宮部みゆき「ステップファザー・ステップ」 | 親愛なる人に-読書の薦め

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読んだ本の感想などを、本屋さんで見かける推薦文のように綴ります・・・お薦め度合いは、☆の数で評価します。親愛なる本好きの人たちに,このブログを届けたいです.

宮部 みゆき
ステップファザー・ステップ
宮部 みゆき
ステップファザー・ステップ

☆☆☆+
講談社 1993年3月 309p


宮部みゆき「ステップファザー・ステップ」を読みました。


連作短編ユーモアミステリーです。初期の作品ですので、ちょっと文章的には隙が多いですが、上手です。最後まで肩が凝らずに、すらすらっと読めてしまいます。凶悪犯罪には手を染めない泥棒「俺」と、お父さんとお母さんがそろって駆け落ちしてしまい、現在二人で住んでいる中学生の双子が、この連作の共通の登場人物です。


「ステップファザー・ステップ」小説現代1991年2月号

新興住宅地に依頼があって盗みに入ろうとした「俺」は屋根から落ち、誤って隣の家に転がり込んでしまい、ケガをしてしまいます。両親共々駆け落ちして残された双子に助けられ、泥棒のことを内緒にする代わり、「お父さん」になってくれ、と頼まれます・・・

でてくる双子が、どことなくお笑いの「ザたっち」とダブります。題名のstepfatherは継父のことです。


「トラブル・トラベラー」小説現代1991年5月号
岡山の倉敷をまねした、北関東の倉志木に双子たちは旅行に行きます(そこには大原美術館ならぬ小原美術館なんていうのもある・・・)。そこで、置き引きにあう双子たち。お父さんである「俺」に助けを求めてきました。・・・

ふるさと創生1億円、なんて話も出てきて、ちょっと時代を感じさせられました。


「ワンナイト・スタンド」小説現代1991年8月号
双子たちは、世間体だけのお父さん「俺」に、父母会に出でてくれと頼んできました。いろいろ弱みを握られている「俺」は渋々承知するのです・・・


「ヘルター・スケルター」小説現代1991年11月号
双子の一人、直が盲腸とになって入院しました。とりあえず、命に別状がなかったので、哲と一緒に自宅に帰る「俺」。そこに刑事がいました。刑事によると、近くの今出湖から自動車に乗った2人の白骨死体が見つかったということでした。「俺」は、双子の両親が別々にそろって駆け落ちをしたという話が、以前からおかしいと思っており、俺は双子たちを疑いの目で見るのでした・・・

helter-skelterは、狼狽(ろうばい)してと言う意味です。


「ロンリー・ハート」小説現代1992年2月号
正月が近くになり近所の目もあるので、一緒に旅行でも行きたいという、双子たち。「俺」にはそんな義理がないと突き放すものの、心が痛むわけなのでした・・・


「ハンド・クーラー」小説現代1992年5月号
双子の知り合いの女の子の家に、なぜか「山形新聞」がときどき届くようになりました。そんななか女の子の父親は、道から転げ落ち大けがをしました。心配する女の子の母親。双子は女の子から相談を受け、「俺」もその謎解きにつきあう羽目になりました・・・


「ミルキー・ウエイ」小説現代1992年5月号
「俺」は久しぶりに仕事が暇になったので、昼間に双子たちの家に遊びに行きました。そこで、見知らぬ男が。もしかすると、本当の父親が戻ってきたと思い、「俺」はあわてて逃げました。その後電話をかけて、様子を聞こうとしますが、どうやら双子がそれぞれ別々に誘拐されてしまったようなのでした・・・


何か、ストーリーだけを掻い摘んで書くと、突拍子もない感じもしますが、全体を読むと全然違和感なく読める、楽しいミステリーです。


追記


こんな本を発見しました!!!青い鳥文庫に入ってます。中身は同じかどうかは未確認です。たぶん同じなんでしょうね・・・(オンライン書店bk1には、1993年刊より6話を採録と書いてありました)

宮部 みゆき
ステップファザー・ステップ 屋根から落ちてきたお父さん 講談社青い鳥文庫