図書館総合展2013 その5:フォーラム「まちづくりと文化施設の役割」 | しゃっぴいおばさんのブログ

図書館総合展2013 その5:フォーラム「まちづくりと文化施設の役割」

キハラ㈱創業100周年記念「まちづくりと文化施設の役割」のフォーラムは、10月30日の午前中に開催されました。

新しい歌舞伎座の建築を設計された世界的建築家の隈研吾氏と、まちづくり演出家の花井裕一郎氏が講師でした。


小布施町の元館長である花井さんのお話は何度か聴いていますし、お会いしたこともあるのですが、隈氏の話は初めてです。

随所に新鮮な視点があり、いつもは冷静な司会者であるARGの岡本さんも思わず聴き入っていたのがとても印象的でした。


映像演出家だった花井さんが作った、日本で一番チャーミングな図書館「まちとしょテラソ」については、花井さんの本で紹介されています。是非読んでみてください。

タイトル: はなぼん

著者: 花井裕一郎

編集・発行: 文屋

ISBN: 978-4-9905552-7-6

定価: 1575円


今日は、とても新鮮だった隈氏の話をお伝えします。

以前図書館建築を手掛ける方から、建築コンペの話があると、まずその町に出かけ山の位置や風の向きなどの自然風景を確認するという話を聞いたことがあります。

図書館にせよどんな建物も、建物だけで成り立っているのではなく、周りの環境と一体化して初めて意味があると聴き、とても新鮮だったことを覚えています。


隈氏の話は、「日本の集落は全て里山を中心に成り立っている。人は里山の恵の中で生きている。だからこそ里山の近くに自然を崇める神社を必ずつくり、少し離れたところに集落をつくる、日本の集落はこの基本でできている」と始まり、冒頭からしっかり引きつけられたのは私だけではなかったようです。

高度成長時代に作られたハコモノは郊外にどんどん作られ、町を孤立化していきました。

氏が作る建物は、ハコの逆転の発想です。

役所の施設でさえ「家」を意識して作られているとのことでした。


昔の家には、土間がありました。土間はフォーマルな玄関とは違い、だれでも気軽に入ってこれる半外部空間です。

こんな空間を市庁舎にも取り入れて設計したのが長岡市役所です。

町中に作ったので、当然大きな空間は望めません。町中を「小さなハコ」の集合体と考え、完全無欠の「大きなハコ」を作るんではなく、少しづつ世の中に合わせて解決をしていこうという発想で、「ダマシダマシ型」発想と呼んでました。

何だかスペインの聖家族教会みたいですね。

駐車場も庁舎には十分なスペースは確保されていません。

だからこそ、市民は小さな駐車場を見つけて街の隙間を使いこなし、市役所を分散させることで街自体が活性化していくのだそうです。

代りに市役所の真ん中に「ナカドマ」なる広場を設け、市民が寄り合える場を実現しました。


どの建築も素材にとてもこだわっていて、木それも地元の木がふんだんに使われています。かといって民芸調のどこでもある感じかと言えば、斬新でシャープでそれでいてとても落ち着く空間です

和紙も現代の技術を駆使して破れない頑丈なものに生まれ変わります。

幾つか氏が手掛けられた建築の紹介があり、その中に大宰府天満宮の近くにあるスタバがありました。

その光景に唖然!

来年の3月に有志で九州へ行く話が出ているのですが、実現する時は、このスタバはコースに入れなきゃと思った次第です。


「建築物は作ったらおしまいというわけではなく、ダマシダマシでその時代の人が使いやすいように手を入れていって建築物は生きるし、石や木の素材の変化もまたあってしかるべし」と、目からうろこの発言も最後に聴け、図書館に限らないまちづくりの話が聴けて、とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。


私が聴いたフォーラムはここまでですが、他に知人から感想が届いたらブログでも紹介します。今年行けなかった方も、来年は工面して行ってみてください。

新しい発見と新しい出会いがきっと待っています。