Silver 'n Percussion/Horace Silver | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 それにしても痛快だったのは、頭の固いJazzファンから見向きもされずに酷評され続けてきた70年代のHorace Silverの作品が、Hip Hop以降一転してDJやクラブ関係者、Musicianから高い評価を受け、ようやく不当な扱いから抜け出し、普遍的な傑作でありながら結果的には時代の先を走っていたと認識されたことだ。それは単なる断片的なフレーズのカッコ良さのみならず、フロアでSilverの70年代の作品が鳴り響いた時の何ともいえない身体中で感じる気持ち良さを経験した人間であれば、わかってもらえるだろう。自分のようにリアルタイムで体験できなかった人間が、そうやってSilverの過小評価されていた時期の音楽を知り、Hip Hop以降のParadigm Shiftにより、ようやく時代がHorace Silverに追いついた感があったのは嬉しかった。勿論、全盛期と言われる50年代~60年代前半のSilverの作品が素晴らしいのはわかっていた。60年代後半のSilverの作品も手に入れられるようになってくると、その時代も質が高い作品を連発していたこともわかった。しかし70年代~80年代の作品を手に入れることは簡単ではなかった。なんとか手に入れてみると70年代の作品のカッコ良さにぶっ飛んだものだ。そして80年代のSilveto時代のSilverの作品も、決して悪くないのだ。69年にリリースされた『You Gotta Take a Little Love』以降にSilverが全面的に打ち出してきたメッセージが説教くさい、宗教的だとしてバッシングを受ける。確かにジャケットも含めてやりすぎの感はあるが、人種差別の激しかった米国において、おそらく理想主義者でRomantistであったSilverが、そういう自分の主張を強めたのはわからないでもない。特定宗教に入信して、それをアピールしているわけではない。ところが一部の評論家/ジャーナリストがレッテルを貼ったがために胡散臭い存在とされ、長い間冷遇されてしまう。また、Percussionや電気楽器、Vocalが入っていたりフォービートを刻んでいないという理由でJazzと認めない古いタイプのJazzファンには、この時期のSilverのサウンドは受け入れがたかったのだろう。人種や民族、国境、世代やジャンルを超越してFunk民族音楽を積極的に取り入れながら抜群のセンスで腰を動かす音楽を生み出すSilverは米国音楽界屈指のComposerでありStylistであり続けてきたのだ。

 『Silver 'n Percussion』はHorace Silver77年Blue Noteからリリースしたアルバム。Silver 'Nシリーズ第4弾はPercussionを前面に出してアフリカ大陸に住む部族とアメリカ大陸に住むNative Indianに捧げられた。そういえば68年作『Serenade To Soul Sister』でも“Rain Dance”というIndianに捧げるナンバーがあったのを思い出す。
Silver 'Nシリーズ第1弾から参加しているRon CarterAl Fosterとのリズム隊にNigeriaの打楽器奏者Babatunde Olatunji。これまたシリーズ当初から参加したTrumpet奏者Tom Harrellに本作から加わったセンス抜群のTenor奏者Larry Schneiderのコンビは、大好きなBill Evansの79年作『We Will Meet Again』でも優美な2管を聴かせてくれている。
アルバム1発目は5拍子の“African Ascension Part 1: The Gods Of Yoruba”。ModalなChord進行の中でFunkyにキメるSchneiderのTenorソロも最高だが、Silverのソロでの♭13thの粋な使い方に脱帽。9thと♭13thが作りだす増4度(Tritone)の妖しい響きがたまらない。
6/8拍子Percussionの洪水の中をHornとChorus隊が軽快にThemeを歌い上げる“African Ascension Part 2: The Sun God Of The Masai”。
何とも怪しげな男性Chorusで始まる“African Ascension Part 3: The Spirit Of The Zulu”。Schneider、Hurrell、Silverのソロもノリノリだ。そしてベース・ソロもあるRon Carterのうねりまくるベースも素晴らしい。
The Great American Indian Uprising Part 1: The Idols Of The Incas”ではSilverらしい異国情緒に溢れる曲調、ピアノも聴きもの。なぜか日本の陰旋法が顔を見せるところが興味深い。
やはり冒頭からの男性Chorus隊のインパクトが強い“The Great American Indian Uprising Part 2”。鮮烈なHurrellのソロに続いてSilverがOutをかませながら最後に“Mr. P.C.”のフレーズを引用するのが微笑ましい。
最後を飾るのは9拍子高揚感に満ちた名曲“The Aztec Sun God The Great American Indian Uprising Part 3: The Mohican And The Great Spirit”。
(Hit-C Fiore)