ナナとウヒョンの番外編★
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今日はナナと初めてのデートだ。
あの夜から数週間がすぎて、ナナも元彼と何とか別れられて落ち着いた。
お母さんとも少しずつ話しているらしい。
少しずつでも僕はそれが嬉しかった。
最悪な母親だったとしても、ナナにとっては唯一の家族だから。
ナナは母親とちゃんと話そうと思ったのも、僕のお陰だって言った。
僕は毎日お母さんとメールやチャットをしている。
この仕事をしていると家族の支えはすごく大きいんだ。
だからナナにも家族を大切にしてほしいと思った。
僕も仕事と練習、そして日本デビューへ向けての準備もあり、
本当にナナとの時間が少なかった。
ナナももちろん練習も本格的になっていたし。
僕たちはテキストを送り合ったり、時々電話をしたり…
宿舎での部屋は近いけど、すれ違いばかり…
そんな中ようやくとれた時間。
だけど丸1日じゃない…
仕事が終わって夜の数時間だけど、僕はその日が待ち遠しかった。
たった数時間でもこれはれっきとした僕たちの初デート。
メンバーに冷やかされても、僕はこの嬉しい気持ちを隠せない。
ウヒョンに告白されてから、なかなか現実的に考えられなかったけど、
送られてくるテキストや電話で話をすると、実感がわいた。
練習もきついけれど、ウヒョンのお陰でがんばれた。
母親も何度か練習を見に来てくれて、少し感じが変わった。
元彼は…どうしているか分からないけれど…元気だといいなと思う。
今夜は久しぶりに練習が夜まで。
ウヒョンも仕事が終わったら久しぶりに空き時間。
今夜はやっとウヒョンと2人で会える。
それだけで胸がいっぱいになる。
「ナナ!」
「ウヒョン!」
ナナとウヒョンはあの中庭で待ち合わせていた。
「ごめん、待った?」
ウヒョンが息をきらしてかけよった。
「ううん、ぜんぜん!大丈夫だよ^^」
「なんか、マネージャーの話が長くってさ…」
「仕事、お疲れ様^^」
ナナは優しくウヒョンに笑った。
「あぁぁ~ナナ~」
ウヒョンはナナの笑った顔を見てたまらず抱きしめた。
「わ!ウヒョン!」
ナナは突然のハグにびっくりした。
だけどあったかいウヒョンの体に触れて、ナナは心があったかくなった。
ポンポンとウヒョンの背中を叩いて、ナナも抱き返した。
ウヒョンはナナのぬくもりを確かめるように、一瞬だまったままぎゅっと強く抱きしめた。
「さ!ナナ、行こう♪」
そして、ウヒョンはナナの手をとりマンションを出ようとした。
「あ、ウヒョン、気をつけなきゃ…」
そう言ってナナは手を離した。
「…ナナ、今夜だけは離したくない。」
え…
ナナは驚きながらも手をつないだまま、ウヒョンに連れられてマンションを出た。
マンションを出るとタクシーがもうそこにいて、2人は乗り込んだ。
「わ、準備万端!」
ナナはにっこり笑った。
「はい、これ…♪」
乗り込んでナナがびっくりした瞬間、次のサプライズが待っていた。
「わ…キレイ…!」
「やっぱり花を送るって一度やってみたかったんだ^^」
ウヒョンは小柄なかわいいバラの花束をナナに渡して笑った。
「嬉しい…。ありがとう…花をもらったのは初めて…」
ナナは感動して涙が出そうだった。
ウヒョンはそんなナナを見て、嬉しくてまたナナの手を握った。
「ねぇ、ウヒョン、どこへ行くの?」
「内緒だよ~」
着くまでの間、2人は色んなん話をした。
時々、ウヒョンは携帯を取り出しては嬉しそうに誰かにテキストをしていた。
すごく嬉しそうな顔で、ナナは相手は誰なのだろうと気になった。
「ウヒョン、なんだかすごく嬉しそうだね。」
ナナは思い切って聞いてみた。
「え?そりゃナナと一緒だからね♪」
「…そうじゃなくて…、ほら、今テキストしながら…」
「…あぁ!ごめんごめん!キー君とテキストしてるんだ~♪」
「キー君?」
「そうそう、SHINeeのね^^ 知ってるでしょ、SHINee!」
「あ…もちろん!あ…そっか、仲良しだったよね!」
ナナは疑った自分が恥ずかしくなり、
キー君の事が本当に好きなんだなって分かって微笑ましく思った。
「好きなんだね~キー君のこと^^」
「うん!僕たち同い年で同じ血液型、似た者同士なんだよね♪」
そんなことを言っているとある場所に着いた。
「運転手さん、また2時間後、この場所に来てもらえますか?」
ウヒョンはそう言ってタクシーから降りた。
そこは小さな遊園地だった。
「こんなところあったんだ…。」
ナナは思わず見上げた。
「そう、冬になるまでは夜の遅い時間まであいてるんだ。
ソウルからけっこう離れているし、小さな遊園地だから穴場!
…ってソンヨルから教えてもらった(笑)」
「そうなんだ!」
ウヒョンは念のためキャップを深くかぶって、入園した。
平日の夜で人も少ない遊園地で、ウヒョンに気付く人はいなかった。
「ナナ、時間がないから、乗りたいものを先に乗ろう!」
「うん!」
2人はジェットコースターや、空中ブランコ。
大した乗り物はないけれど、2人でいられるなら何でも楽しかった。
ゲームもして、お菓子も食べて…
1時間はあっという間に過ぎた。
「ナナ、最後はあれに乗ろう。」
それは決して大きくない観覧車。
「うん^^」
2人は乗り込んだ。
「はは、誰も乗ってないね~。貸切みたい♪」
「こんな小さな観覧車じゃ誰も満足しないんだろうね!僕たちだけの観覧車だ!」
ウヒョンはイェ~イと嬉しそうに揺れた。
「わ!ウヒョン、やめてよ!小さいからすごく揺れる(笑)」
「ごめんごめん!」
ウヒョンがそう言って正面に座っているナナの手をにぎった。
ナナは改めてドキっとした。
その緊張がウヒョンにも伝わり、2人は一瞬沈黙した。
ウヒョンはまっすぐナナを見た。
「…最近…仕事はどう…?」
ナナはずっと見つめるウヒョンの視線とこの雰囲気が気まずくて、
空気を変えようと口を開いた。
その瞬間、ウヒョンはパっとナナの手を離した。
あ…あと少しだったのに…
ウヒョンはちょっとがっかりしてしまった。
「うん、相変わらず忙しいよ~。あ、新しい曲を最近はレコーディングしたよ。」
「そうなんだ^^ 聞きたいな~♪」
ナナはウヒョンに少しねだってみた。
「…いや~それはどうかな~まずはやっぱりファンのみんなに…」
「私だってウヒョン、INFINITEのファンだよ~」
ナナは得意そうに笑った。
ウヒョンはそんなナナの笑顔に負けて、少しだけ歌った。
少し大人っぽい切ない歌詞と印象的なメロディー。
ウヒョンの甘くて深い声が小さな観覧車に響き渡った。
ナナはこの一瞬を胸に刻むように、まっすぐとウヒョンを見つめ耳を澄ませた。
このウヒョンの声が本当に好き…
ウヒョンはまっすぐ見つめるナナの視線に鼓動が高まった。
…キスしたいな…。
ウヒョンはずっと抑えていた感情がまた湧いてきた。
「ナナ…」
ウヒョンはまたナナの手を握って近づいた。
ウヒョン…
ナナもその雰囲気が分かった。
「お疲れ様でした~!!」
っと、その瞬間、観覧車の扉が開いた。
2人は、え!?と係員を見た。
「一周しました~!」
慌てたウヒョンは
「あ…あ、もう1周します!!」
と係員にそう言った。
「は~い!いってらしゃいませ~!」
また係員が扉を閉めた。
2人は一瞬見つめあった。
「…………あははは!」
そして2人は声を出して笑った。
「漫画じゃん!」
2人は正面から両手をにぎったまま、本当におかしくて笑った。
「はぁ~…もう、なんかウヒョンといたら面白いことばっかりだよ~」
ナナは目に涙をうかべて顔をあげた。
するとウヒョンは優しく微笑んでいた。
「ナナのね、その笑った顔がすごく好きだよ。」
え?
ナナがそうなった瞬間、ウヒョンはナナに近づいてキスをした。
今度はおでこじゃなくて、ナナの小さな唇に。
「へへ、やった♪」
ウヒョンは唇にキスをして、おでこにもキスをしてそう言った。
ナナは一瞬のことで、固まってしまったけど、嬉しくて…
初めてのキス。
そして、ナナも遠ざかるウヒョンに今度は自分から奇襲キスをした。
ウヒョンも、え!とあっけをとられた。
「仕返しだよ♪」
そう言って笑うナナをウヒョンは抱き寄せた。
そして2人は、また1周する間、たくさんキスをした。
小さな観覧車からは星がキレイに見えた。
「ナナ、愛してるよ。」
最後のキスの後、ウヒョンはそう言った。
「私も…」
ナナもそうつぶやいた。
2人だけの甘い時間が終わった。
君との初デート。
小さな観覧車での初めてのキス。
帰りのタクシーで君を腕に抱いて、色んな事を想った。
次会える約束もできない僕だけど…
忙しい日々から解放されて、君に恋をしている普通の男の子になれた、
ねぇ、ナナ、永遠って言葉を僕は信じないけれど、
今この時の気持ちは永遠だって…
本当にこの夜、想ったよ。
番外編 初めてのデート ~Be Mineウヒョン編~ 完