお出ましですね。」
エヌ老師「よし、行くぞ!!!」

ガース「さすがに民衆たちもネオリベスの出現に混乱しているようですね。」
ヘイツォ「無理もありませんね。いかがなさいます?アヴィン様。」
アヴィン「うむ…。」

アヴィン「うろたえるな、N国の民よ。あのネオリベス達は政府の開発した人形と伝えていたはずだ!彼らは我が意のままに動くので安心して見ているがよい。」

民衆A「え!?」

アヴィン「さあ、ネオリベス兵団よ。新・調査兵団の連中を討ち滅ぼすのだ!」

 アヴィンの号令と共に一斉に動き始めるネオリベス。そして、民衆たちはそれを見て安堵するのであった。

アヴィン「この力があれば壁を破壊しても、外のネオリベスに怯える必要などないのだ。N国の民よ、逆賊の言うことなどに耳を傾ける必要はない。今こそ民を惑わす悪を滅ぼすのだ!!」

民衆B「ウオーーーーーーーーーッ!」
民衆C「アヴィン様ーーーーーッ!!」

 アヴィンの言葉に湧き上がる民衆たち。そんな中、政府軍の妨害をかいくぐりながら処刑台を目指すミツキ。
 しかし、その時処刑台の後方から1体の巨大なネオリベスが姿を現した。しかも、通常のネオリベスの肌の色は黒に近い色だが、そのネオリベスは白い肌をもっていた。

ミツキ「あれもネオリベスなの?…しかも30m級…デカい。」

 そして、白いネオリベスはミツキに素早く蹴りを浴びせてくる。

ミツキ「それに速い…。」

 なんとか間一髪キックをかわすミツキ。しかし、うなじまでの距離が遠く攻撃が届かない。

ミツキ「こうなったら、脚を切り落として転倒させるしかない…。」

タンツァ「あの白いのも一応ネオリベスなんですかね?」
エヌ老師「恐らく。儂はミツキ君の加勢に行くが、ここは任せてよいか?」
タンツァ「ええ。あと残りは半数くらいですし、なんとか浄化してみせますよ。」
エヌ老師「では、頼んだぞ。」

タンツァ「それにしても、ここまで生存者ゼロか。ネオリベス化していた期間が長すぎたにしても、ひどいなこりゃ。まぁ、クリスマス兵団のメンバーはそういう集まりだったということかもね。」

ミツキ「コイツ…。素早くてなかなか近づけない…。」

 白いネオリベスを相手に苦戦するミツキはなかなか処刑台に近づくことができずにいた。しかし、そこにエヌ老師が救援に駆け付ける。

エヌ老師「ミツキ君。この白いのは儂に任せてナッシュのところへ急ぐのじゃ。」
ミツキ「エヌ老師!ありがとうございます。」
白いネオリベス「グォーーーーーーッ」
エヌ老師「おぬしの相手はこの儂じゃ!!」

 エヌ老師が白いネオリベスの相手をしている間にミツキは一気に処刑台への距離をつめる。

ヘイツォ「賊が一匹近づいてきておりますぞ。」
アヴィン「アーリマン、テレビ中継は全部遮断しろ!ガースよ、Nビームキャノンを使うぞ。」
ガース「準備はできております。」
ラショウ「民衆も巻き添えにする気ですか?」
アヴィン「そのためにテレビ中継を遮断するのだ。」
アーリマン「撮影の中止は完了しました。」
アヴィン「よし、では始めるぞ!」

 その時、アヴィンの放つビーム砲が広場全体を襲う。

タンツァ「この光線は…!」
アスキー「みんな、ネオリベス化光線だ。心の平衡を保て!!」

 新・調査兵団はタンツァの指導の下、この1年間でネオリベス化光線対策の訓練を積んでいた。団員たちはまばゆい光を発しながら、なんとかネオリベス化を防いだ。
 しかし、…。

マージ「おいおい、マジかよ。」
シヴァ「これは穏やかじゃありませんね。」
セルフィ「この数は…。」

 広場にいた約1000人の民衆が全てネオリベス化したのであった。

ミツキ「早く、ナッシュ団長を助けなきゃ。」

ガース「新・調査兵団にはNビームは通じないのか!?」
アヴィン「それならば、私が直々に戦うとしよう。」
アーリマン「アヴィン様、自らですか!?」
アヴィン「処刑人に伝えろ、今すぐナッシュの首を落とせと。それでは行ってくる。」

 ミツキは一直線に広場を駆け抜け、ついに処刑台の目の前まで到着。
 しかし、ミツキの前にアヴィンが現れた。

アヴィン「そこまでだ。」
ミツキ「アヴィン…。どかなければ殺す。」
アヴィン「貴様にできるかな?」

 そう言うと、突然アヴィンの体が巨大化し、その巨体はドス黒いオーラを放った。

ミツキ「ネオリベス!?」
ネオリベス・アヴィン「サァ、始メヨウカ…。」

 アヴィンの放ったNビームキャノンによってネオリベス化した民衆が広場を埋め尽くす。そして、ナッシュの処刑が早められることとなった今、ネオリベス化したアヴィンがミツキの前に立ちはだかる。

タンツァ「この状況…、撤退も考慮すべきか。」
アスキー「まさか、アヴィンまでネオリベス化するとは…。」
シヴァ「TPPを進めたがっている知能を持ったネオリベスがいるという報告があったけど。」
マージ「その一人がアヴィンだったというわけか。」
セルフィ「ミツキ…。」

―王都・中央広場処刑台前

ミツキ「アンタの正体はネオリベスだったのね。」
ネオリベス・アヴィン「ココカラ、先ヘハ行カセンゾ。」

 アヴィンは全身からドス黒いオーラを噴出。そのオーラの熱気はすさまじく、ミツキは近づくことができない。

ミツキ「熱っ…。これじゃ、近づけない。何か方法は…。」
ネオリベス・アヴィン「モタモタシテイテイイノカナ?ナッシュノ首ガ飛ブゾ。」
ミツキ「え!?」

 予定より早いがアヴィンの指示によって処刑人がナッシュの後ろに斧を携えて姿を現した。

ナッシュ「(ここまでか…。)」

 そして、ついに処刑人が斧をナッシュの首めがけて斧を振り下ろす!

ガキーン

ミツキ「!?」
ネオリベス・アヴィン「ナニ…?」

ナッシュ「(い、生きてる…?)」

 処刑人の振り下ろした斧は止めたのはなんとヴォルフだった。

ミツキ「ヴォルフさん!!」
ヴォルフ「アヴィン様、あなたの正体はネオリベスだったのですか?それならば私はあなたについていくわけにはいかない。」
ネオリベス・アヴィン「ホウ…。私ヲアマリ怒ラセルナヨ…。」

 その瞬間、アヴィンは処刑台の上にいたヴォルフを握り潰し、投げ飛ばした。

ヴォルフ「ぐわぁっ!!」
ネオリベス・アヴィン「マダ死ンデハイマイ。貴様ハアトデユックリNL-Xニ改造シテヤル。サァ、処刑ノ再開ダ。」

 処刑人はヴォルフに打払われた斧を拾い、再び斧を構えた。

ミツキ「ナッシュ団長!!(ダメ、もう間に合わない!)」
ネオリベス・アヴィン「ヤレ!!!」

 しかし、その瞬間、処刑人の体が宙を舞い処刑台から落下。そして、ナッシュの横には2人の影が。

ミツキ「カレン!!…と誰?」
カレン「なんとかギリギリセーフだったみたいだな。ハァハァ。」
???「ナッシュ団長。お待たせしました。ハァハァ…。」

 カレンと謎の覆面男はナッシュの猿ぐつわを外し、手錠の鎖をブレードで切断し、ついにナッシュを解放する。

ナッシュ「お前ら、ありがとうな。それにしてもアンジー。その覆面はなんだ?」
アンジー「僕は一応政府の人間ですし(笑)。まぁ、1年も不在にしてましたけど。」
カレン「それにしてもあのネオリベスの大群は…。」

ネオリベス・アヴィン「貴様ラ、生キテ帰レルト思ウナヨ。」

エヌ老師「どうやら、ナッシュは助かったようじゃの。」
白いネオリベス「グオーーーーーーーーッ!」
エヌ老師「そろそろおぬしとも決着をつけようかの。」

 白いネオリベスの猛攻をかわしたエヌ老師はカウンターで浄化の光を白いネオリベスにぶつける。ネオリベスの体は光に飲み込まれるように消滅。そして、そこに残ったのはクリスマスの身体であった。

エヌ老師「これは驚いた。まだ生きておったとは。まぁ、目を覚ますかどうかは分からぬがの。」

―王都・中央広場処刑台

ナッシュ「さて、ここをどうやって切り抜けるか。俺の分の立体機動装置があればいくらか楽なんだが。」
アンジー「僕が連れて行きますから、しっかりとつかまっていて下さい。」
カレン「こっちを見ろ、ネオリベス!!」

 カレンは身体からまぶしいくらいの光を放つ。その光によってアヴィンは一瞬目をくらませた。カレンたちは処刑台から降りてミツキと合流。

カレン「ミツキ!今のうちに逃げるぞ!」
ミツキ「カレン…。分かったわ。」

ネオリベス・アヴィン「逃ガサヌゾ。」

 カレンたちは懸命に走って逃げるが、人間の足ではネオリベスにたちまち追いつかれてしまう。しかし、アヴィンがカレンたちに襲い掛かろうとしたその時、

エヌ老師「貴様の相手はこの儂じゃ、アヴィン!!」

 エヌ老師がアヴィンの行く手を阻む。

ネオリベス・アヴィン「アナタハ、エヌ老師…。」
カレン「じいさん!!」
ナッシュ「老師!!」
エヌ老師「おぬしがネオリベスの力に手を染めるとは…。」
ネオリベス・アヴィン「アナタニハ、昔色々ト世話ニナッタ恩ガアル。セメテモノ恩返シニ、コノ私ノ手デ葬ッテヤロウ。」
エヌ老師「この場は儂に任せて、ナッシュたちは広場から脱出するのじゃ!!」

ナッシュ「カレン、急ぐぞ!!」
カレン「でも、じいさん一人残して行けるかよ。」
ナッシュ「老師は今のこの場所を死に場所と決めたのだ。無駄にするな!」
アンジー「そんな…。」
ミツキ「カレン、私たちがこのままここにいたら全滅よ。団長の言うとおり脱出しなきゃ。」
カレン「くっ…。」

 エヌ老師がアヴィンを足止めしている間に、カレンたちは新・調査兵団の本隊に合流。せまるネオリベスの群れをかわし、広場の脱出に成功する。

ナッシュ「エヌ老師…。ありがとうございました。」

 その時、広場ではエヌ老師が最後の光を放つ。そして、それを見つめる新・調査兵団のメンバーの頬には涙が流れるのであった。 

( つづく・・・。)





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