1313 :「音はすれども姿は見えず」、超指向性パラメトリック・スピーカ | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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製作難易度 ★★

火のないところに煙 を立てる。

 

「秋月電子のパラメトリックSP」 が前から気になっていたが今回キットを購入して実験(経験)してみた。

 

何とこのキットは青王冠イグ・ノーベル賞「音響賞」受賞の栗原氏と塚田氏が発表したSpeech Jammer(スピーチ・ジャマー)でも用いられていることが分かった。

あれはうるさいオシャベリが止まらない人に向けると本人の遅延話声が聞こえてきてしゃべればしゃべるほど本人は頭の中が混乱してきて黙らざるを得ない・・・という究極兵器だ。


 

(パラメトリックSPの概略と構造)

40KHZの超音波キャリア(搬送波)を低周波信号でFM変調したエネルギーを無数の超音波発音体から発して可聴音を得る構造。(実験機では50個の発音体)

 

モスキートーン(17KHZ付近)に見られる中途半端な超高音ではないのでキャリア音が耳で聞こえることはない、但し可聴域から離れた40KHZであってもエネルギーはエネルギー、至近距離で耳を近づけることはやはり危険です。


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絵画のガラス面めがけて照射

 

絵画の額ガラス面にて音圧を測ると確かに60数dB(A)程度発している、音圧計の角度を入射角にあわせて角度をつけると「パッ」と数dB上昇する・・・角度もクリチカル。

この場合「入射角=反射角」、天井に向けたりガラス窓に向けたりしてもなかなか面白い。

 

今回の音表現『聞こえる』が正しく、決して「聴こえる」ではないという事でどんな音なのかお察しください。

 

従来のPAやBGMの音出しスタイルではない方法での音声伝達スタイルが考えられる。

しかしパワーAMPなどでパワーを入れて使うようなSPではなくヘッドホン出力程度で十分、それ以上では簡単にひずむ。

 

(音量を上げるには)

発音体は電力(パワー)を必要としないセラミック型ので「音量を上げるには超音波発音体を増やす以外に方法はない」といわれるが・・・・

 

①発音体をさらに口径の大きな能率の高いものに変える

②ドライバーを強力にして発音体への供給電圧をUPする

③直列共振回路のL(インダクタンス)のQをUPさせることによって、発音体にQ倍の電圧を与える。 

    ※ただし②③ともに「瞬間20Vが限界」である。


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秋月の「パラメトリック・スピーカー・キット」を組み上げ、セットしたところ。



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そのままでも使えるが、トリマーによる共振周波数調整で音圧は約10dB(A)上昇した。

このとき搬送波のベスト周波数は40.16KHZとなった。

(音圧計(CまたはFウェイト)と周波数測定器のない場合、この調整は出来ません)

 

そうか、安易にはSPケーブルは延ばせないな・・・・・

 

 

(どんな感じの音?)

・そう、例えれば「イヤホンを手で囲ったような音」、大きくは聞こえても大きな音にはなり得ない。

 

・音量を上げるとすぐひずみ、低域をカットしてやると歪がやや減りスッキリした音になる。

 

・超音波を周波数変調して可聴音を生成しているので発音体に耳を近づけると「グチャグチャ・ピュルピュル」という変調音?が聞こえるが耳をやや離すと完全に消える。

 

 

(聞き方・聞かせ方)

直接音のサービスエリアは20度以内と、かなり狭い(スポット点を狙うにはやや広い)

 

SPからの直接音と反射音を聞く場合の2通りが考えられるが、音量としては60数dB程度まで、至近距離70dB(A)以上出すとひずむ。

したがってよほど静かな場所でないと音は聞こえてこない。

 

・PA的な大音量を得ることはこれからの課題である、60~70dB(A)で事足りて、500HZ~5kHZの音域を生かせる場面で使用する。

 

・SP(発音体)からの超音波は数10m飛ぶので意外な場所から音を出すことができる、音楽を流しShinさんの自宅マンションから静かな道路を挟んだマンションの壁に当ててみた。(20m程度離れている)

手で持っているSP(発音体)からのモレ音声は手に持っている自分には聞こえず向こうのマンションの壁から音楽がこだまの様に聞こえてくる。

スピーチ音声を飛ばしてみたかったが、ご近所なのですぐバレる、場所を改めて・・・・

 

・演劇の舞台で発音ユニットの数を増やしたSPから目的点に照射すればお客様に気づかれずにセリフを教えるプロンプターマシンとして使えるだろう。

 

・美術館などで絵の前だけに聞こえる説明アナウンス用途(地味だなー)

 

・一般SPの延長で考えるよりも「音声伝達手段」の1つとして考えると楽しいではないか。

 

ノーベル賞 は不可能だがきっと何かの役に立つ。


 

(問題点・要改良点)

現在の秋月のキットでは超音波発音セルも小さく照射面から70dBを超える音を発するのはかなり困難、インピーダンスの高い容量性SPであるので勝手が違う、電力型ではないのでAMPのパワーで音量を稼ぐことはできない。

 

・とりあえずSP基板を複数に増やせばやや音量は稼げるが・・・・

・発音セルの口径を大きな耐許容電圧の高い、能率の高いものにする。

・超音波なので一般のSPでの能率UP手法はほぼ使えない

・直列共振回路のコイル(L)のQ(キュー)=電圧拡大率の高いものに取り替える(手巻きする)ことによって発音セルへの供給電圧を上昇できる。

・何かをいじっても10dB(A)程度簡単に変動するのでポイントを押えれば大音量を得るのはさほど難しいことではなさそうだ。
 

(番外)

30年位前、Shinさんも商品開発のネタとして「2箇所から同一周波数の超音波ビームを出し、キャリアをオーディオ周波でFM変調し、和または差のヘテロダイン(うなり)信号をビームの交点で空間に放出する「見えないスピーカ」というアイデアを出したことがあるが、2箇所のSPでの搬送波の位相関係などウヤムヤなまま夢物語は閉じられたままで年月が経った。

今回のシステムはその原理とよく似ている。


 

 

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