カティンの森 | LIVESTOCK STYLE

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風琴工房詩森ろばのブログです。

わたしとしたことがこのロードショー、
見逃しておりまして、
というか、
やってたということすら知らなくてですね。
岩波ホールは常時チェックしとかなきゃダメですね。
レンタル屋さんに並んでからも
ずっと気になっていたのですが、
ついに、借りまして、ようやく観ました。


ポーランドが世界に誇る、
そしてわたしが最も敬愛する映画監督のうちのひとり
アンジェイ・ワイダ監督の作品です。


わりと最近、
ポーランドの要人たちがひとつ飛行機で墜落し、
全員が死亡した、という痛ましい事故がありました。
それはカティンの森での慰霊式からの帰途であったそうで、
その事故によってカティンの名を初めて耳にした方も
多いのではないでしょうか。



「カティンの森」は、
ロシアのグニェズドヴォというところの近くの森で
推定一万人以上と言われるポーランド人将校たちが
殺され、放置された場所です。
ロシアが行ったのですが、
戦後、ドイツの所業ということにされました。
ロシアの衛星国となったポーランドでは、
長くカティンについて語ることは禁止されていました。
映画「カティンの森」は
ご自身の父を「カティンの森事件」で亡くしたワイダ監督が
長い長い構想と準備を経て、
戦後70年以上を経て映画化されました。
ようやく、真実を映画で語ることができるようになったのです。



この映画が、
映画をぜひご覧になってください、
と言うしかない、
素晴らしい映画でした。
練りに練られたテキスト、
完璧な光、
残虐なシーンをここまでリアルに撮りながら
美しいとさえ思わせる映像、
そしてそれに応える俳優たちの
果敢で寡黙ななのにどこまでも雄弁な演技。


ワイダ監督の映画は
とても比喩的で、
ファンタジックで難解と思っておりましたが、
この映画を見て、
あのように暗喩的に撮るしか方法はなかったのだ、
と、ポーランドの長い戦後について
改めて気づきました。
「カティンの森」はそれほどに
直裁でシンプルです。
ようやくこのように語ることができる。
わたしの見方はなんと浅はかだったことでしょうか。
「灰とダイヤモンド」
「ブリキの太鼓」
ワイダ監督の作品を見返したいとおもいます。



DVDの表面には、
乱暴に「社会派」と書かれていました。
この映画が「社会派」であるなら
わたしは「社会派」でありたいと思いました。



若々しい怒りに満ちた「レバノン」
年を経ることで深く、より深く描き出した「カティンの森」
この年末年始に
このような演劇を作りたい、
と思える映画2本に巡り会えたことは幸福なことです。
わたしは、
今在る日本のどの演劇とも違う演劇を作っていきます。



そう願います。