6-2 インパクト広告から関係構築型広告へ | 時代はブログる!

6-2 インパクト広告から関係構築型広告へ

2004年6月。僕は6年ぶりにカンヌ国際広告祭へ出席しました。その間に、僕は博報堂を退職し、ヤフージャパンでの勤務を経て、インターネット専業広告会社最大手のサイバーエージェントの社員になっていました。


6年の間に変わったのは僕だけではありませんでした。カンヌ国際広告祭もまた、様相を大きく変えていたのです。


そこで僕が見たものは、テレビを中心にした「空爆型」キャンペーンから、生活者との双方向コミュニケーションを重視した「関係構築型」キャンペーンへ、広告のコンテクストが大きく変わっていく潮流でした。その変化のエンジンとなったのは、言うまでもなくインターネットです。


マーケッターも、クリエイターも、クライアントも、インターネットやブログがもたらした「みんなが発信者社会」の影響を確実に受けていると実感しました。


「従来型のマーケティングは生活者に対して、確実に影響力を失いつつある」そんな悲痛な広告界の声が、6年前と変わらぬ南仏の暖かな日差しのもとで盛んに飛び交っていました。6年前にはまだ確実にパワーを持っていた、20世紀型マーケティングでは「インパクト」こそが最も重視されるべき要素でした。それがわずか6年後には、21世紀型マーケティングとして「生活者との関係構築」が最大のテーマになっていたのです。


地上波ネットワークテレビ局の影響力が圧倒的で、インターネットも携帯電話もまだまだ普及していなかった時代とは、異なる環境に広告業界も突入したのです。そんな中で「古き良き時代のメディア=テレビコマーシャル」は、すこしづつ過去のものになりつつあります。もはや企業から生活者への情報の一方通行は許されず、双方向であることが求められているのです。


今後ますます力を発揮するのは、インターネット広告です。生活者もインターネットを使う時には自然と、双方向なコミュニケーションを企業ととる習慣を持つようになってきました。しかし、現在のインターネット広告は、そのポテンシャルを十分に活かしているとは言えません。まだまだ、広告を置くスペースを決めて、その決められたスペースに対する広告クリエイティブを制作して掲出するという、昔ながらの発想から抜け出ていないのが現実です。


真の「関係性の構築」のためには、単なる広告枠に対する広告クリエイティブではない、お互いのコミュニケーションから生まれる「生活者と企業とのストーリー」をつくっていくことが大切です。そんな「ストーリーテラー」としての役割と「生活者サイドのストーリー」を吸い上げる役割の、両方を兼ね備えた場が、今後のネット広告において大いなる飛躍の可能性を持っているのです。そしてそのチャンスが今一番ある場所。それがブログに他ならないのです。