タリバン司令官の死亡と民間人の誤爆 | 紛争地のアンテナ: 瀬谷ルミ子のブログ

タリバン司令官の死亡と民間人の誤爆



タリバンの司令官Mullah Dadullahが、

アフガニスタン南部ヘルマンド州において、

米国主導の有志連合軍およびアフガン国軍との戦闘により

死亡したと報道されています。


  BBC報道    CNN報道




Mullah Dadullah  

(AP)



Mullah Dadullahは、タリバンのなかでも

もっとも危険かつ残虐な司令官とされていた。

誘拐、自爆テロにも多数かかわっていて、

連合軍の最重要ターゲットになっていた。


旧ソ連との20年以上前の戦闘で、片足を失いながらも、

タリバンのなかでも、恐れを知らない勇敢な姿勢から、

尊敬を集めていた。


2001年末、アフガン北部で、当時米国と協力していた

ドスタム将軍に捕まったときも、他のタリバン司令官たちが

投降するなか、彼だけは屈せず、隙を見て逃げきったという。


2005年6月に、彼を捕まえたとの誤報がされたことがあった。

今回の死亡報道は、アフガン政府が公式発表したもの。

今回は死体まで公開しているし、それを見た報道陣も

「彼だ」といっているので、間違いではなさそうですが。



今年3月のイタリア人ジャーナリストの誘拐・釈放事件にも、

Mullah Dadullahが関与していたといわれている。

このときは、イタリア人釈放と引き換えに、

アフガン政府に拘束されているDadullahの兄弟を含む

タリバン司令官5名を釈放させた。

また、イタリア政府が2億円近くをタリバンに

渡したともいわれている。



彼の死亡が、タリバンの勢力に直接どれくらいの影響が

あるかは不明だけど、指揮系統の乱れや士気の低下は

多少は起こるだろう。



一方、タリバン掃討に巻き込まれ、命を落としている民間人も

数多いので、喜ばしい気分にもならない。


先週末、アメリカが、アフガン東部で民間人19人を

誤射し殺害したことを認め、謝罪した。

一人につき、2000ドル(約24万円)を支払うという。


大使館や国連に勤めるアフガン人(つまりエリート)の月給は、

400~700ドル。

でも、地方の警察や教師は、30ドルもらえれば良い方。

一般人の収入は、さらに低い。


24万円って舐めてるの?と言いたくなるけど、

報道され、謝罪されているだけでも、この犠牲者たちは

報われている気がする。


有志連合軍に誤爆されたのに、報道もされず、誰にも認識されずに

亡くなっていったアフガン民間人の数は、計り知れない。

数千、数万人?


そして、日本も、有志連合軍に、間接的に協力している。

(自衛隊によるインド洋での燃料補給)

間接的にでも、加害者になっている戦争といえる。


ちなみに、3月にイタリア人と一緒に誘拐された

アフガン人アシスタントとドライバーは、2人とも殺害された。

タリバンだからといって、アフガン人に情けをかけるわけではない。



米国は、アフガニスタン戦争の出口戦略に困っているが、

一番出口がないのは、アフガニスタンの民間人。