討論
この夏、以前から気になっていた戸部良一他著『失敗の本質 -日本軍の組織論的研究-』を読みました。
- 失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)/戸部 良一
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同書は、太平洋戦争(同書では戦場が太平洋に限定されていないことから「大東亜戦争」としています)における日本軍の失敗例をケース・スタディ、特に反面教師とした組織論の本です。
意図せず終戦(敗戦?)記念日直前に購入し、奇しくも終戦記念日に読了しました。
太平洋戦争史としても十分に読むことができました。
終戦記念日のテレビの特別番組と合わせて、少し詳しく太平洋戦争を知ることもできました。
さらにこの本から、太平洋戦争史以外に、教育に関する2つのヒントを知ることができました。
まず1つめは、教育の方法論に関するヒントです。
同書には次のようにあります。
「学習理論の観点から見れば、日本軍の組織学習は、目標と問題構造を所与ないし一定としたうえで、最適解を選び出すという学習プロセス」、つまり『シングル・ループ学習(sigle loop learning)』でした。
しかし、本来の学習とは、「必要に応じて目標や問題の基本構造そのものを再定義し変革するという、よりダイナミックなプロセス」であるべきで、「既存の知識を捨てる学習棄却(unlearning)、つまり自己否定的学習」である『ダブル・ループ学習(double loop learning)』の方が重要となります。
米軍の教育はこの学習理論に基づいています。
さらに、その教育の手順として、米軍海兵隊学校では「教官と学生が一体となって自由討論のなかから積み上げていった」といいます。
つまり、教官(教員)と学生間、そして学生内のinteractiveなディスカッションをベースにした「双方向型授業」そのものです
組織論の本ですが、読み方によっては教育論の参考書としても読むことができるのです。
【つづく】