検証 | 理学療法士養成校教員 下井ゼミ研究ノート

検証

以前、福澤諭吉先生の「心訓」(本当は福澤先生の言葉ではない)を思い出してから、清水義範著『福沢諭吉は謎だらけ。心訓小説』(小学館、2006)を読んだことを、このブログ でも書きました


小学校卒業時に記念品として『福翁自伝』をもらって読んで以来、福澤先生についての本を読んでいなかったこと、そして福澤先生については母校の創始者以外にあまり知らないことに気がつきました。


そんなときに本屋の平積みで見つけたのが、北康利著『福沢諭吉 -国を支えて国を頼らず-』(講談社文庫、2010)でした。


新・下井ゼミ研究ノート-福沢諭吉_上

新・下井ゼミ研究ノート-福沢諭吉_下


同書の裏表紙にあった「日本を代表する偉人・福沢諭吉。しかし、一万円札の人、慶応の創始者、『学問のすゝめ』の著者以外、あまり知られていないのではないだろうか…。」という一文に同感し、即買しました。ニコニコ


巻末にある参考資料の量、そして多くの関係者への調査から、福澤先生の入門書として良書だと思います。


この本を読んで、考えたことはいろいろあるのですが、一番感じたことは、現代ビジネスにも応用できる対人関係の基礎が福澤先生の行動に、集約されているということでした。

福澤先生の上下隔たりない他人に対する細かい配慮や心配り。そして、そうした配慮をベースにした莫大な人脈の形成。多くのビジネス書に書かれているtipsを福澤先生自身が実践しているため、説得力大きく押し寄せてきます。

そういう意味では、ビジネス書を多く読んでいる方にもお勧めです。にひひ


また、著者は明治元年で福澤先生の66年間の生涯を半分に分けて考察しています。

「欧米の学問」を貪欲に吸収し、慶応義塾を創設するのがその前半。そして、国民国家建設のために塾の卒業生と行動していくのが後半です。

個人的な趣向でいえば、近代日本を支える人材の輩出・登用といった教育者としての人事を主とする福澤先生の人生の後半よりも、慶応義塾を興すまでの前半の方が好きです。

アメリカに渡る船に乗るのを画策したり。緒方洪庵の適塾で、明りを求めて本を読む場所をいろいろと求めたり、外国書に喰らいついて行ったり。自らが能動的に学びの主体となって、しかも「やんちゃ」に行動しているのが大好きです。にひひ

でも、福澤先生の一番好きなやんちゃエピソードと言えば、家の近くのお社の中にあるお札を石ととりかえる件です。

家の近所の小さな社のお札を石に取り換えて、それをありがたがって拝む人を見てみたり、そうした罰が当たる行為をした自分にもなにもおこらないことを実際に検証する、いわゆる「仮説検証過程」を、しかもそれまでのタブーに逆らいながら、幼少のころから実践していることに驚愕します。ショック!


やっぱり、「やんちゃ」が一番、と勝手に解釈したのは言うまでもありません。べーっだ!