Live Again/Georges Arvanitas Trio | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 フランスのピアニストには大好きなMartial Solal爺やMaurice Vanderといった超絶技巧の持ち主がいる。彼らはPowellのBop魂を継承しながらも、アメリカ人には出せない独特の香りを感じさせてくれる。それはフランス人でしか出せないものなのだ。Georges Arvanitasもまた、そういうピアニストの一人である。ギリシャ系のArvanitasは50年代にフランスで活躍して欧州を訪れたDoug WatkinsArt TaylorとのTrioで評判になった。その後アメリカに渡り、Ted CursonYusef Latifとも音盤を残している。フランスに帰国後も、60年代末からの自らのTrioでヨーロッのJazzの良心ともいうべきElegantで思索的な作品を残してくれた。とにかくGeorges ArvanitasがJacky SamsonCharles Saudraisと組んだ黄金のPiano Trioは格別の味わいがある。中でも『In Concert』は生き生きとしたTrioのダイナミックな躍動感に一気に惹きこまれてしまう。SoralやVander同様に、彼のタッチもまた強力であり、洗練されたものである。さらに切れ味鋭いブロック・コードや歌心のあるフレージングがドラムやベースと絡んで織り成すPiano Trioならではのスリリングな演奏は自分にとって大好物である。ヨーロッパのMusicianに多く見られる考えすぎなプレイもあるけれど、頭でっかちに終わらず、Trioのある種Punkishなまでの押しの迫力で一気に聴かせてしまう肉体的なところも好きだ。


 『Live Again』は73年の録音。なんと、このアルバムではエレピを弾いている曲もある。その辺がJazzがさまざま行き先を求めながら混迷していた70年代らしい雰囲気を感じさせてくれる。ジャケットもいかにも。とにかく、このTrioの音源は最高で、『In Concert』という最高傑作以外にもTrioで名作を残しており、他にゲストを迎えたフォーマットでも興味深い作品が多い。71年のTed Cursonとの名作『Pop Wine』は最高だ。そして、ギター入りでArvanitasがオルガンを弾いた『Orgue Hammond』もそうだが、Arvanitasが、わりと色々な作風に手を出しても必ず見事なまでにおフランスな雰囲気を感じさせてくれる。本作でも2曲のエレピ曲といい、この時代らしいFreeで実験的な作風にも挑戦しているArvanitasではあるが、実にフランス的な優雅さが全編に漂う。本作が録音された73年と言えば最高にカッコイイModalチューン“No Matter How”収録のDexter GordonSonny Greyを迎え入れた『Parisian Concert』や、渡仏したマルチ管楽器奏者のChris Woodの魅力をひき出した『Chris meets Paris』といい、このPiano Trioは絶頂期だったのではないだろうか。本作でも、正に脂の乗り切ったトリオの演奏が楽しめる。スリリングな丁々発止は絶品である。

アルバムのオープナー“In Your Own Sweet Way”はDave Brubeckの名曲で多くのピアニストの名演を生んでいる。イタリアのGuido Manusardi81年作『Immagini Visive』でもテクニカルなピアノが印象的であったが、それにも勝るとも劣らないArvanistasのテクニシャンぶりが素晴らしい。そしてMaurice Vanderにも負けない強烈な左手の目の醒めるようなコード・ワークやEspritを感じさせる粋で繊細なフレージングに70年代のヨーロッパのジャズの充実ぶりを感じる。

Sing Sing”や“Electric”そしてフリーな大作“Indian”はArvanitasのオリジナル。彼の場合は、やはりヨーロッパ的な知的で、時には考えすぎ的な部分が顔を出すことはあっても、それがTrioの演奏となると、3人が緊張感を持って絡みあうことによって、冗長に流れすぎないところが良い。

Lover Man”や“Stella by Starlight”といったスタンダードは、やはり素晴らしいピアニズムに圧倒される。

最後をシメる“Con Alma”。このアルバムは1時間を越えるけれど、有機的に絡みあい、Drive感に満ちたTrioの妙技に酔いしれた自分にとってはあっという間に感じられた。

Birde of Paradise/Georges Arvanitas Trio

(Hit-C Fiore)