「末期がん患者が最後にすがった大麻は違法か?」という産経さんの記事が数日前に大々的に報じられました。


本当に末期がんだったのか?


”全ての医師から見放された”と”全ての”との発言は極端すぎないかなど、様々な疑問点が、読んでいくと浮かんできます。


医療用大麻は、使用されている国もあります。


ただ効果については様々な意見があります。


食欲や生活の質にプラセボ群と差はなかったという研究もあります。


また無視できない問題として、大麻に関しては、精神障害を発症するリスクが高くなることがあります。


以前から指摘されているように、特に若年者の使用は様々な問題を、長期的にも引き起こしうることが言われており、使用すべきではないと考えられます。


しかしこの医療用の大麻に関しては、意見が様々に割れており、それに対して深く踏み込むことは避けます。


緩和医療の一専門家としての意見は、医療用大麻を解禁しなくても、現状では様々な症状緩和薬があるので、それを用いれば十分に代替以上となるのではないか、ということです。


さて、記事を読み進めていきましょう。


この部分


(以下引用)


国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長を務めた医師、福田一典氏(62)は「大麻の医療効果に関する600以上の海外文献を検証したが、大麻ががんなどの難病に有効である可能性は高い」と指摘。「がんには万人に効果がある治療法はない。大麻も含め、どんな薬にも副作用はある。強い副作用を伴う抗癌剤やモルヒネもやむなく使用されているのが実情だ。そうした中で、大麻だけが絶対的に禁止されている現状には疑問だ。大麻ががん治療の選択肢の一つとして検討されてもよいのではないか」と話した。

(以上引用)


「強い副作用を伴う抗癌剤とモルヒネ」と抗癌剤とモルヒネを一緒くたに「強い副作用を伴う」と表現するとは雑だなあ、というところに違和感一つ。


モルヒネはがんの痛みのある患者さんへの適切な使用で、それほど顕著な副作用を示すことはないからです(もちろん便秘などは問題にはなりますが)。


なぜこのような違和感がさらに強くなるかというと肩書きが”国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長”と、有名な施設で働いている医師のようであり、そのような方がこのように大麻をやや積極的に推したりするとは珍しいなあ・・・との感覚からでもあります。


皆さん、もう気が付きましたか?


…私は一瞬気が付き遅れました。まだまだです。


「国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長を務め医師」と記事には書いてありますね。


あるいは鋭い方は、年齢と定年で気が付いた方もおられるかもしれません。


そう、嘘はついていません。


しかしこの肩書きはなんと、昔の肩書き。


今は自由診療クリニック(保険が効かずに代金は実費のクリニック)の先生なのですね(あえてリンクは貼らないでおきます)。


しかも昨年『医療大麻の真実 マリファナは難病を治す特効薬だった!』という本も出されています。


普通に考えて、このような先生ならば大麻を推すだろうと理解されます。


しかし問題は、わざわざ肩書きを、「国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長」とし、務め「た」と、こっそり嘘にはしないようにする。


権威のある肩書きをどうしても出して説得力を出す手法です。


確かに、掲載メディアからすれば取材に応じてくれた先生ですが、この肩書きは前過ぎませんか? などとその意図を汲み取って、変更するなどはしなかったのですね。


国立がんセンターの勤務歴は、しかも、前職ではなく、前々職で、クリニックホームページによると18年以上前の肩書きなのです。


文章とは怖いところがあって、


国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長を務めた医師、△△氏は「大麻の医療効果に関する600以上の海外文献を検証したが、大麻ががんなどの難病に有効である可能性は高い」と指摘。

なのと

『医療大麻の真実 マリファナは難病を治す特効薬だった!』を書いた◯◯クリニックの医師、△△氏は「大麻の医療効果に関する600以上の海外文献を検証したが、大麻ががんなどの難病に有効である可能性は高い」と指摘。


なのとでは印象は随分と異なります。もちろんそれを狙って、前者のように表記されるのですが。


あるいは私たちは、病気で困っている方も含めて、このような誘導にちゃんと気付けというのでしょうか?


しかし現実問題として、このようなことはやはり散発しています。


残念ながら、何か違和感がある時には(できればそうではない時でも?)、しっかりその方のポジションを把握し、誘導が為されていないかを吟味していくしかなさそうです。


それでは皆さん、また。
失礼します。