Lagoa Da Canoa /Hermeto Pascoal | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 

 

 

 

 今年は最高の年であったことはいうまでもない。

 

 

3月のGeorgie FameBen Sidran来日公演だけで舞い上がってしまった自分である。

さらにEgberto Gismontiが昨年に続いて素晴らしい演奏を披露してくれたのだ。

Gismontiが2年連続で来日してくれた事は驚きであったし嬉しかった。

Egberto Gismontiと並ぶ、Brazilが誇るもう1人の銀河系最強の音楽家Hermeto Pascoalである。

Pascoalが美しいパートナーのAline Morenaを伴った2004年の素晴らしい来日公演から、もう4年も経つのか。

また来日して欲しいのだが、出来れば2002年の来日時のようなHermetoが率いるバンド・アンサンブルを聴きたい。

彼らが創り出す音世界は驚異的で常人の想像の域を遥かに超えてしまっている。

Egberto GismontiもHermeto Pascoalもあらゆる楽器を超人的な技能で弾きこなすMulti-Instrumentalistである。

純粋に楽器奏者としての彼らの演奏を観ているだけでも目が点になってしまうレベルの高さである。

2人とも、それ以上にジャンルを越えた作曲家としての才能は神がかっている

Hermeto Pascoalの場合は、その風貌もあってか奇抜な面ばかりが強調されがちである。

例えば動物や人の声、机や灰皿やの音など、ありとあらゆるモノを楽器にしてしまうところ。

多作家で日記のように毎日曲を書き(実際、音のカレンダという96年の1月から毎日一曲ずつ作曲された366曲分もの直筆Scoreあり)初対面の人に名刺代わりにオリジナル曲を書いてプレゼントしたとか。

それにしても果てることのない創造性実験精神、実際の作品の完成度の高さ

よく言及される複雑な変拍子転調だけでなく、既成概念を越えたMelody、Harmony、Rhythmが渾然一体となって提示される完璧なアンサンブル

Hermetoは、ありとあらゆる音楽の可能性をどこまでも追求していく音楽神のようだ。

そこには極めて自然体の自由で大らかな精神が宿っている。

Academicな音楽教育を受けたGismontiAmazonで暮らして会得したものをHermetoは最初から手にしていたようだ。

彼らの宇宙の果てまでいってしまうような恐ろしく深遠な世界をみせてくれるソロの世界もいいが、自分達の音楽を深く理解している仲間達と創り出す音楽の素晴らしさは格別だ。
Hermetoとその仲間達はその独創性の高い音楽を具現化するためにストイックな練習を繰り返しているのだろう。

全員が高い演奏技術と豊富な音楽知識を持っていてさえもHermetoの音楽を体現するのは難しい。

だからこそ生みだされてくる音楽は世界で一番光り輝く宝石のようなのだ。

 

 『Lagoa Da Canoa Municipio De Arapiraca』は84年の作品。

このアルバム・タイトルはPascoalが生まれた街の名前Lagoa da Canoa(後にArapiraca)である。

Grupo名義の前作も素晴らしい作品であったが、さらに本作は実験性が増していく。

2002年の来日公演でも凄腕を披露した四半世紀以上Hermetoを支えている音楽監督的存在のItibere Luiz Zwargを中心に演奏はタイトでありながら変幻自在

SaxとFluteを演奏するCarlos Maltaも素晴らしい。

鍵盤のJovino Santoの美しいRhodesのプレイもお気に入りだ。

このアルバムでは人の声や小鳥の声を使いながら自らの演奏とシンクロさせてユニークなな音楽を創り出す。

Ilza Na Feijoada”は東洋的なメロディーも持ちながらドンドン転調を繰り返していくさまが圧巻だ。

心地良く大自然の中に投げ出されていくようだ。

Tiruliruli ”は当時でも、それほどなかったSampling的手法を取り入れた斬新な音楽。

BrazilのOsmar Santosの名調子を録音した音源をLoopさせて、それにMelodyChordを当てはめていく方法。

Pascoalが以後、得意とする実況や演説など言葉が生み出す旋律、それに見事に調和しながら和声を展開させていく様が見事に対比されていて面白い。

You Tubeで実際にHermetoがこの手法で録音している映像が公開されていて、それを見た時に爆笑したものだ。

正に奇想天外なアイデアであり、それを実践してしまう音楽的才能に驚かされる。

Vai Mais, Garotinho”のアイデアも最高。

優美なメロディーを持った名曲“Aquela coisa”。

Frevo em Maceio”ではItiberê ZwargとドラムのMarcio Bahia、パーカッションのPernambucoが一体となった鉄壁のリズム隊が素晴らしい。

 

 

SantaさんみたいなHermetoが最高!

 

Hermeto Pascoal e Grupo / Live in Spain 1985

 

 

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