村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 ④ | 七転び八転び!? 15分で1冊 

七転び八転び!? 15分で1冊 

人生、いいことの方が少ない。

「薬害エイズ訴訟」の体験とそれまでの過程、読書の感想と要約をを綴ります。

・読み終わった日:2013年8月1日


・人物:私、僕


・ストーリー


27、博士によると僕の第3回路は固定され第2回路が死んだという。

それは記憶が生産されていると言いそのことが世界の再編に繋がり別の世界への移行の準備をしているという。

その世界はずっと続き、いわば不死を意味しまた永遠の生でもあるという。

これは研究の過程で偶然なったといい僕が不死の世界から免れるには今すぐ死ぬことだという。

僕はできないと言うにと博士はあなたは不死に相応しい人間だという。

太った娘がその世界の転換は何時起きるのかと博士に聞くと博士はあと29時間35分だという。

太った娘が僕にこれからどうするのかと聞くので僕はとにかく地上に出たいと言う彼女は僕を地上へ送ってくれたあと祖父のところに戻るという。

博士は僕に恐れることはない、死ではなく永遠の生で自分自身になれるのだという。


28、発電所の若い管理人は我々を小屋に入れてくれた。

彼の話だと森から出てはいけないといわれており、いつか交代するまで居ることになっているという。

私は楽器を探しにここに来たというといろいろなものを見せてくれた。

彼は楽器を何でも集めていると言い、また発電所も好きだという。

私は手風琴に目が止まり弾かせてもらったら変わった音色がした。

彼がそれを私にあげると言うが楽器というものを知らない彼女はそれが楽器なのかと聞く。

そして彼女は私に小さい声で彼はまだ少し影が残っているので森に住んでいるという。


僕は楽器のお礼にトレベル・ウォッチとチェス盤とオイル・ライターを渡した。

彼は使い方はわからないが見ているだけでも美しいという。


29、我々を見送る博士を見るとただの疲れた老人に見え誰でも老いて死んでいくと感じる。

太った娘は僕に祖父のことを怒っているのかと聞くが、話を聞いているうちにどうでもいい気になったと答える。

そして大した人生、脳じゃないというと、しばらく彼女は考え込む。

そしてあなたはいい人なのねと言い祖父は熱中すると周りが見えなくなることがありあなたを組織から助けるために早く呼んだのだがあれは間違っていたし許してあげてと言う。

そして祖父は研究しているうちに「組織」は国家を巻き込んだ私企業に過ぎず営利のために脳を好き放題に人間をメチャクチャにすると考えたという。

私は彼女は本当は全部知っているのだろうと聞くと実は知っていたと言い私が言っても
納得してくれないだろうしそれなら祖父から直接聞いたほうがいいと思ったという。

話しながら逃げている間に着く。


その後我々は狭い横穴を通ったが彼女がやみくろの声が聞こえるがし匂いもするから気をつけろという。

奴らは何でも知っているしここに来たことも怒っているという。

やみくろは私でも聞き取れるようになったが耳鳴りに近く無数の羽虫のうなりだった。

彼女は止まると闇の中に引きずり込まれると言って怒鳴った。

そして上に光を上げるとやみくろが見えるがやめろという。

私はやみくろは何に怒っているのかと聞くと光のある世界とそこに住んでいる人だと言う。

そして彼女は今私がこれから行く世界にいけたらどんなに素敵だろうと思っているという。

私の意識の中で暮らしたほうが楽しそうだというが私はそう思えなかった。

逃げている間楽しいことを考えたり昨日のことまでを思い出そうとしたが上手くいかなかった。

すると彼女がやっと出口が見つかったという。

出口は地下鉄に繋がっていたが暗闇から光に慣らすためにしばらくそこにいた。

彼女はこのあと私の部屋に行きたいと言うので一緒に行くことになる。

彼女はこれから女を呼んでセックスをするのかと聞くがそんなつもりはないというとならば家で眠らせて欲しいと言う。

目も慣れてきたところで二人で地下鉄を歩く。


30、朝、目が覚めると昨日の出来事は夢のように思えたが手元に手風琴があったので現実だと分かった。

窓から外を眺めると3人の老人が大きな穴を掘っていた。

それから僕は1、2時間かけて手風琴の音を出せるようになった。

外は雪が降り始めたがそれでも老人たちは穴を掘っており人数も6人に増えた。

僕は手風琴を動かすのをやめ彼らを見ていて疑問に思いはじめたがそれはゴミを埋めるのには大きすぎるし大雪が降りそうなのに何故やめようとしないのかということだった。

手風琴を眺めていると管理人の言葉がわかるような気がした。

昼食の時間になりやっと老人たちは作業をやめた。

老人が昼食を持ってきてくれたので老人の穴掘りを聞くと彼らはただ掘っているだけで目的もなく誰も傷つけるわけでもなく勝利もなく、素晴らしいと思わないかと言うが僕は分かる気がすると答える。

老人はここにあることは全て自然であり今、心を失うことを恐れているかもしれないがその後に安らぎが来ることだけは忘れないようにと言う。

そして老人が街で僕の影が弱っているから会ってみればと言われたので僕はわざと迷う振りをした。

影の死はこの街では厳粛な儀式だから門番も会うことを断れないと言う。


31、我々は地下鉄の線路の上を歩き隙を見てプラットホームの上に上がった。

何人かの乗客は汚い格好をした我々をいぶしがって見たが当然だった。

切符がなかったため店員ともめたうえ1000円を出して外へ出た。

そしてスーパーマーケットに行ってサンドウィッチスタンドで注文をしてスポーツ新聞を勝って読む。

太った娘がアダルトページを読みたいというので渡す。

彼女は私に精液を飲まれるのは好きかと聞くので曖昧に答える。

その後私の部屋に戻ると壊された部屋が大部分綺麗になっていた。

そして風呂を沸かして太った娘に先にはいるように言う。

私は彼女の裸を眺めたがとても均整の取れた太り方で鯨のようにつるつるしていた。

彼女も私の体は悪くないでしょう、と言いここまで肉をつけるのにご飯やケーキを沢山食べたという。

彼女が風呂に入っている間残り24時間と少しに何をしようか考えたが分からなかった。

私は図書館の電話番号を調べ電話をして図書館の女性に本のお礼と言って食事に誘った。

今夜は研究会があるので行けないと言うが私がしばらく遠くに行くから会えないと言うと研究会をキャンセルしてくれた。

実は部屋を掃除してくれたのは彼女で本を渡そうと思い部屋に来たということだった。


風呂から出た彼女はドライヤーを使うが私はそれは出て行った女房が使っていたものだと言う。

彼女はどうして私と寝ないのかというので今は寝るべきではないと言うが、すぐに否定し凄く寝たいと思うが何かが私を押しとどめていると言う。

彼女はその証拠を見せろというので私はズボンを下ろし勃起したペニスを見せる。

彼女は触ってもいいかと言うが私はダメという。

彼女は洗濯物が乾いたら祖父のところに戻るというが彼女は代わりの服がないため私がコインランドリーに行く。


32、僕は影に会いに行くと門番が影の体調はよくないといい面会時間は30分にしてくれという。

中に入るととても寒く悪臭も酷く門番はすぐにその場から離れた。

影に会うと影が門番が立ち聞きしているか見てくれというので見に行く。

影は油断させるために弱っている振りをしていると言い3日以内に逃げ出すしかないという。

寒くなると獣がどんどん死に門番の焼却に仕事が増え、その間に逃げると言う。

影はプランは十分にあると言い僕は記憶を取り戻し元に戻れると言う。

しかし僕は影に実は迷っていると言いこの街に愛着を感じていると言う。

それは老いることも死に怯えることもないところなどだと言う。

逆に影は出て行く理由として完全はこの世には存在しないしこの街は心を亡くす事で成立し、だから憎しみや欲望がないことは喜びや愛情がないことになるし、それはおかしいし彼女を好きになっても気持ちは届かないという。

影は外で死んでもここで死ぬと言い死んでも不完全な死しか残らず森の中に有効に影を残せなかった人々が住んでいるし僕もそうなると言う。

そして彼女は「完全」だから森に住めないし僕はひとりぼっちになると言う。

そして心は獣によって壁の外に運び出され外の世界に持って行き冬になると体に溜め込んで死ぬ。

彼らが死ぬのは自我の重みであり門番が頭骨を切り離し1年間地中に埋めてその後図書館の書庫に運ばれ夢読みをすることで大気の中に放出されると言う。

夢読みは僕のことでまだ影の死んでいない新たしく街に入った人間がする役目だと言う。

不完全な部分を不完全な存在に押し付けその上澄みだけを吸って生きているから弱い不完全の立場から獣や影や森の人の立場から見るべきだと言う。

泪を拭いた僕は君の言うとおりで僕のいるべきところではない、明日の3時に迎えに行くと約束する。


33、コインランドリーに行くとどれも使われていたのでじっと待っていた。

やっと空いたので服を入れてそれから外降る雨の中、外へ出た。

煙草屋に行き煙草を買いケーキ屋に行ってケーキを買いいつも利用しているレンタルビデオ店に行き店内で流している映画をソファーに座って見た。

なじみの店員の奥さんにケーキを一つ上げコインランドリーが終わる時間なので映画を途中で切り上げて戻った。

服を取り家に戻ると太った娘はぐっすり寝ていた。

台所を見ると世界を構成する不思議な込み入った静けさを感じた。

このアパートに越してきた頃の8年前は妻がいたし不完全ではあるが妻を愛していた。

このアパートのことを考えるととにかく状況は終りを告げようとしていた。

それは永遠の生と私は考え不死の世界に行こうとしていると博士は言ったが、この世界の終りは死ではなく新たな生の転換であり私は私自身となりかつて失ったものに再会出来ると言われた。

その通りかもしれないが私には訴えてこなかった。

それは漠然としすぎていたし創造力の範囲を超えていた。

一体何を失ったのか考えてみたが様々な物事や人々や感情を私は失い続けたようだ。

「お前の人生ゼロだ!」と言われても否定できなかった。

しかし人生やり直しても同じ気がした。

それは失い続けた人生が私だからだ。

私は若い頃努力したが何も変わらなかったがそれは絶望というのか?

私は不死の世界を想像できなかった。

しばらく考えて22時間後の自分が死ぬと仮定したほうがいいと結論したがそうすると気分は楽になった。

私は家に帰って娘の寝顔を見た後銀座へ服を買いに行く。

店員から服のアドバイスをもらうが世界には様々な法則があるようで一歩歩くだけで新しい発見があった。

そのあとビアホールに言ったが客は2組しかいなかった。

外へ出ると人の集まっているところに行きたくなりソニービルに行きそのあと丸の内線に乗り新宿へ行った。

すると新宿駅の荷物預かり所に頭骨とシャフリング・データがあったことを思い出した。

それらを今更持ってきても仕方がないと思ったが暇なので身分証明書を提示してそれらを受け取る。

そして食事をするのにこのバッグは邪魔だと思いレンタカーを借りて車に置いて置く事にした。

車を借りに行くと対応してくれた女性がボブ・ディランが好きで小説家になることを夢見ているというので話が盛り上がった。

そして車に乗り出かける。


34、僕は雪降る日に出かけたので図書館には1時間早く着いた。

そして彼女に仕事は今日はやめてその代わり話を聞いて欲しいと言う。

そして僕の影を死にかけているので死ぬと僕は永遠に心を失ってしまうのでいろいろなことを今決めたいと言う。

そして明日の午後街を出ることになると言った。

影を1人外に出そうとも考えたがそうなると僕は森に入れられ君の会えなくなるからできないという。

彼女は自分の母が心を残したせいで森に連れて行かれたと言い母から心があれば失うものはないといわれたことを信じているという。

それを聞いた僕は彼女にまだ心が残っていると感じた。

しかし彼女の心はたくさん獣に吸い取られているのでいくら夢読みをしても彼女の心に届いたのか分からなかった。

僕はその可能性にかけて残り時間を書庫に行き片っ端から頭骨の夢読みをすることにする。