踊れる変拍子、ノレる変拍子、それもギコチナさを感じる事なく腰が動いてしまう変拍子の
曲を作るのは難しい。
というよりも、無意識に身体の奥底から湧き上がってくるリズムとフレーズを曲にしてみたら
変拍子だったというのが理想だ。
70年代のCharles Tolliverの作品は、腰が動く変拍子の曲が結構あって気に入っている。
変拍子でも、けっして奇をてらったのではなくてエモーショナルな高まりがあって、身体の中
から生れてくる必然性のあるリズムが提示され、そこには、ミュージシャンの熱い魂が入って
いるのがわかるからだ。
70年代のJazzは混迷の中にあったという。
自分は当然、後追いで当時の音楽を聴いているのだが、当時のミュージシャン達が様々な
試行錯誤を繰り返しながらも、圧倒的なエネルギーと情念を込めてきた音楽に強く惹きこま
れる。
そんな中でTolliverやWoody Shawといったミュージシャンが多くの困難の中で新しい時代
の音楽を模索していく姿には心を打たれる。
Afro Americanが演奏・創造するAfro American MusicというConceptを掲げ、Tolliver
は盟友Stanly Cowellと共にStrata-Eastというインディー・レーベルを立ち上げる。
2人はあの偉大なるMax Roachのバンドでの演奏仲間で、意気投合していた。
そのプレイは、Roachの数ある名作の一枚で、近年クラブ関係でも注目を集めている68年
の『Members,Don’t Git Weary』でも聴くことができる。
そして2人は69年にMusic Incを結成し、70年に上記のレーベルを立ち上げ、決して流行
にとらわれることなく、志の高い音楽の創造に情熱を傾けていくのだ。
誰にも束縛されずに理想を追い求めていく彼らであったが、音楽と経営の両立は難しかった
のか、ミュージシャン同士の誤解が生じたのか、やがて2人は袂を分かつ事となる。
しかし、真摯に、独自の方法論で新しい音楽を追求していく当時の熱いミュージシャン達の音
はエネルギーに満ち溢れていて、心地よい高揚感と開放感を与えてくれる色あせない音楽だ。
Hit-C Fiore