既存メディアは、事前協議の結果を「事なかれ主義」で終結させるつもりなのか。
安倍政権は、TPP交渉で国民の知る権利を奪って情報統制を行うつもりなのか。

ニュージーランド、オーストラリア、カナダが日本のTPP交渉に参加するための承認において、日本と条件闘争を繰り広げていたが一転して承認となった。

この結果に対して、どのような内容となったのか、どのような合意となったのかを政府は国民に語ろうとせず、既存メディアも政府を追及しようとしない。

国民は、TPP交渉の事前協議の内容について甘利TPP担当大臣から「いろんなことはあったが相手のある話なので」と聞かされてどう考えるだろうか。

間違いなく、日本に不利な合意からTPP交渉参加の承認を得たと考えるだろう。

この結果を招いたのは、日米事前協議で日本が全面的に譲歩したことに起因する。
日米事前協議で日本が米国に完全に敗北したことは下記で紛れもない事実なのだ。

参考記事:日米事前協議は自動車と保険以外に非関税も譲歩が必要、TPP前哨戦は米国に完全敗北

つまり、下記で合意事項をまとめても日本は米国の要求を呑んだだけなのである。

●日米事前協議での合意内容の意訳
(1)日本車の輸入関税はTPP交渉の全製品の関税撤廃に猶予される最長期間より、さらに延長した時期から段階的に関税を廃止していくことで合意。
(2)日本は、日本に輸入する米国車で簡易許可手続きによる輸入台数を、車種ごと年2000台から、車種ごとに年5000台まで認めることで合意。
(3)日本は、日本郵政の保険で平等競争や非公営と日本政府が判断するまで新規と既存のがん保険、あるいは単独の医療保険を許可しないことで合意。

つまり、日本車の関税は米国が許可するまで引き下げない、米国車の簡易許可手続きは段階的に無制限で増加する、日本郵政の保険は米国の許可するまで事業拡大できないことを回りくどく説明しただけである。

おそらく、これこそ米国と日本の交渉力の圧倒的な差を見せ付けた文章であろう。

さらにこれ以外、今後の2国間協議で米国から自動車の要求と非関税障壁9項目の要求がされており、日本が米国からさらなる譲歩を強いられる可能性が高い。

しかも、この合意文書の内容に日本が国益で守るべきとした自民党の公約である「TPP交渉参加の6つの判断基準」の文言は一切出てこないのである。

●自民党の政権公約「TPP交渉参加の判断基準」
(1)政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

それどころか、日本の要求は米国に何一つ受け入れられていない結果なのである。
この結果から、国民から一斉に「売国奴」の批判が上がったのは言うまでもない。

おそらく、日米事前協議の合意を受けて日本のTPP交渉参加で承認を得るために、NZ、豪州、加国との事前協議にて再び日本が完全敗北したとなれば、国民から安倍政権への倒閣運動が発動されたことだろう。

しかも、安倍政権の倒閣運動の発動もつい先日まで確定的な情勢だったのである。

16日までニュージーランドは日本の関税撤廃の例外を一切認めない方針だった。

参考記事:TPP前哨戦の第2ラウンドもNZに完全敗北か、米国の自動車と保険の次はNZの農業

18日まで加国・豪州・NZの3カ国は日本の全品目を交渉対象と要求していた。

参考記事:TPP交渉で日本がサンドバック状態、NZ・豪・加は例外なしを米国は7月参加を要求

しかし19日以降、安倍政権と既存メディアが交渉内容を情報封鎖してしまった。

参考記事:TPP交渉参加の承認でカナダに譲歩、既存メディアは安倍政権のリーク報道で情報封殺

加国・豪州・NZとの事前協議の内容も合意も明らかにせず、既存メディアが報道されたことは日本のTPP交渉の参加が正式承認されたことだけである。

断片的に出たことは、カナダと自動車の要求で2国間協議を行うことだけである。
しかし、TPP交渉の担当大臣が現状を報告しないとはどういう了見なのだろう。

[4月21日 東京新聞]TPP交渉参加決定 立場不利 迫る期限
日本の環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加が二十日、正式に決まった。インドネシアで同日まで開かれたTPP閣僚会合で、米国やカナダなど交渉参加十一カ国が日本の交渉入りで合意した。今後、九十日間かかる米国の議会承認手続きが終われば、七月下旬に開かれる見通しのTPP交渉会合から日本が初めて合流できることになった。十一カ国は声明を発表、「日本の合流により、TPPの経済的重要性が高まる」と指摘した。

ただ日本側は遅れて参加する新規交渉参加国であり、これまでの交渉の詳細文書が見られないほか、先行参加国が合意した項目は原則として再協議できないなど、不利な立場は変わらない。各国は十月の基本合意を目指しており、交渉時間も限られている。国内の産業と国民生活を守りながら、各国の利害がせめぎ合う通商交渉を有利に進められるかが、今後の課題となる。米国との事前協議では、米国が課す自動車関税の当面の維持を日本側が認める譲歩を強いられた上で十二日、米国に日本の参加が認められた。だが、その後、豪州やニュージーランド、カナダなどが農産物で関税撤廃の例外を設けないことなどを要求し、日本との間で交渉が続いていた。

十九日にインドネシアで開かれた参加十一カ国によるTPP閣僚会合では、カナダが最後まで異論を唱え、日本の交渉参加の決定がずれ込んだ。自動車関税の扱いなどをめぐり条件闘争が続いたとみられる。帰国後、都内で記者団の取材に応じた甘利明TPP担当相は、カナダなど難色を示した国との間でどのような交渉や合意があったかについては「いろんなことはあったが相手のある話なので」として明らかにしなかった。

ニュージーランド、オーストラリア、カナダの交渉や合意の内容について国民は「いろんなことはあったが相手のある話なので」だけで許されるのだろうか。

TPP交渉に参加することよりも重要なことは、各国との事前協議の合意内容から日本がTPP交渉でどのような制約を受けるのかということである。

既に米国とはTPP交渉に参加する前に、日本車の関税維持、米国車の輸入緩和、かんぽ事業の拡大禁止に同意したことから、制約を受けているのである。

さらに、日本と同じTPP交渉に後発参加したカナダとメキシコは、決定事項の再交渉も交渉妥結の拒否もできないという制約を受けているのである。

日本もTPP交渉の後発参加国として再交渉権も拒否権も剥奪されたのだろうか。

少なくとも甘利TPP担当大臣は、加国・豪州・NZの3カ国との交渉と合意内容、TPP交渉で再交渉権と拒否権の有無について国民に説明すべきだろう。

少なくとも既存メディアは、加国・豪州・NZの3カ国との交渉と合意内容、TPP交渉で再交渉権と拒否権の有無について安倍政権を追及すべきだろう。

このまま事実を隠蔽してTPP交渉に踏み出せば、「神風特攻」そのものである。

参考記事:TPP交渉はこれから本番と大手紙が一斉擁護、前哨戦の日米協議を省みず神風特攻せよ

既存メディアのプロパガンダ化の意味は、嘘つき野田総理を見れば明らかである。

既存メディア、官僚、財界、全ての既得権が応援することにより、野田総理は消費税増税法案を成立させるまで任期を全うできたが、その後に全責任を押し付けられて「嘘つき総理」としてお払い箱となったのである。

おそらく安倍総理もTPP交渉参加において同じ運命を辿る可能性が非常に高い。

既存メディア、官僚、財界、全ての既得権が応援することにより、安倍総理はTPP交渉を妥結させるまで任期を全うできるだろうが、その後に全責任を押し付けられて「売国総理」としてお払い箱となるのだろう。

このままでは、2度目の登板でも任期1年の短命政権で終わってしまうのである。
現状でさえ、日本の売国協定となることが必至なTPPは早期撤退すべきである。



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