・感想:
コンビニ業界のことは全然知らなかったのでまあ面白かった。
ただ「芥川賞受賞作品」という看板を考えると、う~ん、という感じ。
読みやす文章だ。
それだけに、これで受賞できてしまうのか、と。
難解な文章であればいいとは思わない。
ただ凡人からして「さすが!」と思わせる「唸らせる」文章があってこそではと。
受賞理由は「コンビニ」という特に東京に住む日本人には欠かせない存在でありながらB級扱いされていたものに光を当てたというのはあると思う。
それは誰も気に留めなかった「オバサン」の渇きを潤した綾小路きみまろ、氷川きよし、韓流ドラマ、に似ているのでは。
つまり「今、現代」というものを活写して文章化した、という功績があったと思う。
というか芥川賞は又吉の作品もそうだが現代を表現したものが対象とされるようだ。
そういう意味では過去を知る本を読むことも必要だが「今を知る」ための本も必要かなアと認識させられた。
文章の構成としては途中意外な展開はある者の時間軸の流れを追っている。
今はアメリカのドラマ「24」のように24時間の出来事を24話にする、つまり例えば2時間の出来事を1冊の本にできるくらい巧みに文章を操り深く量もある文章、というのは難しいのかもしれないし、仮に作れても読者は読解力が追いつかないのかもしれない。
作品の大部分はノンフィクションでは。
主人公(作者)は「物事を俯瞰でき最短距離を瞬時に判断して行動できる合理主義者」のようだ。
まあ一言で言えば社会基準からすれば「変人」だ(作家は変人だろうが)。
一方で作者の意図が今一つ分からなかった。
キーワードとして「ムラ社会」「異物」というのがある。
日本の普遍的価値観に照らし合わせせれば少数民族は「異物」となりやすい。
「ムラ社会」の中に「異物」を入れてほしいのか、「異物」と定義づけるのは止めろ、というのを「私」「白羽」から主張しているのか。
もし作者がコンビニ店員の社会的地位の格上げを希望していたり変人扱いするな、個性を認めろ、というのなら違うかなアと。
人類の歴史を見ても、共同体・家庭・秩序・組織が下支えしている。
特定の組織に属さず結婚も子作りをしない人間が大多数ならどうなるのか。
人類が滅びるわけであり、家庭を築き子孫を残す人間が多数を占めているから「コンビニ人間」のような人が生存できていると思う。
主張する前にまずそのことを自覚してほしいなと思う。