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リーガル・ハイの感想と解説です(第2話はこちら )。
堺雅人が演じる絶対負けない弁護士古美門研介のキャラ、新垣結衣演じるキュートでかわいい黛弁護士など非常に面白いですね。大好きなドラマです。
今回の話題は著作権であり、冴えない従業員である田向学が考案したキャラクターによって、町の文房具屋さんであるあじさい文具が世界的な企業となったのに、田向学に相当の対価が支払われていなかったため、田向学があじさい文具に対して25億円もの請求をするという話でした。
著作権や特許権を総称して知的財産権といいますが、企業法務 の観点からも知的財産権の保護は、今後ますます重要性を増していくことが予想されます。
リーガル・ハイ2第5話では、会社と従業員の間の紛争でしたが、知的財産権を巡っては、会社と会社の紛争が問題となることも多いです。とくに、日本の技術流出を防止するという観点からは、外国企業が日本企業の知的財産権を無断で使用することへの対策が重要となります(こういった事態を予防するためにも契約書が重要となります。詳しくはこちら をご参照下さい。)。
今回の事案では、訴訟の内容よりも黛弁護士(新垣結衣)の父親(國村隼)にスポットが充てられていたため、構成等について不明な点が多かったですが、解説をしたいと思います。
まず、著作権とは、言語、図形等の表現形式によって自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利をいいます。ここでのポイントは創作性・表現性となります。
リーガル・ハイ第5話では、途中でパートの方が出てきて家の前の犬を書いた絵を見せていましたが、これは「おやじいぬ」が田向学の創作である点について争うための証拠でした。この点については、古美門(堺雅人)の証人尋問が非常に冴えており、証人に16年前に描いたという証言を引き出してから、区役所の記録という客観的証拠と矛盾することを指摘するという、反対尋問の手本のような尋問技術が披露 されていました(第2話はこちら 。)。このようにキレイな尋問がきまることは実際の訴訟では稀なことであり、このような尋問をしてみたいものです。
そして、著作権のポイントは、原則として、創作の時点で自動的に創作者に発生するということです(著作権法17条1項)。その他の知的財産権は、特許権にしろ、商標権にしろ権利の発生に登録が必要となるのですが、著作権は登録等の行為を必要とせずに発生します。
もっとも、著作権を譲渡することは可能です。例えば、プログラム等も著作権が発生するのですが、多くの場合はプログラム開発契約 において、ユーザー(発注者)がベンダー(受注者、プログラマー)から権利の譲渡を受ける条項を設け、ベンダーがプログラムすることにより発生した著作権を発生と同時にユーザーに譲渡するような建てつけになっております。
逆にいうと、このような権利譲渡の契約 がない限り、著作権は著作者に帰属していることになります。あじさい文具に対する請求の根拠は明らかでないものの、田向学が著作して発生していた権利について、あじさい文具は権利の譲渡を受けることなく無断で使用していたとして著作権侵害に基づく請求をしていたと考えることができます。
著作権の侵害については、損害額の推定規定が置かれており(著作権法114条1項)、著作権の侵害によって具体的な損害が発生したかについての立証が緩和されております。
他方で、著作権については、特許権と同様に職務発明の規定が置かれております(著作権法15条)。
職務発明というと、青色発光ダイオードの事案で耳にしたことがある方もいるかもしれませんが、会社の従業員が職務上発明した特許については、そのような発明を行うことが出来たのも会社から研究開発費等の投資を受けたからであり、従業員個人に権利が帰属するとしてしまうと、会社は開発に要した投資を回収できないため、発明した従業員の権利と開発のために投資をした会社の権利の調和を図るための規定です。具体的には、会社は当該発明を使用することができるかわりに、発明をした従業員に相当の対価を支払う(特許権の場合)という規定です。
相当の対価という概念は非常にあいまいであるため、社内規定に基づいて相当の対価を支払ったとしても従業員から訴訟を起こされるリスクがあります。現在の特許法においては、社内規定が不合理である場合にのみ裁判所が相当の対価を決定するとされています(特許法35条4項)。
青色発光ダイオード事件では、東京地裁が約200億円の対価を命じる判決をおこなったことが話題となりました(東京地判平成16年1月30日、ただし東京高裁において約6億円の支払いを内容とする和解が成立。)。
上記と異なり、著作権の場合は職務発明の規定により、著作権、著作者人格権が法人その他使用者に帰属することとなるため、田向学が自己の著作権を侵害されたという主張に対して、職務発明により著作権等があじさい文房具に帰属しているので著作権侵害は存在しないという抗弁となります。
ところで、田向学がおやじいぬを考案したのは16年前のことです。
そして、社長は8年前に相当な対価を支払うことを忘年会の席上で発言していました。
この点については、解説が必要かと思います。
つまり、被告(会社側)は、原告の請求権も債権であり、民法167条1項により10年又は民法724条により3年の時効にかかるとされているため、16年前のおやじいぬの考案に係る権利は時効消滅したという主張をしたと考えられます。
著作権侵害の場合、過去3年間については不法行為に基づく損害賠償請求権、それより以前の過去10年前までの7年間については不当利得請求権が認められます。(他方で特許権の場合の相当対価請求権の時効の起算点については、対価支払時期が社内規定で定められている場合は当該支払時期から(最高裁平成15年4月22日判決)、支払時期が規定されていない場合には特許を受ける権利を使用者等に承継させたとき(大阪高判平成6年5月27日)と解されております。)。
これに対し、古美門(堺雅人)ひきいる原告としては、8年前に社長が自ら相当な対価を支払わなければならないことを承認しており、その時点で時効が中断したため(民法147号3号)、消滅時効は未だ完成していないという主張を行っていたものと思われます。忘年会の発言はプライベートか、社長の発言は重いものかという点が証人尋問されていましたが、この点は当該社長の発言が承認として有効なものかどうかに関わる争点と思われます。
このように、本件では色々な争点があるのですが、それらについて詳しい詳細や、訴訟の結果については明示的には分かりません。
ドラマであるため、最終的にはあやふやな結論で後味が良くまとめられていましたが、実際の企業法務 においては知的財産権の帰属や侵害は企業生命を脅かす重大な問題です。企業法務では事業に応じて様々なリスク と戦うことになります。
知的財産権についての法務戦略という観点からも、企業の経営者様は不安があれば企業法務に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
以下の記事もご参照下さい。
リーガル・ハイ2第2話逆切れ天才実業家(名誉毀損・本人訴訟)
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