2013年にアベノミクスが始まってから約2年半が経過しました。2015年4-6月の一次速報値は、実質GDPは▲0.4%(年率換算▲1.6%)とマイナスに落ち込みました。2015年の物価上昇率もコアCPIでゼロ近傍です。

リフレーション(以降、リフレ)政策による効果は無かったのでしょうか?
「リフレは悪い」のでしょうか?
「リフレはヤバい」のでしょうか?

リフレ政策を支持する私の目線で、リフレ政策について、思うところをまとめてみます。
(以降、敬称略)

◼︎1.リフレーション(リフレ)政策とは
◼︎2.アベノミクスで実施された「リフレ」政策の評価
◼︎3.リフレ政策や「りふれ」への批判

◼︎1.リフレーション(リフレ)政策とは

そもそも「リフレーション」とは、何でしょうか?

リフレーションを提唱したのは、アーヴィング・フィッシャーが最初と言われているそうです。書籍などで、日本のリフレ派の方がリフレについてどのように仰っているかを見てみましょう。

"リフレ政策とは、物価を企業が非自発的失業者を吸収できる水準まで戻し、以後も、非自発的失業者が出ないように、物価を安定させる政策"
《デフレと超円高》(岩田規久男,2011)


"リフレというのはデフレの長期化で失われた名目価値のリカバリーとそれに伴っておきる実質経済成長率の増加&長期安定、雇用の改善を目指すこと"(抜粋)
(田中秀臣,2015)


スティグリッツは失業こそ人間価値の毀損を伴う最悪の事態のひとつであり、これを解消することが人間の幸福を促進することになると明言…人間的価値から失業を捉える見方は[中略]高橋亀吉や石橋湛山が採用した見方[中略]リフレ派の地下水脈をなす思想
経済政策を歴史に学ぶ》(田中秀臣,2006)


"1. 政策レジーム・チェンジを通じて
2. 民間の期待形成に働きかけることにより
3. 実体経済における景気回復を促す政策
リフレーション政策ではインフレ予想と予想実質金利(事前実質金利)が重要な役割を果たす"

《インフレ予想とデフレ脱却 ~レジーム・チェンジの経済学~ 国民経済計算研究会》
(矢野浩一,2015.03.14)


物価安定と雇用環境改善を重視しているようですねウインク


◼︎2.アベノミクスで実施された「リフレ」政策の評価

アベノミクスの第一の矢「大胆な金融政策」は、リフレ政策と言われており、リフレ政策に賛成している日本国内外の経済学者(クルーグマン、スティグリッツ、ピケティ、セン、バーナンキなど)に支持されています。

リフレ政策 ≠ アベノミクス
です。

あえて言うなら
リフレ政策 = アベノミクス第一の矢
です。

アベノミクスの第一の矢の目的は次の通りです。
"企業・家計に定着したデフレマインドを払拭
日本銀行は、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現"

《安倍内閣の経済政策》(内閣府,2013)

大胆な金融緩和でデフレ脱却を目指す政府自身は、どのように評価しているのか見てみましょう。

"昨年秋以降、原油価格が大幅に低下したこと等により、消費者物価の総合及びコアは下落しているが、コアコアは横ばいで推移し、GDPデフレーターは上昇している。また、8割以上の世帯で1年後の物価上昇を予想"
{16D9244D-8494-404A-9685-3C7D3580C324:01}

"有効求人倍率は1.15倍に上昇(22年ぶりの水準であった先月と同水準)。
失業率も3.4%に低下(17年ぶりの水準となった2014年12月と同水準)"
{C1F0EE94-45C1-4E64-8377-B1EF49B5C5C6:01}

{04E32A20-1DB9-4CB2-B66C-784B8A72555A:01}

《デフレ脱却と経済再生に向けた進捗》(内閣府,2015.05.12)

成果を上げている、という評価のようですね。

私も金融政策は成果を上げている、という評価です。雇用環境改善、企業倒産減少、名目GDP成長(約500兆円)、税収増などが判断の根拠です。しかしながら、物価安定目標は未達成であり、目標達成時期が後ずれしており、対策が必要である、という考えです。

民主党政権下と第二次安倍政権以降での就業者数の推移を比較すると明らかに後者で改善しています。
また、消費者物価指数も、2014年4月にはコアCPIの前年同月比で+1.5%まで上昇しました。

{12CBDBA2-565E-4745-8698-7A51B3C4E250:01}

{4F98195F-BDB5-4064-9AA2-984DE2ECE2DF:01}

「2000年以降の日経平均株価と就業者数の推移」

{338C26BA-EC08-4DC6-94C1-D2AF9C2AB55D:01}

「消費者物価指数(2013/03 ~ 2015/04)の推移」



リフレ派の方々の評価をご紹介しておきます。
後日時間が取れれば、内容とそれへのコメントを追記します。

「アベノミクスを斬る」 ─経済学者の視点から─
(浅田統一郎,2014.11.04)

日銀法改正でアベノミクス再起動 若田部昌澄・早大教授:朝日新聞デジタル 

最近の金融経済情勢と金融政策運営 ── 札幌市金融経済懇談会における挨拶 ──
(岩田規久男,2015.05.27)


◼︎3.リフレ政策や「りふれ」への批判

リフレ政策には、多くの批判がありました。
1)効果がない
2)ハイパーインフレになる
3)貸出が伸びていない
4)輸出が伸びていない
5)マネーストックが増えていない
6)2年経っても物価上昇率が2%になっていない
7)2年経っても物価上昇率はゼロ近傍だからリフレは効果がない
8)再分配に熱心ではない
9)口や態度が悪い
などなど

出典を示さないものや、リフレ政策を理解していないにも関わらず、脳内に築き上げた「りふれ」を批判するものなどもありました。

6)の批判には、しっかりと説明をする必要があります。岩田規久男日銀副総裁の講演資料(上述)をご一読ください。

また、貸出やマネーストックなどは日銀の次の資料をご確認ください。
《金融経済月報》(日本銀行,2015.08)


リフレ政策嫌いな人に関する分析が、記事になっているのでご紹介します。「日本のリベラル」(一部の人を除く)だけではなく、旧日銀の応援団などにもリフレ政策嫌いの方はいらっしゃいますが。

《なぜ日本のリベラルはリフレ政策が嫌いなのか》
(原田泰,2014.09.05)

《日本のリベラルが考えるべき8つのこと》
(原田泰,2014.10.06)


1990年代以降の政策論争をまとめて下さっている原田泰氏(現日銀審議委員)の記事をご紹介します。

"1990年代以降の政策論争で物価を上げることが課題となったのは、デフレがGDPを押し下げていることで、その克服が重要目標となったからである。その結果、財政金融政策で物価を上げ、それによって実質GDPが上がるかどうかが問題となった。しかし、金融政策の効果は、物価だけでなく、為替レートや資産価格等、多くの経路を辿って実質GDPに影響を与えるものであるそのような因果の連鎖を縷々書き連ねることには、本誌はふさわしい媒体ではないだろう(これに関心のある方は前述の原田などの論文を読んでいただきたい)。要するに、物価は中間目標で、実質GDPと雇用の拡大が最終目標である。財政金融政策に効果があるかは、実質GDPを引き上げるかどうかで判断すべきである"

《[アベノミクス第二の矢]ついに暴かれた公共事業の効果〔2〕》(原田泰,2014.05.10)


金融政策には効果があったが、消費増税がGDPギャップの拡大などを通じて、様々な経済指標を悪化させている、と見ています。
{844A8451-99C2-415E-A4A5-37920363B7B3:01}

{6DA42E03-8975-4754-BB9A-B9089ECC2D93:01}

{2116F8D2-9954-4759-BE04-5DCF3E4D339E:01}

{4188D2D9-5678-44A7-A3AC-65FA6960BCE8:01}

《年次経済財政報告》
(内閣府,2015.08.17)


私は「消費増税はアベノミクスに含まれない」という立場です。「第二次安倍政権以降に実施された政策」には消費増税は含まれますが。消費増税については、別の機会にでもブログを書く目途です。