―お互いの創作方法。で、なんで演目はシェイクスピアと太宰なの?

堀越:大野さんって、自分で音楽選んで、いっぱい使うじゃないですか、今回は?

大野:いっぱい使うよ。泣かせるような王道な曲から、ポップなヤツまで。

堀越:何曲使うんですか?

大野:35曲!

堀川堀越:ええーー、多すぎ!

大野:かなりいい曲揃えたんだよ。

堀越:いや、世田谷シルクも音楽多いけど、今・・・

堀川:今、7曲しか決まってるのないですね。(*12月28日現在)

大野:炎ちゃんも自分で曲選ぶの?

堀川:ええ、自分で決めます。いつも、ほぼ音ハメ(*音に合わせて動きや台詞を言う事)になってるんで、自分で稽古の段階で操作しながら。

大野:俺ね、台本書く段階で、もう選曲してるの。台本にもタイトルとか書いてあるよ。


(*と、『走れダザイ』の台本をみると、やはりタイトルが書いてあった。)


堀越:へェー、じゃあ、どちらも曲からインスピレーション受けていくタイプですね。

大野:聞きたかったんだけどさ、世田谷シルクって、寺山修司とか宮澤賢治とか近松の演目をモチーフにしている作品が多いじゃない?その理由って?


(*『グッバイ・マイ・ダーリン』→寺山「アダムとイヴ、私の犯罪学」、『傑作』→「銀河鉄道の夜」、『接触』→「傾城(けいせい)反魂(はんごん)香(こう)」)


堀越:古典が好きなんでしょ?

堀川:いや、単純に【山の手】の影響です。


(*劇団山の手事情社(じじょうしゃ)。堀川炎はここの研修所出身。ちなみに、『走れダザイ』出演の三村聡(そう)は永くこの劇団に在籍していた。大野も昔から付き合いがある。)


大野:ああー、やっぱりその辺から来てるんだァ。

堀川:【山の手】古典が多いじゃないですか、で意外と面白いのかな?って。やっぱり入りやすかったんですよ。自分が脚本を書くとは思っていなかったので、そうすると、

大野:基があって、なるほど。

堀川:オリジナルとかは、他の劇団がやってるじゃないですか?じゃあ、私は、亡くなった人の本をやろうと。

大野:そうだよね。居所としても、今の他の劇団もあんまやってないしね。

堀越:なんか、その辺は似てますよね。

大野:そうだね。うちもね、俺が花組芝居にいるってこともあるし、けど歌舞伎わかんないし、あんまり興味ないし、けど、昔の文豪とかやってみたら花組芝居的かなって思って、夏目漱石とか萩原朔太郎やりだしたんだけどね。

堀越:なんで今回太宰なんですか?

大野:俺ね、ぶっちゃけ夏やった音楽朗読劇『太宰治のオンナの小説』まで、太宰治知らなかったし、1つも読んだ事ない(笑)。

堀川:誰が文豪で好きなんですか?

大野:いや、誰も好きじゃないし、読んだ事ないよ(笑)。

堀越:けど、そういわれてみれば、シェイクスピア「夏の夜の夢」初めて読んだんですよね?

堀川:ええ。

大野:炎ちゃんは、演目ってどうやって選ぶの?

堀川:古典で、わかりやすいものを。『接触』も「傾城(けいせい)反魂(はんごん)香(こう)」の原文使ってたんですけど、言葉が難しくてよく分からなかったと言う意見が多くて、じゃあ、日本人みんなが知っている宮澤賢治の「銀河鉄道」は?ってやったんですけど、「普通の人は知ってるだろうけど、僕は知らないから楽しめなかった、すみません」みたいな意見があって・・・(笑)。お客さんの想像力を使うことが多いので、分からないと原作を知らない人は自分が悪いと思ってしまう・・・あながち有名な作品をやるのも問題だなと・・・

堀越:みんな名作文学読んでないんですねぇ。

大野:うん、読んでないし、まず俺も読んでないからね(笑)

川:じゃあ、シェイクスピアだったら、古典の王道だし、日本人は名前を知ってはいるけど見たことない、が前提にあるかなと思って。私の芝居いつも人が死ぬんで明るいものやろうってことで、「夏夢」にたどり着きました。

大野:喜劇だからね。

堀川:ええ、正月っぽく夢のあるものにしようと。けど、あんまり深く考えていかず、その時の成り行きで決めていこうって。

大野:うん、ジャケ借りみたいなもんだよね。

堀越:うまいこといいますね!

大野:俺もそうだからね(笑)。

堀越:これ『走れダザイ』だから、「走れメロス」が基本なんですか?

大野:いや、メロスは一行も出てこない。

堀川堀越:えええ!

丸川:あ、そういえば出てきませんね。

堀越:何それ(笑)!