黒いシミ
花粉の季節になると、思い出す曲がある
「黒いシミ」
春の情景をつづった歌だ。
おれの住んでいた下町は、当時とても荒廃していた。
学校では校内暴力、街は貧困と無気力と不潔感に常に包まれていた。
街には、家を持たない日雇労働者のおじさんが沢山いて、その多くが路上で寝泊まりをしていた。
冬場の朝になると、そうゆうおじさん達が、道端でそのまま凍死したりしていた。
土曜日のまっ昼間から、下半身をあらわにした壊れたおじさんが、商店街をフラフラ歩いていたりもしてた。
とにかくめちゃくちゃだった。みんな貧乏だったし、ひたすら生活に追われているように見えた。
そうゆう、どうにもならない空気が、
街にも、そして人の心のなかにもこびりついていて
閉塞的なため息が、毎日をずっと支配していた。
すぐ近くに河が流れていた。
絵の具を全部混ぜたような、深い色の汚れた川だった。
きっと当時は、規制も何もないのをいいことに、近辺の工場なんかがいろんなものを垂れ流しにしていたんだと思う。
風がこちら側に向かって吹きあがると、すえたようなひどい臭いが街中を包んだ。
そんなとき、母親は洗濯物を全部しまえと、イライラしながらよく怒鳴っていた。
ある春の日、付き合って間もない彼女が
「スガ君の育った町がみたい」と言った。
おれは気乗りしないので、ほかの提案をしたのだが、
結局つよく断る理由もなく
地下鉄に乗って、彼女と自分の街を目指した。
「風向きが逆でありますように・・・」
車中、彼女の話もきかず、そんなことばかり考えていた。
「黒いシミ」は、そんな春の日のことを歌った曲だ。
黒いシミに、二つの意味を持たせた。
一つは、地面に付着している、よくわからない汚れた油のシミ。
そしてもう一つは、その街に住むおれたちの心に、霧のようにぼんやりとかかった
閉塞感と無気力感。
春の季節に、ぜひ聞いてみてください。
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