これは運命の一枚。北欧のFolkyなS.S.W.に熱中するきっかけとなったレコード。当時よく通っていたレコ屋さんで何気なく手に取った時、感じるものがあった。しばらくジャケットを眺めていると、レコ屋のオヤッさん曰く「これはイイよ。」彼が言葉少なに薦めるレコードにハズレはない。試聴させもらうと予感はピッタリ当たった。
Carita HolmstromはFinlandの女性S.S.W.。
FinlandというとViviさんが詳しそうだ。自分はFinlandに関しては、映画とか音楽について乏しい知識しか持ち合わせていないが、やっぱりJazzかな。元々Jazzが盛んな国だったらしいし。今でもFinlandのJazzシーンは自国の民族音楽やFunkや現代音楽やら様々なジャンルの音楽と異種交配を繰り返しながらProgressiveな歩みを続けている。UMO Jazz OrchestraはFranceのOrchestre National de Jazzと並んで常に注目している。他にも先鋭的で新しい感覚を持ったMusicianを数多く排出しているのも、この国の特徴だ。一方でクラブ関係でもThe Five Corners Quintetが今や大御所といった感じだし、音楽も映画も目が離せない国である。
思い浮かべれば自分が所有している北欧関係のレコードの中でもFinlandは一番多いかもしれない。
以前に記事を書いたEero Koivistoinenとか故Edward Vesalaあたりは昔から好きだった。
2006-02-04の記事→(Odysseus/Eero Koivistoinen
)
勿論、Pekka PohjolaとかJukka TolonenとかWigwam周辺の人々やらTolonenのTasavallan PresidenttiにJTB,そしてFinnforest。UMO Jazz OrchestraHeikkiを率いていたHeikki Sarmantoも好きだ。
さてCarita Holmstromさんである。彼女について詳しい事はわからない。
彼女の弾き語りの魅力は透明感のある自然体のVocal。そして魅力的な楽曲。彼女の作るオリジナルは清らかな美しいメロディーが印象的だ。コードやリズムが抜群のセンスでメロディーを浮かび上がらせる。
Joni Mitchellのような少しMysteriousでJazzyな雰囲気、一時のCarole KingのようなSoulやR&B風味も少々。この微妙な、さじ加減が素晴らしい。JazzやBrazil音楽、Tradなどの民族音楽の味付けが控えめだが、ほんの少し、スパイスのように効いた彼女のオリジナルは新鮮で生き生きとした雰囲気が伝わってくる。
『We Are What We Do』はCarita Holmstromの73年のデビュー・アルバム。
この音盤をGetした頃に、気に入っていたウッド・ベースとアコギとPercussion主体のアコースティックな演奏。何より彼女の書く曲が素晴らしい。全曲彼女のオリジナル作品。それに加えてFluteやエレピと多重Chorusが不思議な空間を作り出している。
ジャケットのように飾り気のない普段着の彼女の作る楽曲は奇をてらったものではない。ナチュラルな発声で歌われるメロディーが、いつのまにか心に残る。
“River”はアルバムの1曲目。いきなりキラー・チューンの登場だ。
アコギのカッティングにウッド・ベース。適度に緊張感のあるJazzyなバッキングが瑞々しい彼女のVocalを盛り立てていく。オープニング・ナンバーに相応しく生命感に溢れた楽曲。
多重Chorusが賛美歌のように清らかだ。そして伸びやかなCaritaの歌声は風に乗って、澄みきった青空にやさしく響いていく。
心地良いPercussionにのってCaritaがGroovyに歌うShuffleナンバー“Singing to the Earth”。
ピアノの弾き語りでしっとりと聴かせる“All Of A Sudden I Love You”。
“Time And A Word”は彼女1人でピアノの弾き語り。こういうシンプルなBalladだからこそCaritaの歌声が心に響いていく。
“How About You”はエレピの美しい響きとウッド・ベースに漂うような彼女の多重Chorusが幻想的なナンバー。
スリリングかつ繊細なドラムのシンバル・ワークが素晴らしい。
“The Last Tree”はCuteなCaritaのVocalがそよ風のように爽やかに舞っていく。躍動感にあふれた、聴いていると自然と力がわいてくるようなナンバー。
“The Shore”はCaritaの弾くアコギに重なるFluteの響きが気持ちよい。
アルバム・タイトル曲“We Are What We Do”はChorusが心地良いWaltz。あっという間に終わってしまう。
“Still I Feel Sorry For You”はCarita自身がエレピを弾いている曲。Breakもカッコイイしジャズロック調の演奏が彼女にしては少し風変わりな曲調にマッチしている。
アルバム最後の曲“The Knight”はTrad風の幻想的な雰囲気に思わず惹きこまれてしまう。Finlandの森の中を歩いているようだ。
まったく全曲最高のアルバムである。
寒い季節には身体を温めてくれるような彼女の歌声が聴きたくなる。
Hit-C Fiore