Orgue Vol.2/Eddy Louiss | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 Eddy LouissLes Double Six(Double Six of Paris)のメンバーだったと知った時は驚いた。鍵盤だけでなくVibraphoneやTrumpetを演奏するMulti-Instrumentalistだとは知っていたがVocalまでこなしていたとは。この人もまた、ジャンルの壁を楽々と超越してしまうVersatileな才能に溢れた人なのだ。LouissはMichel PetruccianiとのDuoなどで、日本でも一般的な認知度が上がったとはいえ、その実力と実績を考えると、まだまだ知名度も評価も低すぎるMusician。なんと70年に我が国で開催された大阪万博に、European Jazz All Starsの一員として来日している才人だ。Down Beatの各部門でPoll Winnerを獲得した欧州のMusician達が勢ぞろいした、あの伝説の来日公演。Niels-Henning Ørsted PedersenDaniel HumairJohn Surman、Albert Mangelsdorff、そしてJean-Luc PontyFrancy Boland、さらにはKarin Krogといった豪華メンバーの演奏が日本で聴けたのだ(その演奏を観れた人が本当に羨ましい)。その時にLouissがSurmanやHumairと録音したソロアルバムが、70作の『Our Kind of SABI』だ。Jazzの大御所にも重用されたLouissは、自身のソロとなると、EthnicだったりFunkyだったり独自性を発揮するけれど、その根底にあるのは、いかにもフランス人らしいEspritだ。個人的には77年の激Funkyな『Histoire Sans Paroles』や71年Stan Getzの『Dynasty』でのLouissのプレイが興味深い。FunkyなHammond弾き倒しもできる人だけれど、洒脱な持ち味を失うことはない。同じFunkyでも、Jimmy SmithBrother Jack McDuffが奏でる米国のコテコテの真っ黒いFunkyなオルガン(これも大好き)とは一味違う、どこかParisの香りが漂う粋な演奏が持ち味だ。そういや、フランスTrumpet奏者Ivan JullienBig Jullien & His All Star名義でリリースした『Riviera Sound No. 1』 でも実にカッコイイオルガンを弾いていた。


 『Orgue Vol.2』は72年America Recordsからリリースされた。ドラムスには当時Parisに移住し欧州Jazz界に大きな影響を残していたKenny Clarke師匠。ギターには米国からフランスに移り住んだ名手Jimmy Gourley。Louissといえば、当然Bopを通過しながらも黒さに走るのではではなく、テクニカルなんだけど洗練されたフレージングに、フランス独特の小粋な感覚を感じさせる。とはいっても、小さくまとまっていない、大らかさも同居しているところが好きだ。幼少時からアカデミックな音楽教育をConservatoireで叩き込まれたであろう和声感覚。加えて、Martinique島出身のCaribbeanの影響を感じさせる天真爛漫さと、Jazzの世界でしっかり揉まれたHard Bop魂を持つLouiss。バス・ドラでオフ・ビートを叩き出す徹底的にBopなドラマーKenny Clarkeと、流麗なギターを弾くGourleyと組んで作り出すParisの香りが漂うJazz。実に美味である。

アルバムのオープナーはOscar Pettifordの“Bohemia After Dark”。切れ味鋭いフレーズを繰り出すLouiss。Gourleyも負けじと流れ出すようなフレーズで応戦。スリリングな技の応酬が良い。

Gourleyの優美なギターで始まり、雰囲気たっぷりに演奏される“I Should Care”。実はLouissの本質は、ここにあるのではないかという、実に歌心あふれるフレージング。ムードたっぷり、しかし、Elegantなのである。

Dizzy Gillespieの“Ow”での小粋な絡み合いが素晴らしい。

このアルバムで一番お気に入りの“Getting Sentimental Over You”。ここでのParisのRomanticな風景が浮かんでくるような、詩情に満ちた、それでいた抑制された美しさが際立つ演奏は、欧州のJazzでなければ出せない。

◎Louissも在籍していたというLes Double Six

Tickle ToeDouble Six of Paris

◎フィギア・スケートでおなじみの、この曲はLouissの87年作『Sang Mele』収録

Blues For Klook/Eddy Louiss

(Hit-C Fiore)