・読み終わった日:2013年8月15日
・人物:僕(ワタナベトオル)、直子、キズキ、永沢、ハツミ、レイコ、緑(小林緑)
・ストーリー:
僕は冬にレコード店でアルバイトを始め直子の好きなレコードをプレゼントし、直子は僕に手編みの手袋をプレゼントしてくれた。
直子と僕は冬に神戸に帰らなかった。
僕は会いたい人もいないし正月は彼女のアパートで食事をさせてもらった。
4月になり直子の誕生日にケーキを買い祝った。
また突撃隊の話をしたが直子は会ってみたいと笑う。
その日の直子はよく話をした。しかしその喋り方の含まれている何かに僕は気になりだした。
それは何かに触れないようにしている喋りだった。そのことは黙っていたが気付いたら夜の11時になっており直子は一人で4時間も喋り続けていたことに気づく。
僕は帰りの電車があるからと言ったがそれでも直子は喋り続けた。
すると突然喋りを止めて僕をぼんやり見ていたと思うと涙を流し始めそれからずっと激しく泣き続けた。
僕は直子を抱き寄せたが彼女は泣き止むことはなかった。
正しかったどうか分からないが我々はあの夜寝た。
そうするしかなかったし僕は彼女に口づけをし直子は固くなったペニスを握りヴァギナは温かく濡れていて僕を求めていた。
僕が中に入るととても痛がったので初めてかと聞くと彼女は肯いた。
キズキと寝ていたと思ったので混乱したがペニスを奥まで入れてから動かさず抱きしめ彼女が落ちつきをみせるとゆっくりと動かし長い時間をかけて射精した。
最後に直子は声を出したが僕が今までに聞いたオルガズムの中で一番哀しい声だった。
僕は聞くべきではなかったがなぜキズキと寝なかったのかと聞くとまた泣き始めた。
僕は蒲団に彼女を寝かせたあと雨を見ながら煙草を吸った。
朝になると直子は背中を向けていた。
何度か話し掛けたが返事をしなかったので諦めて起きた。
僕はメモ用紙に、落ち着いたらゆっくり話したい、電話が欲しい、誕生日おめでとう、と書いて部屋から出た。
1週間経っても電話がなかったので僕は直子のアパートに行くと3日前に引き払ったと言いどこに行ったか分からないと言う。
僕は神戸の彼女の実家に長い手紙を書いた。
お互いのことを知らなすぎるし、そのために知りたいしキズキを失うことで正直に話せる相手を失い歪めているのでは、返事が欲しい、といったことを書いたが返事は来なかった。
それから僕はきちんと学校に行ったが誰とも話さず1人で食事をした。
5月になり大学がストになり講義がなくなったが本当になくなってくれと思った。
6月になりもう一度手紙を書いたが内容はほとんど同じだった。
そして2度永沢さんと一緒に2人の女と寝たがやはり簡単だった。
1人の女はやたらと僕のことを聞いてきた。朝になり別れたが自分にウンザリしていた。
僕はひどく飢えて渇き、女と寝ることを求め彼女たちと寝ながら直子のことを考えていた。
7月のはじめに直子から手紙が来た。
返事が遅れたのは謝るが書くまでに時間がかかり書いては書き直したこと、大学を休学したがそれは以前から考えていたこと、あのあと実家に帰り病院に行き京都の山奥にある療養所に行く予定であること、あなたが傷つけてたのではなく自分自身で傷つけたのである、1年間付き合ってくれたことに感謝しているが今は会う準備ができていない、といった内容だった。
僕は何百回も読み返したがそのたびに悲しく切なくなった。
その月の終りに突撃隊がインスタントコーヒーの瓶に蛍を入れて僕に渡してくれた。
僕はそれを持って寮の屋上に行ったが蛍は弱っているようなので蓋を開けたがすぐには飛び立たず少し立ってから飛んだ。蛍の光の跡は目に残りそれを掴もうとしたが何も掴めなかった。
第4章:
夏休みに機動隊が出動し学生は逮捕された。
僕は学校が廃墟になっていることを期待したが何も変わっていなかったので彼らは何をしていたのだと思った。
機動隊の占拠の下で講義が始まると最初に出席したのはストを指導していた連中だった。
僕は彼らにどうしてストを続けないのかと聞くと彼らは答えられなかった。
彼らが出席しているのは出席日数不足で単位を落としたくなかったからだ。
夏休みが終り9月になっても突撃隊は帰ってこなかった。
仕方なく彼の代わりに部屋の掃除をして待っていたが退寮したと聞かされ理由を聞いたが教えてくれなかった。
ある日講義のあと小さなレストランで食事をしていたら4人組の女性がレストランに入ってきてその中の一人の女性が僕に話しかけてきた。
ワタナベ君でしょう?と言うが僕は彼女に見覚えはなかったが彼女は僕の席に座った。
聞くと同じ演劇の講義を受講している1年生だったがヘアスタイルを変えたので分からなかったのだ。
彼女はミドリと名乗り2回休んだのでノートを貸して欲しいと言う。
明後日の12時に同じ場所で御礼をするからということで再開を約束し別れた。
しかしその約束のとき緑は現れなかった。
仕方なく学生課に行き登録簿を調べると小林緑ということが分かり自宅は豊島区でそこに電話した。
電話口から小林書店ですと名乗られ戸惑うが電話口の女性は緑は病院ではないかと言われる。
その後永沢さんと食事をしたがその日は外務省の試験だった。
試験の出来栄えを聞くと普通だったと言い女を口説くのと変わらない、官僚志望の95%は屑だ、と言う。
それならば何故外務省に入るのかと聞くと国家という一番大きいところで自分の能力を試したいからだし、欲は無くゲームだと言う。
永沢さんは僕に10年後か20年後に僕と再会しそうな気がすると言う。
翌週も演劇クラスに緑はいなかった。
僕は授業中に直子に、そちらに行きたい、返事が欲しい、と手紙を書いた。
授業の途中で緑が教室に入ってきた。するとヘルメットを被った学生が入り教師に残りの時間を討論に当てたいと言うと教師は勝手にしろ、と言って出て行ってしまった。
学生がビラを配り読んでみたが内容に説得力がなかった。
緑が出ましょうと言うので僕らは教室を出て四谷のレストランに行くがこの前は用事ができて行けなかったことを謝る。
病院に行ったのかと聞くと緑は驚きそのことは後で話すと言う。
二人で外へ出ると彼女が通っていた高校へ行く。
そして本当はこのエリート女子高校が嫌いだったと言う。
生徒たちが住んでいるところも高級住宅街ばかりで緑の実家が書店ということで周りの人は大型書店を思っていたようだが実際は小さな書店なので嫌だったと言う。
緑は僕の家庭のことを聞くのでいたって普通だと答える。
僕は突撃隊の話をしたらとても喜び緑は寮に行きたいと言うが男性寮は酒を飲んでマスターベーションするところだから面白くないと言うと緑はマスターベーションのことをいろいろ聞いてきた。
そして今度緑の家に行くことを約束する。
翌日曜日に僕は小林書店に行くが家には緑しかいなく緑が手料理してくれた。
緑の料理は想像以上に立派だった。
何故これほど料理が上手になったかというと母親が料理をしなかったので中学3年のとき料理本を買って全てマスターしたと言う。
だから2年前に母が脳腫瘍で亡くなったとき家計費を自由に使えると思いホッとしたと言う。
緑は僕の独特のしゃべり方が好きで話していて楽しいと言う。
僕が家族のことを聞くと姉は今婚約者とデートをしていて去年ウルグアイに行ったと言う。
妻を亡くしたショックで軍人仲間を頼り子供の制止を振り切り行ったという。
緑は父から誘われればウルグアイに行くが姉は汚いから行きたくないと言い書店は姉と近所のおじさんと緑とでやっていると言う。
緑は父が仕事も子供の放り投げるほど妻を亡くしたことにショックを受けたことに逆に好きではないが信用していると言い僕はそのことに分かるような分からないような気がすると答えた。
緑は母が死んでも悲しくなかったし泣かなかったと言う。
それはあまり親から愛されなかったからだと言う。
緑は火事で死ぬことはあっという間に気を失うからよく、母のように長い時間をかけて死ぬのは嫌だと言う。
それから緑はぼんやりと遠くの空を眺めていた。
そしてお互いの目を見て口づけをしたがそれはどこに行く当てもない口づけだった。
緑は好きな女の子はいるのかと聞き、僕はいるがとても複雑だと答えた。
翌日の演劇のクラスに緑はいなかった。
僕は学内を歩いたがみんな幸せそうに見えたのが淋しい思いにさせた。
そしてキズキの関係は何だったの考えたが彼の死によって分からなくなった。
外で緑を待ったが来なかった。
その週の土曜の午後に永沢さんから今夜遊びに行かないかと誘われたがモヤモヤして誰でもいいから寝たかったので行くことにした。
しかしその夜3軒回ったが誰も引っかからなかった。
永沢さんも1年に一度くらいこういうこともあると言い11時半にもなっていたので諦め永沢さんはハツミさんのところへ行き僕は映画館に行くことになる。
僕は映画を見た後、深夜営業の喫茶店で本を読んでいると2人組の女性が相席を求めてきた。
2人は美人ではないが感じがよかったがしばらくすると一人がこの辺でお酒を飲めるところはないかと聞いてきた。
何でも相方がどうしてもお酒が飲みたくその人は7時半に電車に乗り長野に帰らなくてはならないと言う。
仕方なく僕が外の自動販売機で酒を買い三人で原っぱで酒を飲んだ。
2人は新社会人の職場仲間で小柄なほうの女性は恋人の浮気現場を見て落ち込み大柄の方は今日兄の結婚式なので戻らなければならないと言う。
そして大柄の女性を見送ったあと僕は小柄の女性とホテルで寝た。
どちらから誘うではなくお互い寝ないと気が済まなかった。
ホテルに入ると彼女は素っ気なかったがベッドに入ると別人のように敏感に反応しオルガズムに近づくと16回も男の名前を言った。
昼の12時半に目を覚ますと彼女はいなくメモも無かった。
僕は外に出て緑に電話したが出なかった。
そして寮に帰って直子から手紙がきていた。